リーガルエッセイ
公開 2026.06.02

子どもたちに伝えたい「場所」の価値

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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子どもたちに伝えたい「場所」の価値

みんな、「昔と違って、今は地図アプリがあるから、目的地にたどりつくのが格段に楽になったよね」と言いますよね。
私は、いつも、「だよねえ。本当にねえ。昔って、どうやって目的地にたどりついていたんだっけっていう感じよねえ」とそれっぽい相槌を打っていますが、その相槌は完全に嘘で、私自身は、地図アプリのおかげで目的地にたどりつくのが楽になんてなっていないのです。
いつも、一応地図アプリを一度は開いてみるのです。
でも、地図アプリのおかげで目的地にたどりつけたことなんてほとんどなくて、結局、最後は、道行く人々に助けてもらうか、その時間的余裕がないときは、泣く泣くタクシーを呼び、運転手さんに行先を告げると「ものすごく近くですけど、ご乗車でいいのでしょうか?」と迷惑そうな顔をされながら、そんな距離のために乗せていただいたことをひたすら謝り倒しながらタクシーを利用させていただくかそのどちらか。
私と地図アプリの相性は信じがたいほど悪いようで、アプリの指し示す方向に歩き出すということ自体ができないのです。
歩道上でスマホを手にぐるぐると向きを変えながら、指し示す方向を探るのですが、いざ、「こっちだ」と思って歩き出すと、これまで「3分」となっていた所要時間が、突如「25分」などとなって、スマホを投げ出したくなります。
この感じ、わかってくれるかたっているのでしょうか?

先日も、休日に子どもと出かけたその出先で、目的地に向かうために地図アプリを開いたのですが、案の定、歩いていく方向が定まらず、子どもの「この親は、また道がわからなくなってる」という冷たい視線を感じたとき、ちょっと親っぽいことを言って煙に巻いてやろうと思い、ふと、「このアプリに私たちの現在地が表示されるってことは、このアプリは私たちが今どこにいるか知っているってことだよね。」と言ってみたのです。
すると、意外にも子どもも食いついてきて、「え?どういうこと?」と言ってきたので、そこから位置情報というものについて語ってみました。

私自身の子ども時代に比べて、子どもたちは、日常的に「位置情報」を扱っているなと思うのです。
地図アプリで目的地を調べ、写真を撮り、SNSに投稿する。
子どもたちにとっても、これはごく当たり前の日常になりつつある。
でも、弁護士として相談を受ける立場から見ると、この位置情報が深刻な被害に直結するケースがしばしばあると思われます。
位置情報は、単なるデータではない。
「あなたが今どこにいるか」「どこに住んでいるか」などを他者に知らせる位置情報。
つまり、位置情報は、身の安全に直結する情報です。

現在地をリアルタイムで他者と共有できる機能をもつアプリというものが存在します。
友達と待ち合わせをするとき、保護者が子どもの居場所を確認するときにはたしかに便利な機能。
でも、この機能が悪用されるとつきまといの手段になる。
交際相手、元交際相手、SNSで知り合った見知らぬ人物に位置情報の共有を求められるケースは実際にあります。
「好きだから居場所を知りたい」という言葉の裏に、支配や監視の意図が隠れていることも。
位置情報の共有を求められたとき、自分が今どこにいるのか、ということを把握しておきたいという相手の要求をどう捉え、自分の感情をどう相手に伝えるか。
中高生にとっても、とても大事な問題だと思います。

また、見落とされがちな危険が、SNSの写真投稿。
写真の背景に映りこんだ建物、駅の看板、制服、通学路の風景。
このような、自分にとってはなんてことのない、特別なものとはいえない物でも、住んでいる地域、通学している学校等が特定されることがあります。
それらの写真を見た不特定多数の人の中に、ストーカー行為、性犯罪等企む人がいるかもしれない。
行動パターン、居場所の情報は、そのような犯罪行為を企む人にとって格好の材料になるのだということを認識する必要があります。

この位置情報がもつ意味が軽く考えられがちであるということは、子どもたちの間に限った話ではなく、大人においてもいえること。
今年のゴールデンウィーク中も「今家族で●●に旅行に来ています!」などというSNS投稿をたくさん目にしました。
このような発信は、「今、わが家は無人です」と宣言しているのと同義であることも。

自分の居場所は、本来、自分が管理すべき大切な情報です。
だれに、どこまで教えるかは、その情報を相手に伝える意味をしっかり認識した上で、自分がだれの支配も受けずに判断すべきこと。
そして、その大事なプライバシーに関わる情報は、ときに犯罪被害につながることも。
そのようなことを私自身しっかり認識し直すとともに、子どもたちにも伝えていかなければならないと思っています。

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