リーガルエッセイ
公開 2024.08.19

中学校転校の選択肢

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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中学校転校の選択肢

お子さんが、通っている中学校でいじめ被害に遭っていることが判明。
学校側や加害児童側とのやりとりをしたけれど、学校は、お子さんのいじめ被害に関し、あまり真剣に向き合ってくれているように見えず、親が進捗確認の連絡をしないと何も連絡をくれないし、「相手の子はいじめたことを否定していて、はっきりした証拠もないので、学校としては何もできない」と言われてしまい、何も解決しないままにわが子だけが学校に行けなくなっている…
そんなとき、「この環境を変えなければ」と思うこと、あると思います。
学校を変えれば、わが子は新しい環境で、気分を変えて通学することができるはず、と思うこと、ありますよね。
もちろん、これは、いじめ被害に遭っているというケースにとどまらず、「学校の雰囲気がわが子に合わない」「先生方の教育方針に違和感がある」「授業の進みが早く、ついていくことが難しい」などいろいろなケースに当てはまることと思います。

そんな転校のお話を取り上げてみたいと思います。

まず、そもそも、中学校に関して転校ができるのかという点ですが、結論として、いずれも可能です。

公立中学校の場合、住まいに応じた学区があり、入学時に、あなたはこの中学校ですよと指定されていますよね。
にもかかわらず、指定された学校以外の公立学校には転校できないのではないかと思われるかもしれません。
でも、当初指定された学校以外の公立学校への転校ができる場合があります。
この点については、文科省のホームページで、「保護者は、就学すべき学校の指定にしたがって、その子を就学させる義務を負いますが、いじめへの対応、通学の利便性、部活動等学校独自の活動等を理由とする場合のほか、市町村教育委員会が相当と認めるときは、保護者の申立てにより、市町村内の他の学校に指定を変更することができます」と書かれています。学校教育法施行令、学校教育法施行規則を踏まえ、各教育委員会が、就学校の変更ができる場合の要件や手続きをホームページで公開しています。
私立中学校への転入については、学校によってその可否、手続き等異なるはずなので確認が必要になるでしょう。

私立中学校の場合、私立中学校を退学した上で公立中学校に転校することが考えられます。
その際は、書類提出等の手続きが必要になりますので、お住まいの教育委員会に確認しましょう。

いずれにしても、転校という選択肢自体は存在しています。
転校することで現状の問題が解決することももちろんあると思います。
ただ、転校するかどうか、という点については、じっくり考えてみる必要があるのかなと思っています。
転校が、必ずしもすべての問題を解決するとは限らないからです。
もちろん、転校したことで「この問題は、転校によってのみ解決するものではなかったんだ。それでは、どこに切り込めばいいのだろうか」と気づきになることだってあるはずで、にもかかわらず、転校しても無駄だったというネガティブな評価をする必要なんてないと思います。
動いたからこそわかることってあると思うのです。
でも、転校するということはお子さんにとっても保護者の方にとっても大きなこと。
その決断をする前に、現状、お子さんが直面している問題を整理し、今の環境にいながらできることを考え、それをひとつひとつクリアしてもなお残る問題について、果たして、転校することで改善に向かいそうなのか考える必要もあると思います。
たとえば、今の学校に籍を置いたまま、適応支援教室やフリースクールなどに通う選択もあるでしょう。
いじめの加害児童側に対し、学校側が出席停止や別室指導をすべき場面もあるでしょう。

なにより、転校するのかどうかを決断する前に、まずは、大事な決断をするに足るだけのエネルギーが満ちているのか、お子さんやご自身の状態を観察することも大切です。
今の状態を維持したまま、ゆっくり休養をとる必要がある場合もあるでしょう。

実はわが家でも、私立中学に入学した娘が、3年生に進学するタイミングで公立中学校に転校しました。
転校を決断する前に、適応支援教室に通った時期もありました。
転校するかどうかを考える過程で、転校することで、これまで直面していた問題が改善に向かうのかを探るため、転入先となる中学校に何度も足を運び、不安に感じていた点を先生に確認させてもらいました。
また、娘本人において解決すべき点もあると感じていたので、その点については娘とも話し合い、ここは学校が変わることで解決することではない課題だね、ということを確認しあったりもしました。

最終的には、「選んだほうを正解にする」と決めて決断しましたが、やはり、その決断に至る過程で、調べたり、考えたりしたことが大事だったと思っています。
今、お子さんが、学校でいじめ被害に遭ったり、その他問題を抱え、学校に行けなくなっている状態であるというとき、焦って次の動きを考える必要はないのだと思います。
エネルギーが不足していて、次の動きを考えるべきタイミングでなければ、少しゆっくりとお休みをとることも大切です。

そして、次の動きを考えたいなというタイミングになったら、まずは、取り得る選択肢を知ること。
通学している中学校から転校することもひとつの選択肢。
それ以外にもいろいろな選択肢があります。
取り得る選択肢を知った上で、今直面している課題を乗り越えるのに適切な環境、方法についてじっくり考えていきたいですね。
お子さんも保護者も笑顔になれる道を探っていけるといいなと思います。

その過程で、いじめの被害を受けたことについて、学校に調査や対応を求めたり、加害児童側に損害賠償請求等したりする必要が生じることもあります。
転入先となる学校にあらかじめ赴き、前の学校で起きたことを共有するとともに、転入後の生活の中で配慮いただきたいことを伝える必要が生じることもあるでしょう。
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