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犬をひき逃げしたら、犯罪になるのか
先日、6歳の女の子が飼い犬を連れて横断歩道を渡っていたところ、信号無視で突っ込んできた91歳男性運転による車が犬をはね、犬が1時間後に亡くなったという事件が報じられました。
91歳男性は、そのまま現場を離れたことから、このたび道路交通法違反の被疑事実で送致されたとのことです。
法的な話をします。
車を運転していて、不注意により人をはね、けがをさせた場合は、過失運転致死傷罪が成立する可能性があります。
でも、相手が飼い犬である場合、飼い犬は人ではありません。
法的には、人の物という扱いになります。
ここは、いつも文字にするのが嫌なのですが、でも、正確にお伝えするためにあえて書きます。
ですから、飼い犬をはねてしまった場合、過失運転致死傷罪は成立しません。
器物損壊罪の成立を検討することになります。
でも、器物損壊罪が成立するのは、人の物をわざと損壊した場合。
不注意で車で引いてしまったときには、成立しないのです。
そう考えてくると、いったい、今回何の被疑事実で送致されたのかと思われるかもしれません。
私も、報道の限りでしか情報をもっていないので、正しい情報か否かは断言できませんが、道路交通法違反の事故不申告が問題になっているものと思います。
道路交通法では、交通事故があったときに運転者がしなければならないことを定めています。
車を人に衝突させたときには、その人を助けるための行動をとらなければならないということはわかると思います。
でも、衝突の対象が人でなく、「物」であった場合でも、すぐに車の運転を停止して、道路の危険を防止するなど必要な措置を講じなければならないし、警察官に、事故が起きたこと、損壊した物やその程度などを報告しなければならないのです。
これをせずに現場を立ち去ってしまうと、それは、道路交通法の報告義務に反し、それ自体が犯罪になり得ます。
報じられた件についても、91歳男性について不申告の事実が認められるのかはまだわかりません。
不申告を認める前提として、申告すべき事故発生の認識を要します。
報道によれば、事故を起こしたのが自分であると認める旨の供述をしているとのこと。
捜査機関としては、事故状況、事故の衝撃、事故後の運転者の言動等事実関係を明らかにすべく捜査してきたものと思われます。
仮に、男性が、事故について認識した上で現場を立ち去っていたとしたら、それは、「不申告」という言葉には釣り合わない、重大な結果を引き起こす行動だったと言わざるを得ません。
そもそも、車の位置があと少しずれていたら、犬を連れた女の子に車が衝突していたかもしれない。
もし、犬をはねてしまった直後に車を停め、直ちに警察に報告するとともに犬を病院に連れて行くなどの行動に出ていれば、犬が助かったかもしれない。
そんな思いが、女の子やそのご家族の心にのしかかっているはずです。
女の子は、その後一人で横断歩道を渡れなくなってしまったと報じられていました。
家族のような存在の犬を、自分でお散歩させていた最中に目の前で失ってしまい、女の子の苦しみは想像もできません。
女の子を見守るご家族にとっても苦しい日々。
そんな女の子とご家族に何ができるのか想像もつきませんが、この報道を目にしたかたが、改めて、凶器となり得る運転行為の危険性、そして、車を運転するにあたってなすべき法的義務について再認識していただきたいと思います。
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