リーガルエッセイ
公開 2024.08.29

警察はいじめ事件に介入しない?

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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警察はいじめ事件に介入しない?

先日、熊本県内の高校のサッカー部に所属する部員の男性が、上級生から、全裸で土下座をさせられる「いじめ」を受けた件で、上級生らが強要罪で起訴された旨報じられました。

報道によると、部員の男性は、全裸で土下座させられているところを写真に撮られるなどし、その後、退部したとのこと。

事実関係についてはこの報道限りでしか把握していませんので、刑事裁判の進捗に注目したいと思いますが、今回は、いじめと警察介入について取り上げてみたいと思います。

深刻ないじめ被害が報じられるたびに、そのような被害が「いじめ」という言葉で呼ばれることに違和感を覚えることはありませんか?
実際、私が、かつてお子さんの被害についてご相談を受けた際にも、保護者の方が「わが子が受けた被害を『いじめ』と呼ばれることに抵抗があります。これは、犯罪被害だと思います」とおっしゃっていたことがあります。
「いじめ」という言葉は、お子さんが受けた傷を考えたとき、あまりにも軽すぎる響きをもっているように感じられるのはもっともだと思います。

そして、お子さんの受けた被害について、学校による調査や指導のみならず、警察に被害届を出して、捜査するなどの刑事手続きを行ってほしいと思うこともあると思います。

そのようなご相談を受ける中で、「学校でのいじめ事件は、警察で捜査してもらうことはできないのでしょうか?学校での出来事だから、警察の介入は避けられてしまうのでしょうか?」と質問されることがあります。

結論として、学校でのいじめに関わるものだからという理由だけで被害届の受理を拒まれたり、介入を拒否されたりすることはありません。
文部科学省が公表している「いじめの防止等のための基本的な方針」にも、いじめの中には、犯罪行為として取り扱われるべきと認められ、早期に警察に相談することが重要なものや、直ちに警察に通報することが必要なものが含まれるとし、教育的な配慮や被害者の意向への配慮をしたうえで、早期に警察に相談、通報の上、警察と連携した対応をとることが必要であると明記しています。
ですから、たとえば、加害者から突き飛ばされて転倒した際手足にけがを負ったとか、お金を脅し取られたとか、それ自体が犯罪になるようなことをされた場合には、警察に相談したり、被害届を出したりすることを検討する必要があるでしょう。
一方で、被害届を出して加害者の処罰を望めば、それが実現するかというと、加害者の年齢次第ではそもそも刑事責任を問えないですし、仮に刑事責任を問える年齢に達していたとしても、未成年の場合は、成人に対する刑事手続きと異なり、教育的な観点が働かざるを得ず、必ずしも「厳罰」につながるとは限りません。

いじめの被害に遭った際、自分には何ができるのかという選択肢を知ることはとても大事だと思います。
ただ、その前に考えるべきことは、お子さんにとって、今の困りごとがどこにあって、どうあれば毎日が笑顔になれるのか、ということを考えること。
そのうえで初めて、その状態にたどりつくために、いろいろあり得る選択肢の中からどの方法をとる必要があるかを考えることができるのだと思います。
お子さんがいじめ被害に遭い、警察に被害届を提出することを含め、何ができるのかわからないし、お子さんのケースでは何をどんな順番で進めていったらいいのかもわからないという場合は、一度お気軽にご相談ください。

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