リーガルエッセイ

公開 2023.09.06

いじめの事実確認のしかたについて

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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事実確認のしかた

先日、ある中学校で、LINEグループを用いたいじめが行われ、結果、被害生徒が不登校になったとの報道を目にしました。
報道によれば、弁護士や子どもの精神面について知見をもつ医師などが調査した結果、この件が重大事態と認められたとのこと。
私は、この件に関し、調査委員会が調査した結果をまとめた報告書を読みましたが、そこから感じたことの一部を取り上げてみたいと思います。

調査報告書を読むと、証拠に基づきどのような事実が認められたか、ということや、事実経過を通して見たときにどこに問題があると認められるか、ということなどが記載されています。

いろいろな問題が指摘されていた中で特に取り上げたいと思ったのが、学校による事実確認のしかたについてです。

この件では、子どもたちがLINEグループを作り、その中で、被害生徒を加工した写真を投稿し、さらに被害生徒を誹謗中傷していたという事実が認められています。
この事実をどうやって認めたかというと、関わった生徒たちや教職員の聴取によるとのこと。
調査報告書で認定した事実以外にも、被害生徒に関するやりとりはなされていたようですが、すでに、調査の時点ではLINEグループが消去されていたし、関わったとされる生徒たちの話が食い違ってしまっており、実際なされていたやりとりの一部しか認定することができなかったという旨が記載されています。

たしかに、いろいろな人が関わる事象について、事後的に、何があったのか明らかにすることは難しいことです。
なぜなら、同じひとつの出来事を体験した人であっても、人によって、その受け止め方、記憶のしかた、記憶したことの表現のしかたに違いがあり得るからです。

そう考えると、実際に起きたことのすべてを正確に明らかにすることは難しいことは間違いありません。

でも、最終的に明らかにできなかったということと、その事実確認の方法に不十分さがあったために真実にたどり着けなかったということとは全く意味合いが違います。

事実確認の難しさを踏まえ、事実確認においては気を付けなければならないことがあります。

そのうち、この件の調査報告書でも指摘されていた2点を挙げてみたいと思います。

1つ目は、できる限り迅速に客観的証拠の確保に努めること。
この件では、教職員が関わった生徒から話を聞くにあたり、問題となっているLINEグループの内容を確認できたにもかかわらず、確認しないままに後日消去されてしまったとのこと。
事実を確認するにあたって、LINE、メールなどの形で残っているものは、とても重要な証拠になります。
ですから、そのようなものの有無を早急に確認し、存在しているのであれば、しかるべき手続きを経て(親に事情を説明して提出を求めるなど)確認する必要があります。
客観的証拠は、言うまでもなく、関わった生徒たちから話を聞くにあたっても、動くことのない証拠として、話の信用性を評価するにあたってとても重要な意味をもちます。

2つ目は、関わった生徒たちから話を聞くにあたっての方法に注意すべきこと。
この件では、ある生徒から話を聞き、そこで名前が出てきた他の生徒からまた新たに話を聞き、という五月雨式な聴取が行われたとのこと。
たしかに、一人の話を聞いて初めて確認すべき事項が浮上するということはあります。
でも、このような五月雨式の方法で話を聞くと、関係者間で、教職員からどんな話を聞かれたか、それに対してどう答えたかという情報が共有され、口裏合わせがなされることにより、事実にたどりつけなくなるリスクがあります。
ですから、一般的には、関わったと見込まれる人を広めにピックアップし、同日に、手分けして一斉に話を聞く必要があると考えます。
もちろん、話を聞きながら、横の連携により、それぞれの聴き取った話を共有しながらどの点に食い違いがありそうか、ということを認識しつつ真実に迫る事実確認をする必要があるでしょう。

今回、いじめ事案の調査に関してお話ししてきましたが、この事実確認に関する注意事項は、もちろん、いじめ事案の調査に限った話ではありません。

会社内でハラスメント相談があった、とか、不祥事に関する通報があった、とか、そのような場合においてもあてはまる話です。

もっとも、こうして語ることは容易ですが、このような事実確認を専業として行っているわけではなく、他に注力すべき業務があるというかたにとって、それとは別に、突発的に起きた事案につき、あとで振り返ったときに問題のない事実確認をするということは非常に難しいことだと思います。

ただ、非常に難しいことだから仕方ないでは済まされない厳しさがあります。

事実確認は、その後の原因分析や再発防止策のスタート。
事実確認が不十分だったり、誤った事実確認がされたりすると、その後の再発防止策も本質に迫り切れていない見当違いなものとなり、今回起きたようないじめ、不祥事等の根本解決が図られないことになるからです。

学校でのいじめ事案、会社内での不祥事等事実確認を要する事態に直面したら、弁護士にお問い合わせください。

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