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口外禁止条項
先日、あるスポーツ選手が、既婚女性と肉体関係をもったとして、その女性の夫との間でトラブルになっていたことが発覚したなどという報道を見ました。その報道は、ある週刊誌の取材内容を報じたものですが、選手と夫との間で交わしたという示談書なる書面も公開されているようです。
私は、この報道を見ただけでは、この示談書が果たして本物なのかということや、週刊誌の取材に対し、この夫の立場の方が実際に書かれているような説明をしたのかということなどを判断できません。
ですので、少しこの報道から離れて考えてみたいと思います。
この報道を見たとき、私的なトラブル解決にあたって取り交わした示談書が公表されてしまうことがあるのか?と違和感をもったかたもいるかもしれません。
しかも、示談書の中には、「本件や本件の示談経緯について、理由の如何を問わず第三者に口外しない」という口外禁止条項も入っています。
口外禁止条項というのは、ここに書かれているとおり、今回のトラブルやそのトラブルをどうやって解決したかという示談に至る経緯などについて、他の人には言わないという約束のこと。
当然にこの文言が入るわけではないのですが、多くの示談書で交わされることのある約束です。
そのトラブルに被害者、加害者という立場が認められたとして、加害者側から口外禁止条項を入れてほしいという希望が出ることが多いという印象ですが、トラブルの性質上、被害者という立場でも、そのトラブルを周囲の人に知られたくないという思いを抱くこともあり、被害者側から口外禁止条項の希望が出ることもあります。
あわせて、口外禁止条項に違反した場合には、違約金として〇円を払うという約束をするケースもあります。
このような違約金条項を設けていない場合、口外禁止条項に違反した相手に対し、何ら損害賠償請求することができないのか、というと、仮に、口外されたことによる損害が認められ、それを立証することができるのであればその請求も可能です。
もっとも、これは、違約金の約束がされているかどうかにかかわらず、そもそも、外に漏れてしまった情報を漏らしたのが、口外禁止を約束した当事者であるということを特定することはなかなか難しいことです。
本来トラブルを知らないはずのAがそれを知っていたという場合、Aから、その情報をだれから聴いたのか確認し、Bからであるとわかったら、では、そのBはだれから聴いたのか確認し…という特定作業をしていく中で、情報発信源が口外禁止を約束した当事者だったといえるのかどうか。
一方で、口外禁止を約束した当事者が、口頭ではなく、SNSなどを用いて情報発信したという場合などは口外禁止条項違反が明確になりやすいですね。
そしてその場合は、発信した内容によっては、名誉毀損罪も成立し得ます。
このたび報じられた示談書に関しては事実関係がわからないところですが、仮に、これが本物で、また、示談を交わした当事者の一方が、示談の背景にあるトラブルの内容、示談の経緯を週刊誌に語り、また示談書の内容まで共有したという事実があるとしたら、この示談書に定める口外禁止条項に違反する事態となります。
口外禁止条項に違反した場合、解決金を返金することになっているようですから、今後、解決金返金をめぐる問題が発生すると見込まれます。
示談書を交わす際、それに伴って支払われる示談金の金額にばかり意識がいきがちですが、その他条項についても十分な検討が必要になります。
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