リーガルエッセイ

公開 2024.03.28

不登校の要因について

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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不登校の要因

先日、ある新聞記事に目が留まりました。
文科省の委託により、4府県内で、2022年に小学3年生から高校1年生だった児童生徒と保護者、当時の担任教員らを対象に不登校等に関する調査が実施されたとのこと。
その年度に不登校として報告された児童生徒239人に関し、不登校の要因を問う質問をしたところ、不登校の要因に対する認識について、児童生徒と教員側との間でずれがあったというのです。
具体的には、「学業の不振」「宿題の提出」との回答については、児童生徒と教員の回答割合が比較的近い値であった一方で、「いじめ被害」「教職員への反抗・反発」「教職員からの叱 責」との回答については、教員と児童生徒の回答割合に違いがみられたとのこと。
「体調不良」「不安・抑うつ」「居眠り、朝起きられない、夜眠れない」などの回答については、児童生徒は約7~8割が選択しているのに対し、教員の回答割合は2割弱と低かったとのこと。

子ども側と教員側とで、不登校の要因に対する回答にずれが生じることは避けられないことなのだろうなと思います。
子どもが抱えている事情や思いのすべてを学校が同じように把握できるかというとそれは難しいだろうと思うからです。

もっといえば、子どもと保護者の側とでの認識にもずれはあるはず。
調査結果を見ると、たとえば不登校の要因として「親のこと(親と仲が悪いなど)」「学校とは違ったことをしたい」「インターネット、ゲームなどの影響」「授業がわからない」「学校の決まりのこと」などという複数の回答において、子どもの回答割合の方が高い結果となっているようです。
たしかに、親の側から、子どもが自分との関係性に起因して学校に行けなくなっているのではないかと思い至ることは難しいかもしれないし、学校で起きていることについて必ずしも子どもから話を聴いていないということもあるかもしれず、そうなると、これらの回答項目についてギャップが生じることもあるだろうなと思えます。

さらにいえば、子ども自身においても、今学校に行っていないという事態の要因、背景をどこまで掘り下げて考え、それを言語化できているかはわからないところ。

ただ、もし、子どもが、現状について、「今の状況はつらい」と感じているのだとしたら、この調査を踏まえ、親として考えるべきことがあるように感じます。
少なくとも、私自身は考えさせられたことが3つあります。

1つ目は、自分が、子どもが家庭の外で起きたことについて、気軽に話せる存在になるための意識をもつ重要性について。
たとえば、アンケート回答割合で、子どもと保護者との間に差があった「授業についていけない」「学校の決まりごと(に負担感を感じる)」などについて、親の立場では必ずしも子どもが感じている不安を認識できていない可能性があるのだと思います。
たしかに、子どもの不安を親が認識できたら問題がすべて解決するわけではないのですが、少なくとも、子どもがその問題に直面し、自分なりの解決をするサポートができる場合もあるはず。
具体的には、たとえば、子どもの中では「授業についていけない」という不安のままになってしまっているところについて、もう少し、その状態を細分化して、「それは特定の科目について感じること?」「逆に、楽しいと思える授業があるのだとしたら、その授業と、ついていけないと感じる授業との違いはどこにある?」「全科目の授業について『ついていける』状態になる必要って本当にあるの?」「特定の科目について授業中にはよくわからない状態で終わってしまったとして、それを事後的にフォローすることは可能?」「『ついていけない』と感じることで困ることって何?たとえば、その日の宿題がうまく進まないこと?授業の後のお友達との会話についていけないと感じること?」…そんな会話をしていくことで、子どもに、今までになかった視点が生まれることもあるかもしれない。
自分がうまく言語化できていなかった部分を言語化するサポートをすることで、心の中でモヤモヤし、よくわからないままに「自分はダメだ」とか「こんな不安な状態で学校に行きたくない」と思っていた状態から一歩抜け出すきっかけが見つかるかもしれないなと思うのです。
だから、そのサポートをするための前提として、子どもが現状抱えている不安を親に気軽に打ち明けられる状態を作ることが必要だと思います。
「親に何を言っても大丈夫」と安心できる存在である必要があるのだと思います。

