コラム
公開 2024.03.14 更新 2024.05.28

脅迫罪の成立要件は?弁護士がわかりやすく解説

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脅迫罪とは、脅迫した場合に該当し得る罪です。

脅迫罪は具体的にどのような要件を満たす場合に成立するのでしょうか?
また、脅迫罪で逮捕された場合、弁護士は何をしてくれるのでしょうか?

今回は、脅迫罪の成立要件や脅迫罪で逮捕された場合の対応などについて弁護士が詳しく解説します。

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。同志社大学法学部法律学科卒業、東洋大学法科大学院修了。これまで数百件を担当してきた建物明渡請求の分野を主軸に、離婚などの家事事件についても豊富な解決実績を有する。刑事事件も積極的に取り扱っており、訴訟対応も得意としているほか、企業不祥事や従業員による犯罪行為など、企業が関わる刑事事件への対応にも強い意欲を持つ。
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脅迫罪とは

脅迫罪とは、相手の「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者」や、相手の「親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者」が該当する罪です(刑法222条)。
たとえば、「おまえを殺してやる」と脅したり、「おまえの子どもを誘拐する」と脅したりした場合などは、脅迫罪に該当する可能性が高いでしょう。

脅迫罪が成立すると、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます。

脅迫罪の成立要件

素材_法律
脅迫罪の成立要件は、「害悪を加えられる対象者が、脅迫を受ける直接の相手またはその親族であること」と、「害悪の告知であること」の2つです。
ここでは、それぞれの要件の概要について詳しく解説します。

脅迫の対象者が相手または相手の親族であること

1つ目は、害悪を加えられる対象者が、脅迫を受ける直接の相手またはその親族であることです。

先ほど紹介した条文からも読み取れるとおり、脅迫罪においては、害悪を加えられる対象者は「脅迫を受ける直接の相手」と「相手の親族」に限定されています。
親族とは、配偶者(妻・夫)や子ども、孫、両親、祖父母、兄弟姉妹、甥姪などです。

そのため、対象者が相手や親族以外の者である場合は、原則として脅迫罪は成立しません。
たとえば、「お前の友人を殺す」や「お前の恋人を監禁する」などの発言は、原則として脅迫罪には該当しないということです。

「害悪の告知」であること

2つ目は、生命や身体、自由、名誉、財産に対する「害悪の告知」であることです。
たとえば、次のものなどはこれに該当する可能性が高いと考えられます。

  • 生命:「おまえを殺してやる」「おまえの息子を殺してやる」
  • 身体:「ボコボコにしてやる」「おまえの奥さんに痛い目を見せてやる」
  • 自由:「おまえをここから出られないようにしてやる」「おまえの娘を監禁してやる」
  • 名誉:「おまえの悪事を会社にばらしてやる」「おまえの悪評をSNSに書き込んでやる」
  • 財産:「おまえの家を燃やしてやる」「車に傷をつけてやる」

なお、この害悪の告知は、発言者(発信者)がコントロールできるものであることが必要であるとされています。
そのため、たとえば「あなたは1年後に津波に巻き込まれる」「あなたの一家は来年大地震で全滅する」などの発言は相手に一定の恐怖を感じさせるものである一方で、発言者にコントロールできるものではないことから、原則として脅迫罪には当たらないものと考えられます。

また、脅迫罪にあたるかどうかは客観的に恐怖を感じるものであるかどうかも考慮されることとされており、加害者と被害者の関係性や体格差なども考慮要素となります。
そのため、発した言葉のみを切り取って、脅迫罪に該当するかどうかを判断することはできません。

脅迫罪の時効

脅迫罪には、時効があります。
脅迫罪の公訴時効(脅迫をしてから、脅迫罪として検察官が公訴を提起するまでの期間)は、3年です(刑事訴訟法250条2項6号)。

刑事訴訟法では刑法で課されている法定刑の重さごとに公訴時効を定めており、最大2年の懲役刑である脅迫罪は「長期5年未満の懲役もしくは禁錮または罰金にあたる罪」に該当するため、時効は3年となります。

