リーガルエッセイ

公開 2024.02.21

「カスタマーハラスメント」条例制定へ

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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カスタマーハラスメント 条例制定へ

先日、東京都が、カスタマーハラスメント対策として、条例制定の検討を始めたと報じられました。
現時点の方向性としては、

  • 罰則を定めない
  • 実効性確保のためガイドラインを制定する

ことなどが挙がっていました。

なお、北海道においては、北海道議会の自民党道民会議が、カスタマーハラスメントの防止条例制定に向け、会派内に検討部会を設置した旨も報じられています。

人手不足で人材確保が課題となっている企業において、カスタマーハラスメント対策を講じることは、経営課題に直結するものとしてますます重要な意味をもってくると思います。

以前にもとりあげたカスタマーハラスメントについて、改めてお話ししてみたいと思います。

カスタマーハラスメントは、厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」の中で「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義づけがされています。
これを整理すると、

  • 要求の内容自体が妥当性を欠くもの
  • 要求の内容自体は妥当といえるかもしれないけど、その要求を実現しようとする手段において悪質なもの

となります。

要求の内容自体が妥当性を欠く例としては、たとえば、お店で買った商品には客観的に不具合がなかったのに問題があるかのように主張する行為などが考えられます。

要求の内容自体は妥当といえるかもしれないけど、その実現手段において悪質なものとしては、たとえば、店員のかたの対応に不適切な点があったものの、その指摘を受け、対応についてすぐに謝罪したにもかかわらず、何時間にもわたり店員に暴言を吐き、土下座を要求する行為などが考えられます。
カスタマーハラスメントは、その内容によっては、傷害罪、脅迫罪、恐喝罪、強要罪、名誉棄損罪、侮辱罪、業務妨害罪、不退去罪等の犯罪行為に該当する場合もあります。
ですから、冒頭で取り上げたように、今後罰則がない条例が制定されると、結局、カスタマーハラスメントに対し刑事罰を適用することはできないのではないか、というのは誤りで、その内容によっては、犯罪に該当し、刑事処罰の対象になり得ます。

会社が、カスタマーハラスメントを放置した場合、いろいろなリスクが考えられます。
1つ目に考えられるのは、従業員への悪影響です。
常にストレスを抱え、これを会社に訴えてもだれも助けてくれないという状態が継続することにより、業務のパフォーマンスは悪化し、健康状態にも、さらに休職、退職につながる可能性があります。
北海道において、人手不足解消という課題を背景に条例制定が検討されているというのも、この点と関係があるといえるでしょう。

2つ目に考えられるのは、他の顧客への悪影響です。
不当な要求行為をする顧客への対応にリソースが割かれ、他の顧客への対応が遅れたり、不当な要求行為自体を見聞きする他の顧客が不安や恐怖を抱いたりする可能性があります。

3つ目に考えられるのは、会社自体が被るリスクです。
従業員の離職等により、新たな人員確保、育成の必要性に迫られる可能性もあります。
また、「この会社は、顧客による悪質な要求行為、これによる従業員の人権侵害を放置する会社だ」「国による指針を無視する会社だ」という見方をされることにもなります。
さらには、カスタマーハラスメントの被害に遭った従業員から、会社が従業員の安全を確保しつつ労働することができるような必要な配慮を欠いたとして損害賠償請求される可能性もあります。

このようなお話をすると、「カスハラから従業員を守らなければならないことくらいわかってるよ。でも、会社として、具体的に何をしたらいいのかわからないんだよ」というお声を聞くことがあります。
たしかに、顧客という立場の人が絡むという点で、一方では顧客を大切にしなければならないという考え方がある中、ここから先は顧客に毅然とした対応をとって従業員を守らなければならないという線引きをする難しさがあったり、外部からの予想できないアクションにどう備えればいいのかという難しさもあったり、社内での出来事に比べ、SNS等を通じて顧客とのやりとりがさらされるリスクが高いという緊張感があったり、非常に難しい問題だと思います。
具体的な問題が生じた場合の対応のみならず、事前にどんな準備をしたらいいのか、という点についても弁護士がご相談に応じます。
従業員のかたに安心して業務に従事していただくためのカスタマーハラスメント対策の研修を行うこともできます。
お気軽にお問い合わせください。

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