リーガルエッセイ
公開 2024.09.13

勝手に離婚届を提出されてしまった場合について2つの側面から解説

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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勝手に離婚届を提出されてしまったら

先日、妻の同意を得ずに離婚届を偽造したとして、有印私文書偽造・同行使、電磁的公正証書原本不実記録未遂の疑いで男性が逮捕されたと報じられました。
報道によれば、この男性は、妻の同意を得ないままに離婚を成立させようと企てて離婚届を偽造し、市役所に提出したものの、戸籍システムへの記録には至らなかったとのこと。

以前、婚姻届が偽造されたケースについてはお話したことがありましたが、離婚届についても偽造されるケースが発生します。
報じられた件は、まだ捜査が始まったばかりで、事実関係がわかりませんので、一般論として、勝手に離婚届を提出されてしまった場合について2つの側面から取り上げてみたいと思います。

1 離婚は有効なのかという観点からのお話

2つのパターンを想定したいと思います。

1つ目が、夫婦の一方が、他方と離婚したいが、相手が離婚に応じてくれないため、離婚届の署名欄に、勝手に相手の署名を偽造してしまい、役所に提出してしまうというパターン。
2つ目が、昔、大きめな夫婦げんかが勃発した際、「離婚だ!」ということになり、離婚届を役所からもらってきて、それぞれ、勢いで署名した、そのときの離婚届を、いったんは夫婦で話し合い、離婚はやめようと決めたのに、一方がこっそり隠し持っていて、ある日、これまたこっそり役所に提出してしまうというパターン。

前提としておさえておきたいのが、離婚が成立するための条件。
2つあって、①当事者双方に離婚意思があること②離婚届が提出されること。

上にあげたいずれのケースも、①の離婚意思があるとはいえず、それぞれの離婚は有効とはいえません。

2つ目のケースについて、双方が署名したのだから、離婚意思は認められるではないかと思われるかもしれません。
でも、離婚意思は、届出の時点で必要です。
ですから、届出の時点では、一方がすでに離婚意思を失っていて、にもかかわらず知らぬ間に意に反して届け出られてしまったという場合は、一方の離婚意思に欠けることになるのです。
では、いずれも離婚が有効とはいえないとして、すでに、届出を踏まえて戸籍上にも離婚が成立したことが記録されてしまった場合、「このとき、私には離婚の意思がなかったから、離婚は無効です」と市役所に申し出れば、戸籍を書き換えてもらえるのか?

その答えはノーです。

法的な手続きが必要になります。
協議離婚無効確認調停、離婚無効確認訴訟という手続きを経て、そこで得られた離婚が無効だと認める審判書または判決書と、それぞれが確定したという証明書を役所に提出する必要があります。

さらっと書いてきましたが、実は、ゴールに至る過程はなかなか大変なこともあります。
実際、過去の離婚無効確認訴訟の判決文を読んでみると、そもそも、署名をしたのがだれなのかというところから争いになった事案、離婚届提出時の離婚意思が双方に認められるのかということが争いになった事案、離婚届が無断で提出されたことを知った後、出されてしまった側が追認したと認める事情があるかという点が争いになった事案など、ある離婚が有効か無効かという評価を巡り争いが生じる事案があることがわかります。

ご自身の意に反して離婚届が提出されたという事態に直面したら、早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

2 刑事責任のお話

ここまでは、勝手に離婚届を出された場合に、その離婚が有効なのか否かという話でした。
ここからは、夫婦のうち一方が、相手と離婚したいがために、相手の署名欄に勝手に署名して離婚届を提出してしまった場合、刑事責任を追及されるのか、というお話です。
結論、刑事責任を追及される可能性があります。
有印私文書偽造、同行使、電磁的公正証書原本不実記録罪が成立し得ます。
先ほどお話しした、離婚の無効を法的に確定させる手続きとは全く別の問題ですので、相手の刑事責任を追及することを考える場合は、警察に被害申告する必要があります。
  
いずれにしても、ご自身の配偶者が、同意もないままに偽造した離婚届を提出してしまうとか、もう書いた記憶もない離婚届をこっそり隠し持っていて、提出されてしまうとかいう事態はなかなか想像できないですよね。
でも、提出されてしまった場合、戸籍を訂正するための手続きも、相手の刑事責任を追及するための被害申告の手続きも、ご負担を感じることが多いと思います。
そう考えると、未然に何ができるのかということも考えておきたいですよね。
ご自身の配偶者が一方的に離婚を強く希望しており、いろいろな事情を背景に、離婚を急いでいることがうかがわれるようなときや、過去に、けんかの勢いで署名した離婚届の所在が分からず、もしかすると相手がもっている可能性があると思われるときなど、勝手に離婚届を出されるご不安がある場合には、役所の窓口に離婚届の不受理届を提出しておくのはひとつの選択肢です。

ご自身が離婚する意思もなく、届出を出してもいないのに、身に覚えのない離婚届が提出されていることがわかったら、弁護士までお問い合わせください。
とるべき一歩をわかりやすくご説明します。

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