リーガルエッセイ
公開 2025.05.30

ワークショップにゲストとして参加して

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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ワークショップに参加して

先日、ある企業で行われた人権ワークショップにゲストとして参加させていただく機会がありました。
提示されたいろいろな事例について意見を出し合うというものでした。
そのワークショップの中身には触れられないのですが、この参加を通して感じたことがあり、そんなお話をしてみたいと思います。

2つあります。

1つは、ワークショップの可能性の大きさについて。
私は、ワークショップを主催したことも、ワークショップとは何なのか勉強したこともなかったので、今回、参加するにあたって、改めて調べてみました。
すると、ワークショップというのは、「作業場」や「工房」を意味する言葉なのだとわかりました。
そこでは、参加者たちが聴き手となって、だれかの話を一方的に聴かされるのではなく、ひとりひとりが考え、発言するという能動的な関わりが求められるわけです。
また、ワークショップは、そのゴール設定のされ方により、いろいろな意味をもち得るのだということもわかりました。
ファシリテーターの技量もワークショップにより得られる効果に大きく影響するとも思います。
もちろん、ゴールが何かによって、ワークショップ以外の手段による方が有効な場合もあると思われますので、検討が必要ですね。
私が弁護士として関わることの多い、社内不祥事を予防する方策のひとつとして機能する場面がありそうだと思いました。

もう1つは、ワークショップに臨む姿勢について。
実は、今回のワークショップには、私だけでなく、所属する法律事務所にこの4月に入所した新人弁護士も参加しました。
そして、ワークショップの数日前に、新人弁護士の一人から、ワークショップに参加するにあたり、あるべき姿勢に関し相談を受けたのです。
その相談内容は、「ワークショップに参加するにあたり、自分なりにワークショップというものについて調べてみた。すると、ワークショップというのは、何か特定の正解があるというものではなく、その過程で参加者が自由に意見を出し合うということが想定されていることがわかった。とすると、参加者らの意見を聴くにあたって、その意見を評価することにつながるような反応、たとえば、首をかしげたり、頷いたりといった反応をしない方がよいのではないかと考えた。この点について意見を聴かせてほしい」という趣旨のものでした。
その問題意識に関し、考え方はいろいろあり得るのだと思いました。
ですので、正解はこれだ、というわけではないという前提で、私は、私の意見を伝えました。
私も、参加者に対し、聴き手が評価しているかのように受け止める可能性のある反応は避けるべきだと思います。
その観点から、参加者の発言に対し、眉間にしわを寄せて険しい顔をしたり、首をかしげたりすることは避ける必要があるのだと考えています。
それでは、自分の反応が何らかの評価であると感じさせるリスクを避けるために、あえて無反応にすべきなのか。
この点については、私は、そのように考えていません。
無反応は、話し手にネガティブな評価として伝わり、「自分の意見に反対なのではないか」「何かまずいことを言ってしまったのではないか」などと不安にさせてしまう可能性もあるのではないかと思うからです。
ワークショップにおいて、自由に意見が交わされるためには、「この場では自分が何を言っても大丈夫」と安心感が大切なのではないかと考えています。
そう考えたとき、私がありたいと思うスタンスは、話し手の方への敬意を表現すること。
話し手が、自分の考えを言語化し、それを参加者たちの前で発してくれたこと、そのこと自体がすばらしいことで、この場に対する大きな貢献として賞賛されることなのだと思うのです。
ですので、私は、発言の内容それ自体への賛同ではなく、発言したことそれ自体への敬意、賞賛を表情や相槌で表現できたらいいなと思っています。
その敬意や賞賛の意図が正しく伝わるように、その反応は、すべてのかたに対し等しくなされる必要があるのだろうと思うし、前後のコメントにも工夫が必要なのだろうと思います。

そして、その話は、必ずしもワークショップに限った話ではないのだろうなとも思うのです。
私は、弁護士として、お客様のお話を聴く機会が多くあります。
その際、自分の聴く態度というものが、お客様にどのように見えるのか、伝わるのか、ということを常に想像し、気を配る必要があるのだと思っています。
これは、直接顔を合わせてお話しするときだけではなく、電話やメールであっても同じなのだとも思います。
顔が見えないからこそ、特に電話やメールではより一層、伝わり方を想像する努力が必要になるのではないかと思うのです。

それにしても、こうして、ワークショップに参加するにあたり、ワークショップとはどのようなもので、そこに自分はどのようなあり方で臨むべきかということをあらかじめ考え、相談してきてくれた新人弁護士の彼には感謝。
おかげで私自身が聴き手としてのあり方を今一度考える機会にもなりました。
毎年、事務所で迎える新人弁護士と向き合う過程で、私自身、大きな学びと刺激を得ることができているように思います。
新人弁護士8人の成長スピードに負けないように、私も気を引き締めてお客様と向き合っていきたいと思います。

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