リーガルエッセイ
公開 2025.10.20

リモコン投げつけ逮捕について

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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物を投げつける行為について

先日、内縁関係にある女性に対し、リモコンを投げつけたため逮捕されたというニュースが報じられました。
男性が、女性と口論になった末、リモコンを投げつけたことについて、その場にいた家族が警察に通報し、駆けつけた警察官により暴行罪の被疑事実で逮捕に至ったとのこと。
事実関係は、捜査の過程で明らかになると思いますので、今回は、少しこの報道を離れてお話ししてみたいと思います。

この報道に関し、いくつかのコメントが寄せられていました。
コメントの中には、「リモコンを投げつけただけで逮捕?」というもの、「昔は、家族内での話として収まっていたよね」というものも見受けられました。
そういう感覚もあるのかもしれませんね。
そもそも、前提として、他人を殴ったり蹴ったりしたわけでもないのに暴行罪になり得るのだ、という感覚自体があまりないかもしれません。
でも、他人に向けて物を投げる行為は、その物がたとえ他人に当たらなくても暴行罪に該当する可能性があります。
物を投げるという行為は、人に向けられたとき、とても危険だと思いませんか?
その物の重さ、形、大きさや、物が当たる部位、投げられた際のスピード等事情によっては命のかかわるようなおおけがにつながることも。
殴ったり蹴ったりという行為以上に、コントロールが難しい側面もあり、直接他人の体に当てようとまで考えていなかったとしても、ちょっとコントロールがくるって当たってしまい、結果けがを負わせてしまうということもあり得ます。
そして、物を投げられた側に立って想像してみても、深刻な被害が考えられます。
私も、これまで生きてきて、悲しいことに、物を投げられたことも、その物が思い切り体に当たったということも経験したことがあります。
大きなけがにはつながりませんでした。
でも、壁に当たって、その物が砕けたときに感じた悲しさや、その大きな音や、「物を投げられた」という屈辱感は、体に当たったことにより痛みを上回る感情を心に刻み、それは「2年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」という法定刑では測りきれないように感じてしまいます。
もっとも、一般的に、他人に対して物を投げつけるといっても、濃淡いろいろで、それに対する刑事責任ということを考えたとき、必ずしもその責任追及に向けて捜査が進むとも限らないとは思います。
投げつけた物の大きさ、形、重さ、投げつけたスピード、投げつけた経緯、他人に当たったか否か、当たらなかったとしても当たってもおかしくない状況だったかなどの要素が判断材料となってくると思うし、何よりも、日常的にあった暴力的言動の一環としてなされたことかどうかという点は重視されるのではないかと思います。

そういえば、そんな話を知人にしたとき、知人が「家で家族に対して物を投げたとしたら、『そんなことよくあるよな』と思うのに、もし、これを職場で同じことやったとしたら、大騒ぎになるっていう感覚があるな。でも、その感覚ってちょっとおかしい気がする」と言っていました。
私も同じ感覚。
家族に対してだったら、感情を爆発させて多少暴力的な言動に出てしまったとしても許されるんじゃないかという甘え、勝手に家族間で関係性に優劣のようなものをつけ、相手は自分の言うことに従うべき存在であるかのように思い込む感覚もひそんでいるように思えてしまうからかもしれません。

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