ただし、事件から3年が経つことで必ずしも時効が成立するわけではなく、犯人が国外にいた期間や犯人が逃亡しており起訴状の謄本送達ができなかった期間などは、時効のカウントが停止します(同255条1項)。
つまり、たとえ事件後すぐに国外へ逃げ、国外で3年を過ごしたとしても、帰国後に罪に問われる可能性があるということです。

脅迫罪と強要罪や恐喝罪との違い

脅迫罪と混同されがちなものに、「強要罪」と「恐喝罪」があります。
ここでは、それぞれとの違いについて解説します。

強要罪との違い

強要罪とは、相手やその親族の「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者」が該当する罪です(刑法223条)。
強要罪と脅迫罪との最大の違いは、脅迫の結果として人に義務のないことを行わせたり、権利の行使を妨害したりしたかどうかです。

たとえば、「この契約書にサインをしないとここに閉じ込めるぞ」と脅して契約書への署名を強要したり、「土下座をしないとネットに書き込むぞ」と脅して土下座させたりした場合などは、原則として強要罪に該当します。
また、脅迫罪は未遂に終わった場合は罪に問われない一方で、強要罪は未遂の場合も刑罰の対象となります。
「この契約書にサインをしないとここに閉じ込めるぞ」と脅した結果、相手がサインをしなかったとしても、強要罪が成立し得るということです。

強要罪の法定刑は3年以下の懲役刑のみであり、脅迫罪よりも重く設定されています。

恐喝罪との違い

恐喝罪とは、「人を恐喝して財物を交付させた者」や、これにより「財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者」が該当する罪です(同249条)。
「殴られたくないなら金を出せ」などと脅すいわゆる「カツアゲ」が、恐喝罪の典型例です。
恐喝罪も、未遂に終わった場合も刑罰の対象となります(同250条)。
つまり、「殴られたくないなら金を出せ」と脅したものの相手が金銭を交付しなかった場合であっても、罪に問われるということです。

恐喝罪の法定刑はさらに重く、10年以下の懲役とされています。

脅迫罪の成立要件に関するよくある疑問

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脅迫罪の成立について、よくある疑問とその回答を紹介します。

インターネット上の書き込みでも脅迫罪は成立する?

相手と対面して脅すのではなく、インターネット上の書き込みであっても脅迫罪は成立し得るのでしょうか?
たとえば、SNSで相手の投稿へのコメントで、「おまえを殺してやる」「おまえの家を燃やしてやる」などと書き込んだ場合などです。

結論としては、インターネット上の書き込みであっても相手に恐怖を感じさせるものであれば、脅迫罪は成立し得ます。
また、匿名の書き込みであっても、脅迫などによって相手の権利を侵害した場合は、相手が発信者情報開示請求をすることによって身元が特定される可能性は十分にあり得ます。

なお、コメントやアカウントを削除したからといって、これのみをもって罪に問われなくなるわけでもありません。

インターネット上で他者を脅迫してしまい発信者情報開示請求をされるおそれが生じている場合は、早期に弁護士へご相談ください。

言葉ではなく「殴るふり」などでも脅迫罪は成立する?

「殺してやる」「殴ってやる」などと発言するのではなく、相手に対して殴るふりをする行為であっても、脅迫罪は成立するのでしょうか。

結論としては、「殴るふり」であっても、これによって相手が恐怖を感じる程度のものであれば、脅迫罪が成立し得ます。
言葉で直接的に表現しないからといって、脅迫罪にあたらないわけではありません。

脅迫罪で逮捕された際に弁護士が対応してくれること

脅迫が事件化されると、警察などの捜査機関に逮捕される可能性があります。
脅迫の容疑で逮捕されそうな場合や、家族が脅迫の容疑で逮捕されてしまった場合などには、できるだけ早期に弁護士へ依頼してください。

なお、逮捕の後に勾留された場合、一定の要件を満たす場合には国選弁護人の選任を請求することができます。

被害者と示談交渉をする

依頼を受けた弁護士は、被害者との示談成立を目指します。
示談とは、被害者から許しを受けることです。示談を成立させるためには、被害者に対して謝罪を行うことが必要となりますし、示談金を支払うこともあります。

