リーガルエッセイ

公開 2023.10.16

物損事故後の「当て逃げ」は犯罪?

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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「当て逃げ」は犯罪なのか

先日、ある芸能人が、起こした交通事故に関し、「事故後に適切な対応ができて」いなかったなどという説明とともに、当面活動自粛となる旨報じられました。
報道では、物損事故を起こした後、その場を離れる「当て逃げ」をした疑いがあるなどとも報じられています。
この芸能人の所属事務所は「現在、捜査中」と発表しています。
この件に関しては、本当に「当て逃げ」が問題になっているのか否かわかりませんので、この報道を離れて、「当て逃げ」についてお話ししてみたいと思います。

物損事故を起こした後、その場を離れる「当て逃げ」は犯罪なのか?

この点、物損事故を起こした場合、法律では、運転者が何をすべきとされているかを知る必要があります。

物損事故を起こした運転者がなすべきことは2つあります。
(正確に言うと、法律では、「交通事故があったときは」としており、交通事故に関わる運転者等のなすべきことを定めています。特に物損事故を起こした運転者固有のなすべきことを定めているわけではありませんが、物損事故を起こした運転者においても共通する部分をとりあげてお話ししていきます。)

1つ目が、直ちに運転を停止して、道路における危険を防止するなど必要な措置を講じるということ。
「道路における危険を防止するなど必要な措置」とは、その状況によって変わってくると思いますが、たとえば、道路上の物に車を衝突させたことで、その物が壊れて、破片が道路上に散らばってしまったなどというケースでは、その散らばってしまった破片を片付けること、また、その作業にあたり、他車の進行妨害になり得るでしょうから、発炎筒を使うなどして道路上の危険を知らせることも必要になるかもしれません。

2つ目が、警察官に、交通事故が発生した日時、場所、損壊した物や程度、車両の積載物、交通事故について講じた措置などを直ちに報告すること。

これらなすべきことをしないで現場を離れてしまったらどうなるかというと、道路交通法で罰則が定められています。

  • 1つ目の危険防止措置に関しては、1年以下の懲役または10万円以下の罰金。
  • 2つ目の警察官への申告に関しては、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金。

ここまでは、刑事罰に関する話をしてきましたが、これ以外にも、行政罰があり得、安全運転義務違反、危険防止措置義務違反で点数が重なり、免許停止となり得ます。

一方で、もし、物損事故を起こした後、法律で定められたなすべきことをしていれば、過失によって他人の物を破損してしまったことについて民事上の不法行為責任を負うことはあっても、今回の物損事故を起こしたという事実それだけをもって刑事罰、行政罰の対象にはなるわけではありません。

ここで、「物損事故は、(民事上の責任はともかく)逃げなければ刑事責任を負うことはないのだから逃げるのは愚策だ」という考え方が示されることがあります。
現場から逃げてはいけないという結論においては法律で書いてあるとおり当然のこと。
でも、物損だから云々というのは、その考え方は、やはり違うのかと。

そもそも、事故を起こしたそのタイミングで、その事故でだれかがけがを負ったかということは必ずしもわからないことも多いはず。

「物損だから、逃げることにメリットがないから、逃げない」ではなくて、その場でやるべきことをやらずにその場を離れたら、もしかしたら、その事故でけがを負った人がいるかもしれない状況で、やるべきことをやったら助かる人に深刻な結果を生じさせてしまうかもしれない…事故が起きて現場が危険な状態になっていることを知らずにその場に進行してきた車両に乗っている人、その周囲にいる人に思いがけずけがを負わせてしまうかもしれない…だから、絶対にその場を立ち去ってはいけない。
このことを、運転に関わる人は、今一度認識する必要があると思います。

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