リーガルエッセイ

公開 2023.10.05

学生たちとのやりとりで思ったこと①

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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学生たちとのやりとりで思ったこと

先日、ある大学のキャリア形成に関する講座でスピーカーを務めてきました。
後期の学長講座の一コマなのですが、他の日程でスピーカーを務める講師の皆さまの華々しさを見るにつけ、「私がお伝えできることは何だろう…」と悩みました。
私には、何かすごい武勇伝があるわけでもないし、劇的なエピソードがあるわけでもない。
振り返ると、思い出されるのは、本当に小さなことで落ち込んでは、そこから立ち上がる…ひたすらそれを地味に繰り返してきた日々。
地味でもつまらなくても情けなくても、そんな等身大の日々の中から見つけたささやかな私なりの学びを伝えたいと思いに至りました。

将来の目標なんかまったくなくて、ひたすら、目の前の試験で一番になることだけ考えてがり勉してきた中高生時代。
そんながり勉が大学生になった途端、キラキラする周りの人たちのまぶしさに目がくらみ、大学にも行けなくなり、ひたすら一人暮らしの家に引きこもり、何をするでもなく、ただただ自己肯定感が底まで落ちた大学時代。
就職活動をする気力も、司法試験受験勉強をする気力も、一人暮らしの生活費の足しにすべくアルバイトをする気力も湧かず、ひたすら家に引きこもって仕送りを食いつぶした大学卒業後の日々。
田舎に逃げ帰って、そこから死ぬ気で受験勉強に取り組んだ10か月間。
その後も、ちょっと明るい場所に浮かび上がったかと思うと、すぐに闇に落ちて行った日々を振り返り、都度、どうやって這い上がって来たか…なんていう、本当に暗くて情けない話をぽつぽつとし、最後に、私がそんな毎日を経て今に至る道のりで得た学びを、盛ることなくありのままお伝えしたのです。

講義後、聴講してくれた学生さんたちが、講義を聴いての感想をレポートにして提出してくれました。

拙い話だったのに、学生さん一人一人がいろいろな視点から私の話を受け止めてくれたことがわかり、いただいたレポートは本当にうれしいものでした。

読んでいて思うところがいろいろあったのですが、その中から2つ取り上げてみたいと思います。

1つ目は、何かを選択するにあたっての心構えのようなもの。
私は、大学を選択するにあたっても、その後司法試験を受験するにあたっても、司法試験合格後、裁判官、検察官、弁護士の中から検察官を選択するにあたっても、その他プライベートにおけるさまざまな選択にあたっても、その多くの場面で「消去法」「逃げ」による選択をしてきました。
それについて、複数の学生たちが「選択の場面で、消去法とか逃げとかを理由にしていいんだ!と驚いた」と感想を言ってくれました。
この点、私も、以前は、選択をするにあたっては、「社会が納得するようなそれっぽい立派な理由」が必要だと思っていました。
高い理想に基づく選択じゃなきゃ格好がつかないなと思っていました。
だから、たぶん、いろいろな場面で「私は、社会正義の実現のために検察官になりたかった」とか「人の役に立ちたくて法律家になりたかった」「昔から理不尽な状態が許せなかった」なんて、それっぽい理由をもっともらしく語っていたんじゃないかなと思うのです。
そして、それは、全くのうそではないのです。
でも、丸裸の本心ではない。
なのに、そんなもっともらしい話をしていたのは、きっと、消去法とか逃げによる選択は恥ずかしいものだという考えがあったからだと思います。
でも、そうやって、何かを選択するときに、自分以外のものを納得させるための理由を作るなどという他人軸の視点を入れることは、全く意味のないことだし、そんな視点をもつことで、選択が、必要以上に複雑になり、自分が本当に大切にしたいものが見えにくくなるように思うのです。
そんなものを取っ払って、大事な自分を守るためなら、どんな理由でどんな選択をしてもいいのだと思います。
「キャリアの選択にあたって人目線を意識し過ぎて苦しくなっていた自分に気付きました。もっと自分の本心と向き合ってみたい」という声を聴けて、私は、お恥ずかしい未熟な自分の話をしてよかったなと思いました。

なんだか長くなってしまったので、2つ目は次の機会に。

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