リーガルエッセイ
公開 2025.06.10 更新 2025.06.11

警察庁公表のデータを見て思うこと

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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警察庁の発表に思うこと

先日、警察庁から「令和6年におけるストーカー事案、配偶者からの暴力事案等、児童虐待事案等への対応状況について」というタイトルのデータが公表されました。

各事案の被害実態等を他の年との比較で明らかにするものです。
その内容は、ニュースでも報じられていました。
その報道、警察庁公表のデータを見て感じたことを2つ取り上げてお話してみたいと思います。
 
1つ目は、「私事性的画像に係る事案への対応状況」というデータについて。

これは、いわゆるリベンジポルノ被害に関するものです。
令和6年の相談件数は2128件で、過去最多となっているとのこと。
その中でも私が特に気になったのは、被害者の性別、年齢です。

まず、性別に注目。
一般的に、「被害者は女性」と思われがちですが、男性被害者も22%以上に及び、しかも、その増加率は女性よりも大きいとのこと。

また、年齢に注目すると、20歳代までが全体の76%を占めており、特に、19歳以下の被害者が昨年と比べても急増しているということがわかります。

その理由は、被害者と加害者の関係に関するデータから推測することができそうです。
被害者と加害者の関係は、交際相手(過去の交際相手を含む)が圧倒的に多いのですが、次に多いのが「知人友人(ネット関係のみ)」という類型。
ネット関係以外の知人友人間の被害に比べると2倍近い数に及んでいます。
昨年からの増加率も大きい。
これらのデータに基づき、個人的には、10代の子どもたちが、SNS等で知り合った関係性において、裸の画像等をさらされる被害に遭うことが増えているのではないかと想像しています。

私自身が10代だったころは、見知らぬ他人とオンラインでつながるなんて想像もしていなかったことなので、今は、中高生のみならず小学生たちも、SNS等を通じて見知らぬ人たちと接触する機会があり得るという実態を知ることは、被害を防ぐために必要なことだと感じています。 

2つ目は、「児童虐待事案への対応状況」というデータについて。

児童虐待事件の検挙件数も、令和6年に過去最多を記録しているとのこと。
過去には存在していても発覚しないままだった事案が、児童虐待に対する社会の認識の高まりにより発覚しやすくなったという背景もあると思われ、単純に発生件数が増加しているという捉え方ができるかはわからないのですが、いずれにしても、その検挙件数が2649件もあり、被害児童の数も2700人、うち52名は子どもたちが亡くなっているという事態は重く重く受け止める必要があると思います。
警察庁が公表したデータの中からは見つけられなかったのですが、ニュースでは、児童虐待発覚の端緒についても調査されたとして、発覚の端緒としては、子ども、親族、近隣住民からの通報や相談が半数を占めたと報じられていました。

さらに、4割が児童相談所からの通報、1割が学校や自治体、病院などからの通報。
これは、あくまでも、警察が児童虐待を認識するに至った経路を示すデータなのだと思いますが、児童虐待を一番最初に発見するのが警察でなくてもよいのです。
児相、学校、自治体、病院、近隣住民など、どこかでその疑いをいちはやくキャッチし、子どもたちの安全が確保することこそが求められるべき。

周囲が児童虐待の疑いを察知し、その情報を児相等に届ける重要性については、少しずつ広まってきているように思います。
児童虐待を疑わせる兆候として、子ども側、保護者側それぞれにどのような特徴があり得るかということをホームページ上で掲載する自治体も増えているようです。
ただ、報道を見ていると、児童虐待が明るみに出たとき、近隣の方などが「まさかこのご家庭でそんなことが」とコメントしていることもしばしばあるように思いませんか?

そんなとき私が思うのは、被害に遭っている子どもたちがいち早く声をあげられるようになるにはどうしたらいいのかなということ。
被害に遭っている子ども本人が、自身の親や身近な人の行為について周囲に相談することはとてつもなくハードルが高いのだとは思うのです。
でも、そのハードルの高さの背景にどんな事情がありそうかなということを考えたとき、それが、たとえば、「親のしていることは、自分のためにしてくれていることなのかもしれない」という思いなのだとしたら、それに対し、「『しつけのため』などという理由であっても、親は子どもに暴力をふるってはいけないんだよ。あなたは、そのような暴力から守られるべきなんだよ」ということを伝える必要があると思うし、たとえば、「子どもの話なんて信用してもらえないかもしれない」という思いなのだとしたら、それに対し、「責任をもって話を聴き守るから大丈夫だよ」ということを伝える必要があると思う。

すべての子どもたちに対し、子どもたちが感じるかもしれない、自ら受けている被害を打ち明け相談するハードルの高さの背景に存在するであろう事情を想像し、ひとつひとつ丁寧な説明が必要になるのだと思うのです。

学校の授業だけでなく、もしかしたら学校には行けない事情のある子どもたちが見るかもしれないSNSなどでも、子どもたちが安心して被害を相談できるための言葉を届けて行く必要があるのだろうなと思います。

子どもたちが、「自分には生まれながらにして、当たり前のこととして大切に扱われる権利があって、たとえ親であっても、そんな大切な自分に暴力を振るうことは許されない」と実感でき、また、周りの大人たちはその被害を相談したとき、必ず守ってくれるんだと確信できること、それが目指さなければならない状態なのだと思っています。
もちろん、その環境や虐待の状況等により、子ども自ら相談することを到底期待できないケースも多々あると思います。

ですから、周囲が異変をキャッチしようとする姿勢はやはり何よりも大切であることは言うまでもないと思いつつ、密室で行われることも多く、また加害側が周囲からの発見を隠蔽しようとしていることも多い中で、子ども本人が声をあげることができる状態を作り出すことで、被害に遭っている子どもを一人でもそこから救うことができればと思わずにはいられません。

私は、わが子にももちろん、いじめ予防授業で関わる子どもたちにも、「自分は何よりも大切に扱われるべき大切な存在である」ということを丁寧に丁寧に伝えていかなければいけないと改めて感じました。

弁護士は、いじめの問題、虐待被害の問題、今後子どもたちが直面するかもしれない人権侵害のリスクをいかに防ぐことができるかなどという話を取り上げながら、子どもたちに、大事な「人権」のお話をすることができます。

学校で、その他子どもたちの居場所となるようなコミュニティで、そのようなご要望がありましたら、どうぞお気軽にお問合せください。

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