リーガルエッセイ

公開 2020.04.16 更新 2021.11.01

「コロナ離婚」の正体とは?

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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毎朝新聞を見ると、新型コロナウイルスの感染拡大が、社会生活のあらゆることに影響を及ぼしていることを感じます。

最近では、テレビやSNSで「コロナ離婚」という言葉をたびたび目にするようになりました。
今回は「コロナ離婚」をとりあげてみます。

新型コロナウイルスの影響で、家庭ではどんなことが起きている?

「コロナ離婚」という言葉は、新型コロナウイルスの影響で離婚すること、という意味で使われているようです。
コロナ離婚という名前がつくと、今この情勢だからこその何か特別なことのように感じられますよね。
でも、私は、「コロナ離婚」はその中身をよく見ていくと、何も特別な真新しいことを言っているのではないと思っています。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、家庭でどんなことが起きているでしょうか?

まずは、「新型コロナウイルスの影響」というものが具体的にどんなものか考えてみたいと思います。

  • 夫婦が在宅勤務になることで、家に一緒にいる時間が増えた。
    このことで、相手のいやなところが目に付くようになり、老後も一緒に生活することを想像するといやになった。
  • 子どもの通う学校が休校になり、しかも、外に遊びに行かせられないので、子どもが家の中で大騒ぎ。
    妻である自分は、在宅での仕事と子どもの対応で大変なのに、夫は、毎日遅くまで寝ていたり、起きてきても、「おれは休みなんじゃない。在宅勤務なんだ」といって子どもの相手もせずに自分の部屋に閉じこもる。
  • 夫は、「新型コロナウイルスなんて、ただのかぜだろ?」と言って、外出先でもマスクをしないし、帰宅後も、手をあらうときに石鹸もつけず、うがいもしない。
    子どもも小さいから自分だけの問題ではないのに、危機意識が低すぎる。これを注意すると、「お前が神経質なだけ。なんか根拠あるの?」と言い、話し合いにならない。
  • 子どもの通う保育園が子どもを引き続き預かってくれるので、預けて仕事に行こうとしたら、感染のリスクがあるんだから母親が仕事を休んで面倒を見るのが当たり前だと言われた。
    妻の仕事に対する尊敬の念が全くないと感じていやになった。
  • 夫は仕事を休めないし、外出できずにイライラする子どもの世話をひとりでこなすのは大変で、自分の実家に子どもたちを連れて帰省しようとしたら、夫が家族は一緒に生活するべきだと言って反対した。
    大変さを理解していないと思うといやになった。

「まさにこれ!」と思われるかたもいらっしゃるのではないでしょうか?
(ちなみに、これらは体験談を聞いたものではなく、すべて私の頭の中で想像したものです。気付いたら、すべて女性目線になってリアルにいろいろ想像してしまいましたが、同じ出来事でも、妻側から見るか、夫側から見るかで感じ方は全然違ってくると思います。)

これらを見てくると、起きていると思われる現象の共通点が浮かんできます。
つまり、新型コロナウイルスの感染拡大やこれに伴う行動自粛などにより、これまで起きていなかった問題が突如発生したというのでなく、このような未曽有の事態に直面したことで、これまでは日常に追われる中でなんとなく流してきた個々の価値観の違いが表面化したのだといえそうです。

そして、このように個々の価値観の違いが表面化するきっかけとなる事態は、何も新型コロナウイルスばかりではありません。

これまで夫婦だけで生活してきたときには気づかなかったけれど、子どもが生まれたことをきっかけに、子育てに関わることや子どもをめぐるお互いの義両親との付き合いかたなどについて考え方の違いが表面化して離婚を決意するに至ったとか、東日本大震災をきっかけに、生活する場所や仕事について考え方の違いが表面化して離婚を決意するに至ったとか、つまり、人生にとって大きな出来事が生じたときに、それまでは何となく流してきたちょっとした違和感が一気に噴出して、直面せざるを得ない問題として目の前に現れてくる、そのときに、「こんなに考え方の違うひととはやっていけない!」と考えてしまうという点で、今の状況と似ているといえます。

コロナ離婚の正体、それは、コロナをきっかけに表面化した、これまで目をつぶってきた、または気づくことすらなかった夫婦の価値観の相違に直面したとき、夫婦生活を終わりにすることを選択する、ということだと思います。

コロナが収束したらすべて元通りになって解決?

今、「コロナさえ収束すればまた元通りになるんだから、今だけの辛抱」と言い聞かせて、感情にふたをして我慢をしているかたもいらっしゃるのではないでしょうか?

たしかに、この事態が収束し、これまでのような生活に戻ったら、またお互い、これまでどおり仕事に行ったり、家にいる時間も少なくなって顔を合わせる時間自体が少なくなったりして、なんとなく毎日に追われる中で、今直面している価値観の相違を感じる機会自体が減っていくかもしれません。
それとともに、一時増えたけんかもなくなり、元通りになったと感じることがあるかもしれません。
そして、そのこと自体が悪いともいえません。

夫婦というのは、個々の人間同士なのですから、考え方が違って当たり前で、その価値観が違うとなったときに、違いは違いとして認め合った上で、ときには違いに目をつぶったり、ときにはとことんまで話し合って、折り合う点をみつけたり、ときにはどちらかが自分が間違っていたと認めることもあったり、としていかなくてはいけないものなのだと思うからです。
日々の生活に追われる中で、価値観の相違に目をつぶりながら共同生活を送っていくことが必要な時もあるのだと思います。

ただ、今回直面した問題は、今はなくなったように見えても、また、何かをきっかけに表面化してくる可能性があります。

そして、そのときに、

  • 「あのとき気づいていたんだから、ちゃんと話し合っていればよかった」
  • 「あのとき話し合っていたら、今回は違った歩み寄りができたかもしれなかったのに」
  • 「あのとき話し合って、もうお互いやっていくのは無理だとわかっていたら、その後何年も時間を無駄にせずに早くスタートを切れたのに」

などと思ってしまうこともあるかもしれません。

直面している問題の質にもよるとは思います。
でも、今回、目をつぶってひたすら収束を待つのも選択肢。
また、これをきっかけに、お互いの考え方を伝え、歩み寄りや、第三の選択肢がないか探ってみることもまたひとつの選択肢です。

コロナ離婚、という言葉にまどわされず、「自分たち夫婦、家族にとって、大事なことを考えるチャンス」ととらえて、真正面から向き合ってみるのもよいかもしれません。

それでも話し合いがうまくいかなかったら…

「話し合う」って言うのは簡単です。
でも、実際は、お互い精神的にも余裕がない中で、冷静に話し合うことって難しいですよね。
そんなときは、もちろん、時間を置いて、事態が少し落ち着くのを待って話し合いをしてみるのもひとつです。

とはいえ、この事態がいつ収束するのか、見通しもないのに、このままこの状態を続けられない、離婚に向けて話し合いをしたいとお考えで、相手との話し合いもなかなかうまくいかないときは、ぜひ弁護士に相談してみてください。

人に話している中で、もしかしたら、実は、離婚という選択肢を希望しているわけではなかったと気づくこともあるかもしれません。

また、離婚したいという気持ちは一層固まったとして、この期間に弁護士のアドバイスを受け、離婚に向けた準備を着々と進め、よい条件で離婚を成立させられるかもしれません。

弁護士に相談するときに、離婚を完全に決意している必要はありません。
離婚するかどうか自分の気持ちを確認するためにも、ぜひ弁護士を利用してみてください。

Authense法律事務所では、新型コロナウイルスの感染が拡大している状況を受け、オンライン面談を実施しております。

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