リーガルエッセイ

公開 2022.07.26

どうすれば船の安全を守ることができるのか?

どうすれば船の安全を守ることができるのか?
記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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どうしたら船の安全を守れるのかについて

先日、北海道・知床半島沖の観光船沈没事故を受けて、国交省が、船の安全を守るための対策として、悪質な運航会社を見抜く職員の「監査力」を強化することとしたと報じられました。

具体的には、これまで事前告知していた国の監査について抜き打ちを導入したり、定期監査の担当者数が限られている中、一人一人の質向上を推進するとのこと。

質向上の方法として何をするかというと、法令違反などを見抜く目を養うために、たとえば海上保安庁などの経験者らによる講習を定期的に実施したり、バス業界の監査の手法について研修を受けさせたり現場に同行させたりというもの。

そして、これら監査を補うものとして、通報窓口を新たに設置するのだと報じられています。

たしかに、このような監査のスキルを磨くことは間違いなく必要なことなのだと思います。

ただ、それと同時に、通報窓口の設置とそれが適切に機能するための仕組みづくりは、むしろ、メインの対策として講じられるべきではないかと思います。

というのも、まず、当然のことながら、監査は、毎日実施されるものではないはず。

これまではどの程度の頻度だったのか、また、この度の事故を受けて今後はどの程度の頻度で実施していくのかわかりませんが、少なくとも、対象となる旅客船事業者が5000社以上、貨物船事業者が2000社以上いる一方、監査担当職員が180人にとどまるというのであれば、高頻度で実施することは困難だと思います。

もちろん、それを抜き打ちで行うことにすれば、いつあるかわからない監査に備え、日々の体制構築や業務により慎重になり、現場の緊張感が継続するとは思いますが、どう考えても、監査の充実をメインの柱とするのでは、安全対策としてあまりにも不十分であると思うのです。

私は、現場が、「あれ?これ、大丈夫かな?」と違和感を感じたときに通報できる窓口を整えるとともに、それが窓口として十分に機能する体制を作ることこそが、もっとも現実的に再発防止につながる対策となるように思います。

今回の事件の後、いろいろな報道がありましたが、その中で、「いつかこんなことになると思っていた」とか「自分が勤めているときも、実は、こんなことがあった」というような、問題となった会社に近いところにいたかたによる声が取り上げられているものを見ました。

こういう声を、まだ、事故が起きていない小さな芽ともいえる段階で拾い上げ、問題意識をもって改善策を講じていくことこそが、何よりもの再発防止策になると思うのです。

その場合、ただただ、形式的な窓口を作っても全く意味がありません。

「どうしたら、現場から、積極的に、早い段階で事故の芽となるものがあがってくるだろうか」ということを想像して、現実的に機能する体制を整えなければ絵に描いた餅になってしまいます。

たとえば、国交省や各社のトップが、声をあげることは、この業界をより安全で豊かにするものなのだから、それは「陰口」などではなく、奨励されるべきことなのだという強いメッセージを出し続けることや、意図せずに自分の通報が自分の会社に発覚してしまうことがないよう、独立した通報先が用意され、通報者を守る体制を整えるとともにそれを周知することなどは最低限必要になるでしょう。

これは、船の安全という特定分野における問題だとは思えません。

まさに、企業内における不祥事をいかにして予防するかという問題です。

公益通報者保護法改正により、事業者には負うべき義務が定められ、またそれに違反した場合のペナルティも課されています。

ぜひお早めに社内の体制を確認され、ご不安がありましたらお気軽にご相談ください。

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