<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら
いじめ報道を見て思うこと
先日、ある公立中学校に通っていた当時中学3年生のお子さんが自殺したことをめぐり、ご両親が、市に対し、損害賠償請求をしたという報道を目にしました。
その報道を見て思うところがありましたので、取り上げてみたいと思います。
1つ目は、そのお子さんが、亡くなる2か月前に行われた道徳の授業でプリントに「本当の自分は出さない。またいじめにあうかもしれないから」などと書いて提出していたと報じられていた点について。
私は、報道されている以上の事実を何も知りません。
でも、そのお子さんは、先生をはじめとする学校側に、直接いじめ被害に遭っているという相談をすることができずにいたところ、道徳の授業にプリントを提出するという機会を得て、迷いに迷って、わらにもすがる思いで訴えたのではないかと思えてなりません。
プリントを見た先生はどんな反応をするだろうかと不安を感じながらも、「もしかしたら、これを読んだ先生が、家に話を聴きに来てくれるかもしれない。放課後、じっくり話を聴いてくれるかもしれない。」そんな期待を抱きながら、必死の思いで声をあげたのではないかと思えてなりません。
でも、報道によれば、そのプリントには、「Good job!」というはんこだけが押され、返ってきただけで、他には何らの対応がなかったとのこと。
そのはんこを見たときのそのお子さんの気持ちはいったいどんなものだったのだろう。
目を疑うような気持ち、体中から力が抜けていくような。
「ああ、学校は助けてくれないんだな」と悟ったかもしれません。
そのプリント提出の機会がそもそもなかったら味わわずに済んだ絶望を感じたのではないか。
私は、その中学校のある市のホームページを見てみました。
「いじめ対応等のガイドライン」というデータが公表されていました。
そこには、「いじめの早期発見」という項目があり、「子どもを取り巻く全ての大人が連携し、子どもの些細な変化に気付く力を高めることが必要です。」「子どもは、いじめられていることを相談しにくい状況でありながら、でも気付いてほしいという思いをもっています」などと書かれています。
作成されたのが令和6年11月とありましたが、これまでにあったものを何度か改訂してきたものであるとの記載も。
もしかしたら、亡くなったお子さんは、いじめ被害を学校に打ち明けたとき、先生方がどんな風に対応するのか不安に思い、当時のガイドラインをこのホームページを見て確認したかもしれない。
そして、ガイドラインの記載に勇気づけられてプリントに書き込みをした可能性もあるのではないかとも思うのです。
私は、このプリントを受け取った先生がどのようなお立場にあって、当時どのようなご状況にあって、プリントの記載をどう受け止め、対応したかを知りませんので無責任なことはいえません。
でも、少しでもそんなお子さんの思いを想像することができたら、対応は全く別のものであったはずなのではないかと思うのです。
ましてや、このお子さんは、3年生になった4月に転入してきたとのこと。
転入の経緯も私にはわかりません。
でも、それが何であっても、すでに2年間の学校生活で形成されている人間関係の中に、外から1年間だけ入る心細さ、難しさなどを想像すれば、慎重にお子さんの状況を見守り、言葉かけをしていくことが求められていたのではないかと思えてなりません。
2つ目は、調査報告書の公表について。
すでに行われた調査の結果、お子さんに対するいじめ行為が認定されているとのこと。
その調査報告書が公表されていない理由について、市教育委員会は、「公表によってほかの生徒の心理面への影響があり、同級生はすでに卒業しているため、心のケアを行うことが難しい」と説明したと報じられています。
文科省のホームページで公表されている「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」では、調査報告書の公表について、「事案の内容や重大性、被害児童生徒・保護者の意向、公表した場合の児童生徒への影響等を総合的に勘案して、適切に判断することとし、特段の支障がなければ公表することが望ましい」とされています。
調査報告書が本来公表されるべきとされている趣旨は、自治体、学校、社会全体が起きた事実を認識し、二度と同じようないたましい事件が起きることを何としてでも防ぐことにあるのではないかと思います。
そう考えたとき、今回、どのような事情が勘案されたのかは報道限りでしかわかりませんが、保護者のかたのご意向次第では、公表されるという判断もあるべきだったのではないかと思います。
いったい何があったのか、事後的に検証することはもちろん必須です。
でも、当たり前のことではありますが、事後的検証では、その、まさに被害に遭ったお子さんの失われた命は戻ってこないんです。
だから、子どもたちからの小さなサインを、助けを求める叫びとして聴き取ろうとする姿勢がなくてはならないし、いたましい事件が起きてしまったとしたら、もう二度とそのようなことが起きないために、学校、社会が、その調査から得るべきことを徹底的に得なくてはいけない。
お子さんが学校で苦しい思いをしているのではないか、そんなご不安がありましたら、いつでも弁護士にご相談ください。
お子さんのために何ができるか一緒に考えていきたいと思います。
初回相談60分無料※ ※ ご相談の内容によっては、有料となる場合もございます
-
電話でご相談予約
-
メールでご相談予約
平日:10:00~最終受付18:00 /
土日祝:10:00~最終受付17:00
