リーガルエッセイ

公開 2024.03.18

障害者差別解消法における合理的配慮の義務化について

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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合理的配慮の義務化

来月4月からスタートする大事な法改正があります。
それは、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」という法律で、通常「障害者差別解消法」と呼ばれる法律です。
この法改正でどこがどう変わるかというと、これまで、民間事業者については、努力義務だった合理的配慮の提供というものが、今後は法的義務になるということ。
今回は、この話を簡単にとりあげてみたいと思います。

障害者差別解消法では、行政機関等や民間事業者について、大きく3つのことを定めています。

1つ目が不当な差別取扱いの禁止。
これは、文字通りの意味。
障害のある人に対し、正当な理由なく、障害を理由としてサービスの提供を拒否することや、サービスの提供にあたって場所や時間帯などを制限すること、障害のない人にはつけない条件をつけることなどが禁止されるということです。
たとえば、介助者が一緒にいないとお店に入れないと言って入店を拒否したり、サービス提供者側が、ご本人を無視して介助者や付き添いの人だけに話しかけたり、障害があるという理由だけで学校の受験や入学を拒否したりすることなどが例として挙げられます。

2つ目が合理的配慮の提供。
合理的配慮というのは、障害のある人から、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているという意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応すること。
たとえば、障害のある人から、代筆を求められたとき、代筆が問題ない種類の書類である場合は、その人の意思を確認しながら代筆することや、乗り物など乗降の際、段差がある場合には、スロープなどを使って補助することなどが例として挙げられます。

3つ目が環境の整備。
バリアを除くにあたり必要かつ合理的な配慮を的確に行うために、設置する施設の構造改善及び設備の整備、関係職員に対する研修などを行うこと。

この3つのうち、1つ目の不当な差別取扱いの禁止は、もともと、行政機関等にとっても民間事業者にとっても、守らなければならない法的義務でした。

でも、2つ目の合理的配慮の提供は、行政機関等にとっては法的義務だったものの、民間事業者にとっては努力義務だったのです。

努力義務って何かというと、つまり、合理的配慮の提供をしないことが義務違反になるのではなくて、合理的配慮の提供をすべく努力しないことが義務違反になるということ。
誤解を恐れずに言うと、やるべきは努力であって、合理的配慮の提供そのものではなかったのです。
でも、これが、来月から変わります。
民間事業者にとっても、合理的配慮が法的義務になる。
だから、「努力したんですけどね」という言い訳は通用せず、合理的配慮を提供しなければならないのです。

もし、この義務に反したらどうなるか?
義務に反したら(つまり、合理的配慮の提供をしなかったら)刑事責任を負うというものではありません。
でも、一定のペナルティはあります。
法律上、主務大臣は、必要があると認めたとき、事業者に対して、取り組みの状況に関し報告を求めたり、助言、指導、勧告をすることができることになっています。
その際、報告を求められたのに、報告しなかったり、うその内容を報告したりすれば、20万円以下の過料という行政罰を受ける可能性があります。

この行政罰を受けるという事態に至るのは論外。
会社として気にすべきはレピュテーションリスクではないでしょうか。
このような法改正を認識することなく、自社のサービスを提供するにあたり、社会的バリアの存在を気にも留めずに、そのバリアゆえに不自由な思いをする立場のかたの存在に思いを致すことのできない会社として認知されることになる、その影響を想像する必要があると思います。

民間事業者にとっても法的義務となる合理的配慮の提供。
自社のサービスとの関係で、具体的にどのような場面でどのような対応をすべきか、ということをあらかじめ個別に列挙してマニュアル化するということは、非常に難しいと思います。
障害と一言で言っても、その特性に応じ、バリアとなるものは多様で、状況に応じ、必要となる対応もとり得る対応も一律定めることなどできない性質のものだと思うからです。
まずは、社内で、障害者差別解消法が何を求めているか、その背景にはどのような思いがあるのかということを浸透させることからスタートする必要があるでしょう。
弁護士がその研修のお手伝いをすることもできますし、具体的な場面でいかなる対応をすべきかについて検討のお手伝いをすることもできます。
来月の改正法スタートに向けてご不安がある会社さまはぜひ一度お気軽にご連絡ください。

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