リーガルエッセイ

公開 2023.09.27

法廷で土下座をすると刑は軽くなるのか?

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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法廷で土下座をすると刑は軽くなるのか?

先日、ある裁判で、被告人が法廷で土下座をして自身の犯行を謝罪する言葉を口にしたとの報道を見ました。

「法廷で土下座なんてそんなことがあるのか!?」と驚かれたかたもいるのではないかと思いますが、私は、検察官時代、何度か、自身が担当した法廷で被告人による土下座に遭遇しました。

土下座は、言い渡される判決に何か影響があると思いますか?
言い渡される刑罰を軽減すると思いますか?

私は裁判官ではないので、実際、どのような印象を受けるのかはわかりませんし、そのことが、言い渡す刑罰に影響するか、断言することなどできません。

でも、私がこれまで担当した裁判の限りで言うとすれば、刑罰にプラスの影響はないように思います。

もしかしたら、土下座をする人は、自分のしたことをどう謝っていいかわからず、申し訳なさ極まってそのような行動に出てしまったというかたもいるかもしれません。

ただ、もし、そのような思いがあるとすれば、おそらく、それは、法廷での土下座以外の行動、発言にもその思いはあふれ出るはず。

たとえば、犯行後、弁護士を通じて、被害者に対して謝罪の気持ちを伝え続け、被害者が被った損害があれば、その回復のためできる限りのことをし尽くすこと。
自分のしたことを悔い、被害者に対する申し訳ない気持ちがある場合は、被害者に伝える言葉にもその気持ちは現れます。
単なる謝罪にとどまらず、自分のしたことを振り返り、そのことが被害者に与えた傷の大きさ、深さを想像し、痛みを自身でも感じ、悔い、どうしたらそれを慰謝できるのか考え、提案し、またひたすら謝罪する、その言葉には、被告人の姿勢が必ず現れます。
そのようなものがあっての土下座なのだとすれば、その土下座自体に何か意味があるのではなくて、一連の言動が反省の情などとして量刑上考慮されるのであって、土下座だけを切り取ったときにそこに量刑上の評価がされるのではないと思います。

ですから、たとえば、犯行後、被害者に対して謝罪する機会はいくらでもあったのに、何ら謝罪と評価できる言動がなく、法廷での発言を見ても、自身の犯行への振り返りが不十分で、「今後また同じようなことをしてしまうのではないか」という懸念が払しょくできない状況で、ただただ土下座をしたとしても、そのことが量刑上有利に働くことはないのだと思います。

被告人の一連の言動によっては、法廷で土下座することが、真摯な反省の情がないにもかかわらず、量刑のために土下座パフォーマンスをしているとのネガティブな印象を与えることもあり得るのではないかと思っています。

なお、法廷での土下座とは全く違う場面の話になりますが、「土下座しろ」は強要罪になる可能性があります。
強要罪というのは、脅したり暴力を振るったりして人に義務のないことを行わせること。
深刻なカスタマーハラスメントのひとつとして、そのような要求をされるケースがありますが、それは個別事情によっては犯罪になり得る行為。
クレーム対応業務に従事されているかたにおいては、そのようなことも頭に置いていただきたいなと思います。

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