リーガルエッセイ
公開 2024.08.20

中学校でいじめ加害児童を停学処分にできるのか?

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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中学校でいじめ加害児童を停学処分にできるのか

いじめ被害に関わるご相談を受けたとき、被害に遭われたお子さんのご両親から「相手の子どもが学校に通い続けていることに納得がいかない。停学処分にすることはできないだろうか」というご質問をいただくことがあります。

たしかに、そのお気持ち、もっともだと思います。
いじめられた側が、再びいじめられることを恐れ、また、いじめについて親や学校に相談したことへの報復を恐れて学校に行けなくなるなんて理不尽な話、ないと思います。
いじめた側は、学校からちょっと怒られた程度で、これまでと同じように学校生活を送っているように見えるのに、いじめられた側が学校に行けなくなり、それを見守る家族だって、これまでどおり仕事をしたりできなくなる。
登校できない日々は、授業に遅れてしまう不安、高校進学への不安にもつながる。
そんなばかな話、ないと思いますよね。

学校教育法11条には、「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。」と定められています。
そして、学校教育法施行規則26条によれば、懲戒には、退学、停学、訓告の処分があるものの、義務教育である中学までは、懲戒処分としての停学を行うことができないことになっています。

このような定めからは、停学をさせることが一切できないのではないかとも見えます。
でも、学校教育法35条には、市町村の教育委員会が、保護者に対し、児童の出席停止を命ずることができる旨の定めがあります。
他の児童に傷害、心身の苦痛または財産上の損失を与える行為をしたり、職員に傷害または心身の苦痛を与える行為をしたり、施設等を損壊する行為をしたり、授業その他の教育活動の実施を妨げる行為をしたりといったことが繰り返し行われ、ほかの児童の教育に妨げがあると認められる場合に、この出席停止が命じられることがあるのです。

実際、ご相談をお受けしたかたの中に、すでに、加害児童側が出席停止となっているというケースも多くありました。

加害児童が出席停止になったところで、何も事態が変わらないのではないかと思われるかたもいるかもしれません。
でも、この出席停止期間は、加害児童が学校に来ないということは、それ自体大きな安心につながることもあるはず。
そして、その間に、どうしたら、今後、加害児童が出席を再開したとしても、被害に遭ったお子さんが安心して通学することができるか、ということについて学校側と話し合いをすることができるでしょう。
たとえば、1学年に複数のクラスがあるのであれば、クラス分けをしてもらい、また、できる限り離れた教室にしてもらい、学校で、お子さんが加害児童と接触することを避ける方法を考えることもあり得ます。
全校生徒が出席する学校行事においては、必ず、お子さんと加害児童側とに先生をつけてもらい、お子さんが怖い思いをすることがないように配慮を求めることもあり得ます。
お子さんが、具体的にどのような場面で恐怖、不安を感じるかを丁寧に聴き取り、そのうえで、その場面での不安を解消するような策としてどのようなものが考えられるか、考え、実行していくことができるはず。
もちろん、その間に、学校側から加害児童側に働きかけ、指導を尽くすこともできるでしょう。

この出席停止については、学校教育法が、その主体を「市町村の教育委員会」としているため、私立中学においては取り得ない処分なのではないかとも思えます。
たしかに、私立中学に直接適用される条文ではありません。
でも、私立中学において、加害児童がいじめに及んだとしても出席停止処分ができないとなると、私立中学校は、通学する子どもたちに対して負うべき、安心して学校に通学して勉強することができる環境を提供する義務を果たしていないことになるでしょう。
そう考えると、私立中学においても、やはり学校教育法35条の考え方を及ぼすべきで、同法が定めるような場面において加害児童の保護者に対し出席停止を命じるということは法的に許されるものと解釈すべきなのだと思います。

お子さんがいじめ被害に遭ったとき、お子さんは、もしかすると相当期間つらい思いをしてきた可能性もあり、その傷をいやすためには、少しゆっくり学校をお休みする必要があるケースもあるかもしれません。
でも、もし、お子さんが学校に行きたいと思っているのに、加害児童がいる学校に行くことへの不安を訴えているなら、加害児童を出席停止にさせた上で、お子さんが今後不安なく通学できるための環境を整えるための方法を考えることもできます。
学校側との話し合いにとどまらず、加害児童側に対し、話し合いをもちかけることが必要になることも。
お子さんがいじめ被害に遭ったものの、今後、どう動いていけば安心できる環境を整えることができるかお悩みの方は、弁護士までご相談ください。
一緒に状況を整理し、学校や加害児童側への働きかけについて窓口となってお手伝いすることもできます。
ご自宅にお子さんもお隣にいる状態で、オンラインでお話することもできますので、一度、お気軽にご連絡くださいね。

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