ここはきっと一朝一夕に解決する話ではなくて、子どもがふと漏らしてくれた愚痴や弱さをどのような言葉で受け止めるかとか、子どもの小さな頑張りや成長を細やかに発見してそれを子どもに伝えることとか、そんな日常的な関わり合いこそが大事なのだと思っています。
もちろん、子どもが「登校しない」こと自体を否定的に捉える必要などなくて、それがその時点の子どもにとって必要なことであれば、「登校できていない自分」を否定的に捉えてしまっている子どもに、「必要があって今は登校していない自分」という見方を示すことも大事なことかなと考えています。
2つ目は、そうはいっても、子どもが自分には打ち明けられないこともあるだろうなという認識をもつ重要性について。
自分が子どもにとって何でも打ち明けられる存在になるために、子どもとの日常的な関わりを大事にすることは大切だと思うのですが、それでもなお、子どもが親である自分には言えない思いがあるのだろうという想像力をもって関わる必要があるのだと思っています。

ちなみに、わが子は、しょっちゅう、周囲に私の悪事を報告します。
たとえば、前夜、私と子どもが激しい言い争いをしたときなど、たいていその翌日に、まず、自宅マンションの管理人さんに、「昨日、ママと大げんかしたのだけど、ママがそのとき私を傷つけるような言葉を言ったの」と報告し、さらに学校でも先生方に同様の報告をすることが習慣になっています。
そして、たいていその話を聴いた周囲の方々が私に気を遣い、「でもさ、お母さんが言うこともそりゃもっともじゃない?」などと子どもに言うと、今度は、帰宅後、私に対し、「ねえ、私がママとけんかして、ママがいかにひどいかっていう話を先生にしたのだけど、先生ったらママの味方するんだよ。どう思う?」と報告してくるのです。
ここまでがセット。

ですから、今のところ、我が家では、子どもが私に対する怒りや不安をいろいろな場所でまき散らすことができているように思っているのですが、きっと、もう少し子どもの中で私との関係性などで深刻な悩みが生まれたときには、今のように気軽に周囲に言えないことも出てくるかもしれないし、特に子どもがもう少し成長してきたときには、家の中のことを周囲に打ち明けることを躊躇う気持ちも出てくるかもしれないなと想像します。
そんなときに、その思いを打ち明けられる信頼できる相談先を作り、子どもにも信頼できる相談先として認識させ、「親に言いづらいことを言える場所がある」と思える状態にしておく必要性を感じています。

3つ目は、いじめに起因する不登校について。
いじめが不登校の要因になっているとの認識について、子どもと教員側で回答割合に差があるという点については特に気になるところ。
この差が生まれる原因として、教員もいじめの存在自体は認識しているが、それが不登校の原因だとは認識していないというケースと、そもそもいじめの存在自体を認識していないケースとがあるとは思います。

教員がいじめの存在自体を認識していないというケースについては、子どもがいじめを学校側に訴えられていないこともあるかもしれないし、訴えを受けた学校側が「いじめ」として捉えていないこともあるかもしれない。
ただ、少なくとも、子ども自身が、学校に行けていないその要因としていじめの存在を挙げていながら、子どもがそのような思いでいることを学校側が認識できずにいる事態は問題。
学校への出欠連絡がアプリなどでなされることも多くなっていると思います。
学校側も、一人一人の先生方が業務多忙の中、各生徒の出欠の把握にとどまらず、その背景を探ろうとする余裕がどこまであるのか、とても難しいところもあるのだと思います。
でも、子どもの欠席という事実の裏に、子どものどんな思いがあるのか、ということを学校も家庭もともに丁寧に知ろうとする姿勢は必要なのだと思います。

最近、学校でのいじめやそれに起因した不登校に関するお悩みのご相談がとても増えているのを感じます。
ご相談の中でお気持ちをうかがっていると、終業式、卒業式を終え、それまでは1日1日を乗り越えることで必死だったご家庭で、新生活を控えたお子さんが今度こそは笑顔いっぱいの毎日を送れるようにという思いで、いじめ被害に遭われたことを乗り越える方法を探っていらっしゃるのではないかと想像します。

そのようなご相談をお受けしたときに私自身が一番大切にしたいことは、ちょっと抽象的な話にはなるのですが、お子様ご自身とそのお子様のために懸命に理不尽な出来事と闘ってこられた保護者の方が、どうしたら笑顔を取り戻せるかということです。
それは、必ずしも「刑事告訴」や「損害賠償請求」ではないかもしれません。
その方法を探るお手伝いをします。
お気軽にご連絡ください。

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