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転落の巻き添え
先日、横浜駅に直結する商業施設で、屋上から高校生が転落し、転落の際、下にいらした女性を巻き込み、転落した高校生と巻き込まれた女性とが亡くなったとの報道を目にしました。
転落した高校生については、自ら屋上の柵を乗り越えて飛び降りた可能性があり、重過失致死罪を視野に捜査がされているとも報じられていました。
下にいらした方にとって避けようのない危険。
なにひとつ落ち度もなく日常が絶たれた無念を思うと、言葉が出てきません。
ただ、高校生の転落の原因などが明らかとはいえない状況で、この件について具体的なコメントをすることはためらわれます。
ただただ、二度と同じことが起きてはいけないという思いです。
このたび報じられた件については、私は、報道を目にしたに過ぎず、それ以上の事実関係がわからないので、この件を離れてお話ししたいと思います。
過去に、ビルなどの屋上から飛び降り自殺を図ったところ、下を通行していた人が巻き添えとなって死亡したという事件が報じられたことがたびたびあります。
そのような事件で、自ら飛び降りた人には、重過失致死罪という犯罪が成立する可能性があります。
この犯罪は、その行為に及んだら、人が死亡するということが、だれでも、ちょっと考えればわかるはずなのにそれを怠ったという場合に成立します。
ビルなどが人通りのある場所に建っていて、ある時間帯には多くの人が行き来しているという状況下では、そのビルの屋上から自分が飛び降りた場合、下を通行する人に激突し、通行人を死亡させる可能性があることを、だれでも、ちょっと考えれば想像できるといえそうです。
ですから、その状況下で、ビルの屋上から飛び降り、結果、通行人を死亡させた場合は、重過失致死罪が成立するといえるでしょう。
もっとも、飛び降りた人自身が亡くなった場合には、その本人の刑事責任を問うことはできません。
重過失致死罪で書類送検されるものの、被疑者死亡で不起訴となります。
このようないたましい出来事が起きないために、何ができるのかを考えると、やはり、故意に高い場所から飛び降りることや、誤って転落することがあり得る環境をなくせないものかと思ってしまいます。
建築基準法施行令には、屋上広場等の周囲には、安全上必要な高さが1.1メートル以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならない旨が定められています。
この基準をクリアしているのであれば、法令上やるべきことは果たされているといえるはず。
その基準を超えて、人が転落する余地をゼロにするための方策を、すべてのビルやマンションで講じることは現実的ではないのだと思います。
また、たとえ、いかなる措置をとろうとも、必ず抜け穴はできてしまうと思われます。
確実に、人が屋上など高い場所に行ったり、そこから、設置されている柵を乗り越えられない状態を作り出すことというのは無理な話なのだと思っています。
でも、さまざまなことに思い悩む方が、自らの命を絶つための行動に出てしまいそうになったときに、物理的にその行動のハードルとなるものが増えれば、もしかしたら、行動に出ようとした方が我に返る機会を作ることができないだろうか。
ハードルが高ければ高いほど、多ければ多いほど、それを乗り越えて行動に出る過程で、周囲の方がその方の行動に気づき、阻止すべく働きかけをする機会を作ることができるのではないだろうか。
そんな簡単な話ではないということもわかります。
でも、二度と、人が転落するということも、そこに巻き込まれる方の犠牲も起きてほしくないという思いで、そのために何かできることはないか、という視点で今一度考えてみることに、意味はあると思うのです。
弁護士としての私自身ができることもあるはず。
お客様として出会った方、ご縁があって出会った方、おひとりおひとりと誠実に向き合い、お悩みがあると打ち明けられたときには、その心の曇りを少しでも晴らすお手伝いをすること。
何も見たくない、聞きたくない、うずくまっていたいというところから一歩踏み出すための言葉、力を届けること。
「この人に頼ってみようかな」と思っていただけるだけの力をつけること。
そのために、今自分がすべきことを地道に積み重ねていきたいと思います。
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