示談はあくまでも「被害者 対 加害者」の民事事件の話であり、「国 対 被疑者(加害者)」の問題である刑事事件の話とは別の問題であるはずです。
しかし、実際には被害者との示談交渉が成立していることをもって、刑事事件としても不起訴となることが少なくありません。

そのため、脅迫罪による影響を最小限に抑えるには、被害者との示談を成立させることがカギとなります。

なお、脅迫の罪を犯した場合、被害者との関係性によっては被害者の連絡先が分からないこともあるでしょう。
被害者と連絡が取れなければ、示談交渉を始めようがありません。

しかし、この場合であっても、弁護士へ依頼することで交渉のステージに立てる可能性が生じます。
なぜなら、加害者本人には連絡先情報を開示しないとの約束のもと、捜査機関を通じて弁護士が連絡先の開示を求めることで、被害者が開示に応じてくれる可能性が高くなるためです。

示談交渉が成立したら、被害者に示談書へ署名や押印をしてもらいます。
この示談書には、加害者に対する処罰を望まない旨の規定を入れることが一般的です。

弁護士はこの示談書の作成も担ってくれるため、隙のない示談書を取り交わすことが可能となります。

早期の釈放を目指す

脅迫の罪を犯すと、逮捕され身柄が拘束されることがあります。

身柄の拘束は、警察で最大48時間、その後検察で24時間、その間に勾留請求が認められるとさらに最大20日間(原則10日間+最大10日間の延長)に及び、トータルで最大23日間にもなります。
逮捕や勾留はあくまでも被疑者(加害者)の逃亡や証拠隠滅を防ぐためのものであり、刑罰ではありません。

しかし、身柄が拘束されている間は外部との連絡を自由に取ることができず、また会社に出勤することもできないことから、これ自体が大きな不利益となるでしょう。
そのため、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを弁護士が主張し、早期の釈放を目指します。

刑の軽減を目指す

弁護士は、不起訴や刑の軽減を目指し、状況に応じた弁護活動を行います。

不起訴となることが望ましいものの、被害者が示談交渉に応じないこともあり、たとえ弁護士であっても起訴される可能性をゼロとすることはできません。
そして、日本では刑事裁判の99.9%以上が有罪になるといわれており、起訴された以上は有罪判決を避けることは困難です。

しかし、有罪となっても必ずしもすぐに刑罰を受けるとは限らず、初犯であれば「執行猶予」がつく可能性は低くありません。

執行猶予とは、所定の期間を問題なく過ごすことで、刑の言い渡しの効果が消滅する制度です。
つまり、執行猶予がついた場合は、たとえ有罪判決が下っても刑務所に収容されることなく通常の社会生活を送ることが可能であり、期間の経過とともに前科も消滅します。
そのため、起訴されてしまった場合は、弁護士は執行猶予付きの判決を目指して弁護活動を行います。

まとめ

脅迫罪の成立要件や恐喝罪・強要罪との違いなどについて解説しました。

脅迫罪は、脅迫の相手本人または相手の親族に対して害悪を加える旨を告知した場合に成立します。
対面での発言や殴るふりなどのほか、インターネット上での匿名の発言であっても脅迫罪は成立し得るため、相手を怖がらせるような発言をしないよう注意が必要です。

脅迫罪で逮捕されてしまった場合や逮捕されるおそれが生じている場合には、刑事事件の弁護活動を得意とする弁護士に早期にご相談ください。

Authense法律事務所には刑事事件に強い弁護士が多数在籍しており、脅迫事件において被害者との示談をまとめた実績も豊富に蓄積しています。
脅迫事件を起こしてしまってお困りの際や、家族が脅迫罪の容疑で逮捕されてしまいお困りの際などには、Authense法律事務所までご相談ください。

刑事事件での弁護活動は時間との勝負といっても過言ではないため、できるだけ早期にご相談いただくことをおすすめします。
刑事事件に関するご相談は、初回60分間無料です。

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