リーガルエッセイ

公開 2022.06.07

離婚届が知らぬ間に提出されてしまうことはあるのか?

離婚届が知らぬ間に提出されてしまうことはあるのか?
記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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勝手に離婚届を出して逮捕

先日、こちらの記事で、勝手に婚姻届を出すなんてことが可能なのかという話をしました。

今度は、勝手に離婚届を出された場合についてお話しします。
先日、ある男性が、妻の知らぬ間に、離婚届の妻の署名欄に勝手に署名をし、離婚届を提出した上、さらには、別の女性との婚姻届を提出したということで逮捕されたと報じられました。

逮捕事実は、有印私文書偽造、同行使罪、電磁的公正証書原本不実記録罪、重婚罪と報じられています。

そもそも、離婚届が、一方の配偶者の知らぬ間に提出されるなんてあり得るのかと思われるかもしれません。

この点は、あり得るのです。
婚姻届と同様に、提出された離婚届に形式面の不備がなければ、仮に署名欄記載の二人が提出に来なかったとしても、届けは受理されてしまいます。

その場に来なかった者には、後日、郵送で、「〇〇付で離婚届が提出されました」との通知が行くことになり、それにより自分の知らぬ間に提出されていたことが判明することもあるのです。

離婚届の提出時、いずれかに離婚の意思が欠けていたら、その離婚は無効です。

勝手に提出された離婚届で、離婚が有効に成立してしまうなんておかしいですものね。

でも、やっかいなのは、たとえ、自分の知らぬ間に離婚届が提出され、その離婚が無効だからといって、役所がその訴えを聞いて、そのまま戸籍を元通りにしてくれるわけではないということ。

離婚が無効だということを確認する調停を申立て、そこで合意に至れば審判で無効を確認してもらう必要があり、また、合意に至らなければ、裁判で離婚の無効を確認する必要があるのです。
今回の報道事例についても、当事者のかたは、戸籍を戻すために、このような法的手続きを要します。

では、今回の報道とは離れますが、たとえばこんなケースはどうでしょう。
一方が、相手の言動に腹を立て、離婚を決意し、離婚届に自分の署名をし、捺印もするのです。
そして、「あなたとは離婚よ。勝手に出しておいて」と言って、自分の署名がしてある離婚届を相手に渡すとします。
でも、数日経って、相手への感情も収まり、離婚に傾いた気持ちはすっかり落ち着き、何事もなかったかのように過ごしており、離婚届を相手に渡したこともすっかり忘れていたところ、数か月経って、突然、相手が、かつて預かっていた離婚届に自分の名前を書き込み、黙って離婚届を提出してしまった。
自分は、もうすっかり離婚する気持ちなんかなくなっていたのに!というケース。
このようなとき、離婚届にある署名は偽造ではないので、有印私文書偽造罪は成立しません。
では、このような離婚は有効に成立するのか?
一度は離婚する気になった以上、その後、すっかりその気がなくなったタイミングで相手に勝手に出されてしまった離婚は有効か、無効か?

結論として、離婚は無効です。
離婚届提出時に、一方に離婚意思がないからです。

どうしてこのような話をしたかというと、よくあることだからです。
本気で離婚することまで考えていないのに、感情にまかせて離婚届を書いてしまい、相手に渡してしまうというケース、結構あります。
あのとき渡した離婚届を勝手に提出されてしまったらどうしようというご相談を受けることもあります。

そのような場合は、勝手に離婚届を提出されてしまわないように、すぐに役所に不受理届を出すことをお勧めしています。
すでに離婚意思がないのに離婚届を提出されてもその離婚は無効ではあるものの、先ほどお話ししたとおり、戸籍を元通りにするには、法的手続きを要し、手間がかかるからです。

なによりも、このようなリスクを防ぐためにも、離婚についてしっかり考えが固まっていないのに、いっときの感情で離婚届に署名して相手に渡す、ということ自体に慎重になる必要があります。

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