リーガルエッセイ
公開 2026.05.26

親による体罰について考える

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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親による体罰について考える

先日、親が子の胸ぐらをつかんだなどとして暴行罪で逮捕され、その後釈放されたという報道がありました。
逮捕された方が著名人であったこともあり、また、その後会見が開かれ、そこで、お子さんの思いが発信されるなどしたため、それらを巡り、SNS上でもいろいろな声があがったように思います。
この報道自体ではなく、この報道をめぐるさまざまなコメントを見ていて、いろいろ思うことがありました。
報道された件については、現時点で、外から何かを言うべきものではないと思っています。
ですので、報道された件を離れ、一般論としてお話ししてみたいと思います。

まず、しつけとしての体罰が一定の範囲で許されるのかという点。
常々、親の子に対する虐待に関する報道を見ていると、被疑者が「しつけのために手を出しました」と供述していると報じられているのを目にします。
実際、私が検察官だった際も、取調べにおいて、「口で注意しても子どもが言うことを聞かないので仕方なく手を出した」と供述する被疑者は複数。
でも、法律は、親によるしつけのための体罰を明確に禁止しています。
民法は、「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」とし、その監護および教育をするにあたっては、「子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない」と定めています。
「児童虐待の防止等に関する法律」でも同様に、しつけに際しての体罰を明確に禁止しています。
頭を小突くだけ。
ほっぺをつねるだけ。
おしりをたたくだけ。
昔のアニメでは「よくあること」として描かれていたような行為も、今は、どんな理由があっても許されないのです。
これは、幼児に対してだけでなく、やり返す力のある年齢の子どもに対しても同じ。
親子間でも、このような体罰は暴行罪になりますし、子どもがけがをしたら、傷害罪になります。
暴力を用いて子どもに言うことを聞かせるという行為の怖さは、依存性があるということ。
最初は、「これくらい大丈夫」と考えていた行為がエスカレートすることも。
親として子どもに手を出すことはNGだということを明確に自分のルールにする必要があります。
でも、私は、自分が本当に未熟な親なので、「そんなことわかっているけどどうにもならないときがある」という思いが痛くて仕方ないほどわかります。
わかりますって言ってはいけないのかもしれないけど、すごくわかります。
いろいろなケースがあると思うから、いろいろな背景や事情を無視して雑なまとめ方をしてはいけないと思うけど、大事に大事に思うわが子に手を出すなんて、親としても、苦しくて仕方なくて、でも、どうしたらいいのかわからなかったり、感情のコントロールができなくなったりして手を出してしまっては、その瞬間から、消えたくなるような罪悪感に押しつぶされそうになるということもあるのではないかと思う。
人間だから、感情的になることは避けられない。
私自身振り返ってみると、わが子に対しては、他人とは違って、どんな未熟な自分のこともわが子は嫌いにならないという甘えというか、慢心というか、そんな思いも潜んでいるような気がする。
そんな弱い自分の行動を意思でコントロールすることってたぶんすごく難しくて。
私は、自分の弱さや子への甘えが誤った行動に出ないようにするための仕組みづくりをすることが必要なのだと思っています。
たとえば、アルコールの影響で、感情が高ぶりやすくなり、結果、子どものちょっとした言動にカッとなりやすい傾向があるという自覚がある人であれば、子どもと接する可能性のあるときにアルコールを摂取しない。
たとえば、忙しくて精神的に余裕がなくなってくると、自分の中の「許せる範囲」が狭まり、子どものちょっとした言動にカッとなりやすい傾向があるという自覚がある人であれば、生活習慣を見直したり、業務量を調整したり、自治体の窓口や児相などに自ら相談して、必要な助けを求めたりする。
そんなことを積み重ねながら、絶対に、大事な子どもを傷つけない自分になる必要があるのだと思います。

最後に、これもまた一般論として。
私は、児相に相談、通報をした子どもの行為について、周囲が、「それはやりすぎだった」などと評価することはあってはいけないと思います。
仮に、結果として、別の適切な解決法があったのであれば、それは、通報を受けた側が都度判断して案内すべき話であって、助けを求める子どもの側が、その通報をためらうようなことがあってはいけないと思うのです。
子どもたちが、「自分のケースは、果たして、後々、学校や家族や周囲の人たちから、『通報せずに解決すべきだった』と非難されないだろうか」という迷いをもつことで、通報が遅れ、発見、対応が遅れ、事態が深刻化するようなことがあってはいけないのだと思うからです。

言うまでもないことですが、報道された件については、その当事者の方々や当事者の方から直接意見を求められた方が考え、解決していくべき話。
私は、何も事情を知らない立場で、自分が関わらない件について「こうすべきだった」などと考えを抱くのではなく、親として、わが身を振り返り、わが子との向き合い方を改めて静かに考える機会にしなければいけないなと思いました。

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