リーガルエッセイ
公開 2025.11.17

営業秘密持ち出し事件②

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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営業秘密持ち出し事件

先日、A社の代表取締役とその会社の社員数名が、不正競争防止法違反の嫌疑で逮捕されたと報じられました。
社員のうち1名は、情報を持ち出されたというB社の元社員であるとのこと。
被疑事実については、その元社員が、B社退職前に、顧客情報が映し出されたPC画面を私用スマートフォンで撮影して、A社の社員らに送信したことである旨報じられています。
被疑者らの認否も含め、事実がわからないので、今の時点で、具体的なコメントをすることはできません。
この事件を少し離れ、営業秘密の持ち出しについて、何度かにわけて、いくつかの観点から取り上げてみたいと思います。

前回は、法人に対する処罰という点をとりあげてみました。
今回は、情報を持ち出されたタイミングについて。
警察庁が公表している「令和6年における生活経済事犯の検挙状況等について」では、「営業秘密侵害事犯としては、転職・独立時に営業秘密に関する情報を持ち出す事犯が多くみられる」と説明されています。
実際、私がご相談いただく事例でも、転職・独立時以外での持ち出しはなかったはず。
多くが転職・独立時のタイミングで発生しているというのは実感としてもあります。

そのようなタイミングで営業秘密が持ち出されることが多いという実態を踏まえ、各社注意すべき点があると思います。
ちょっと嫌な表現のしかたではあるのですが、退職予定者の言動に注意を払うということ。
具体的には、退職予定者に関しては、アクセスログを慎重に確認することは基本になってくるのかなと思います。
もっといえば、退職の意思を会社に表明してきたときでは少々遅いのかと思います。
これまで担当してきた案件を見ていても、退職の意思を会社に表明してくるときには、すでに、転職先を決め、そこでの業務スタートを見据えて水面下で準備活動を進めているということが多いように思います。
仮に、今の勤務先から営業秘密を持ち出すといったことを企図したとき、会社に対し、退職の意思を伝えた後では会社からも警戒されるという思いから、まだ何も言っていない時点でその持ち出しを敢行するのが通常考えられる心理でしょう。
そう考えると、いかにも自社で働く従業員を常に疑いの目で監視しているかのようで抵抗を感じる方も多いと思いつつも、やはり、そのようにモニタリングすることにより、加害者を生み出さないことこそが、本来当該退職予定者にとても善なのだという捉え方もあり得るはず。
そのために基本になるのは、やはり、会社が、一人一人の従業員の思いに丁寧に向き合い、その心の動きや、業務中の様子、周囲からの評価等に敏感になることなのかなと思います。
その意味で、営業秘密持ち出しリスクの観点から従業員のモニタリングをする担当において、人事情報が密に共有される必要もありそうです。

また、会社は、従業員のアクセスログを確認でき、常に、その動向を注視しているということが、従業員に周知されることも不正のけん制に一定の効果をもつはず。
もちろん、そのすきをついて水面下で敢行される不正を防ぐことは必要となりますが、そうやって会社がアクセスログを確認でき、従業員の言動をモニタリングするという体制をとっていること自体が知られていないために加害者を作り出してしまうというケースもありそうです。

情報が持ち出された会社は、必ずしも一方的な非会社とは言えず、情報管理体制自体に疑義がもたれたることで株主や取引先からの信頼に影響したり、法的にも、損害賠償等リスクが生じ得ます。
だからといって、自社で起きた営業秘密漏えいの事実を隠すことは、より重大な不正を許すきっかけになってしまうかもしれない。
別の調査過程で営業秘密の持ち出し被害が発覚し、それに対しどう対応すればいいかご不安がある場合は、できるだけ早く弁護士にご相談ください。
警察への被害申告、取引先対応、持ち出した加害者への対応等含め、サポートさせていただきます。

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