リーガルエッセイ

公開 2024.04.01

「嫡出推定制度」の見直しについて

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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親子関係に関する新しいルール

4月1日からスタートする法改正のひとつを取り上げてみたいと思います。

嫡出の推定の見直しについてです。

嫡出の推定の見直しというのはどういうことか。

前提として、民法が採用している「嫡出の推定」というものをお話しする必要があると思います。
「嫡出」とは「ちゃくしゅつ」と読みます。
嫡出子というのは、結婚している夫婦の間に生まれた子という意味です。
民法では、婚姻成立の日から200日を経過した後、または、婚姻の解消もしくは取消しの日から300日以内に生まれた子は夫の子と推定されるものとされています。

どうしてこんなルールがあるかというと、婚姻関係を基礎として父子関係を推定することで早期に法律上の父子関係を確定して子の地位の安定を図ることなどが趣旨として挙げられることがあります。

このような趣旨から推定のルールがあるために、嫡出推定を受ける子と父との親子関係を争うためには、子の父が、子の出生を知ってから1年以内に嫡出否認の訴えを提起する必要があることとなっています。

でも、このルールを徹底した場合、不都合も生じます。

たとえば、夫婦が離婚した後、女性がすでに別の男性と再婚しているケースで、女性がその新しい夫との間の子を産んだとします。
子の出生が、元夫との離婚から300日以内だったとすると、その子は、本当は新しい夫との間の子なのに、法律上は、嫡出推定のルールのもと、元夫の子と推定されることになります。

元夫がその子の出生を知ってから1年以内に嫡出否認の訴えを提起するならいいのですが、それをしない場合、戸籍上、その子は元夫との間の子となってしまうので、それを避けるべく、女性が、子どもの出生届を提出せず、子どもが無戸籍になってしまうということがあり得ます。

無戸籍であっても、行政上のサービスを全く受けられなくなるというわけではありません。
でも、住民票の記載をしてもらうにも児童手当等受給手続きにあたっても一定の手続を要します。

この無戸籍者問題の解消という観点から、嫡出推定制度の見直しが行われることとなりました。

見直されたことにより追加されることになったルールを2つ取り上げます。

1つ目は、婚姻が複数回の場合のルール。
女性が子を妊娠してから子が生れるまでの間に、複数の婚姻をしていた場合は、子の出生に一番近い時期に婚姻した相手である夫の子と推定するというもの。

2つ目は、1つ目に取り上げたルールができたことに伴い、これまで女性に関してだけ存在した再婚禁止期間が廃止されたということ。
これまでは、離婚後100日間は女性の再婚が禁止されていました。
どうしてかというと、嫡出推定ルールのもと、不都合があったから。
たとえば、離婚した翌日に女性が再婚し、離婚後290日後に子が生まれたというケースを考えると、離婚から300日以内の出生だから、子どもは、元夫の子と推定されてしまう一方で、新しい夫との関係でも、再婚から200日が経っての出生だから、新しい夫の子であるとの推定もされてしまう。
そうすると、2つの推定を受けるために、法律上、子の父を推定できない。
その事態を避けるために、女性に100日間の再婚禁止期間があったのです。
でも、1つ目に取り上げた新たなルールができれば、子の出生に一番近い新しい夫との間の子と推定でき、推定が重複するという事態にならないのだから、再婚禁止期間というものは必要なくなるというわけです。

…正直、あれこれ説明してきましたが、なんとも説明が難しいなと感じます。
抽象的にお話ししても、なんだかわかりにくいですよね。

要は、法律上の親子関係について、4月1日から新ルールが発動するということです。
そして、その新ルールのもとでは、これまで女性に対してだけ存在した再婚禁止期間というものがなくなったということをまず認識しておいてもいいのかなと思います。

離婚や再婚などが現実的な問題になっており、子の法律上の父親がどうなるのか、という点にご不安がある場合は、一度弁護士に相談してみてください。
もしかしたら、とてもご相談がしづらいと思われるところかもしれませんが、弁護士は守秘義務を負いますので安心してお問い合わせください。

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