リーガルエッセイ
公開 2025.10.30

ネットのいじめについて

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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ネットいじめ

先日、ある中学校で、生徒たちがSNSでグループを作り、そのグループ内での通話中に、ある生徒に対し、衣服を脱ぐよう強要して、その様子を撮影した画像を拡散したという行為がいじめにあたるとし、被害に遭った生徒とその両親が、加害生徒らに対して慰謝料請求をしていた訴訟で和解が成立したと報じられました。
和解が成立したとのことで、しかも、双方の代理人弁護士からのコメントもないため、そのような事案について、事情を知らない立場でコメントすることは望ましくないと思っています。
ですので、この事案を離れて一般論として、SNSグループでのやりとりといじめについてお話してみたいと思います。

SNSグループについては、学校としても、保護者の立場としても、いじめが起きやすい場として注意深く見守る必要があるのだろうと思っています。
相手と直接向き合っていないという状況は、子どもたちのやりとりにいろいろな影響を及ぼし得ると思います。

加害側の立場で考えた場合、次のような影響が考えられそうです。
目の前にいたとしたら言うことがはばかられるようなきつい言葉を投げつけることができる。
たとえば、ある瞬間、抑えられないほどのイライラした気分に支配されていたとして、通常であれば、一晩寝て翌日になってみたらその気分が若干落ち着くということもあるかもしれないが、イライラした気持ちがピークに達したそのタイミングですぐに気分に任せてメッセージを送信することができる。
保護者、教員など周囲の目が届かない、空気感がわかっている子どもたち同士の間でのみ共有されるという安心感のもとで言葉を投げつけることができる。
万一後でその言葉を投げつけたことを後悔したとしたら、その言葉を削除すればOK。

被害を受ける側の立場で考えた場合、次のような影響が考えられそうです。
メッセージが送られてきた背景を想像するにあたって、その言葉を発する側の語気の強さ、言葉に込められた意味などをよりネガティブに捉える可能性がある。
同じグループのメンバーとなっている子どもたちがそのメッセージに無反応だったとして、その無反応は、「同調」だろうと想像する。
何度も何度もその画面を見返すことで、より深くその言葉が刻み込まれ、追い込まれる。

少し想像しただけでも、対面でのやりとりとは異なる要素がたくさんありそうです。
特に、入学してすぐ、とか、学年が変わって新たなクラス編成がされてすぐ、とかいうタイミングでSNSグループが作られた場合、そのグループでのやりとりにうまくついていかないと、これからの学校生活で仲間外れにされてしまうのではないか、という恐怖心なども生まれ、グループで「~しよう」などという方向性が示されていることに反する発言をしたり、あるトピックとの関係ではグループでのやりとりとちょっと距離を置いたりといった行動を選択する勇気が出ないということもありそうです。
同調圧力。
グループのみんなの意向に逆らえない。
「おかしいな」と思っても、その本音を出せないままなんとなく流されていく。
そんなSNSグループ上での空気感が、いじめをエスカレートさせてしまう側面がありそうだなと思います。

先日、子どもが、お友だちに送るメッセージに悩んでいるようでした。
何に悩んでいるのか聞いたところ、Aさんあてのメッセージに、話の流れ上、Bさんという名前を出さないとうまく状況が伝わらないという状況下で、Aさんあてのメッセージに「Bさん」という名前を出してよいのかという悩みだとのことでした。
私は、一瞬、どこにその問題意識があるのかわかりませんでした。
そして、よくよく聞いたところ、子どもとAさんとのメッセージのやりとりには、Bさんは不在である、不在であるBさんについて、何の悪口でも噂話でもないものの「Bさん」という名前を出すことは、後々、何かの拍子にトラブルに発展しないかということを悩んでいるようでした。
子どもは、だれかと話すときに、それがもちろん別のだれかの悪口や噂話ではないとしても、その場にいない別のだれかの名前を出すことは良しとしないということを信条としているとのことでした。
その別のだれかは、あとで、何かの拍子に、自分の名前がどこかの会話に登場したことを知ったとき、「悪口言われたのかな?」と不安になってしまう可能性があると危惧してのものらしい。
なるほど、そういう考え方もあるのか。
悪口という意図はなくても、平気でその場に不在の人の名前を出してしまう私としては、ちょっと取り入れてみたい発想だなと思いました。

SNS上のいじめについては、小中学校においても、いじめ予防授業として取り上げられることが多いテーマではないかと思います。
子どもたちが、意図せず加害者とならないために、また、万一SNS上のやりとりを通じて不安を感じたときに、早めに対処を検討できるように、保護者としても、日常の会話の中でSNSをめぐり生じ得るトラブルについて話をしていくことも大切なのかなと思っています。

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