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「しつけのため」
先日、同じ日に、ある2つの逮捕報道を見ました。
いずれも、親が、子どもに対し、手をあげたというもの。
1件目は、母が、子どもの頬を平手打ちしたり、首を引っかいたりして子どもにけがを負わせたとの被疑事実で逮捕されたというもの。
2件目は、父が、子どもたちの背中を複数回革製ベルトでたたいたという被疑事実で逮捕されたというもの。
1件目については、そもそも、母が、一部行為について否定しているとのことで、経緯についても詳しく報じられていません。
2件目については、父が、「しつけの一環でやっただけ」と供述していると報じられています。
まだ捜査は始まったばかりと思われ、事実関係がわからないので、少しこれらの件と離れ、子どものしつけと体罰についてとりあげてみたいと思います。
最近はアニメなど観る機会がなくなりましたが、幼いころ、私が観ていたアニメでは、それはそれはとてつもなく平和な物語でしたが、げんこつで頭を殴るという場面が当たり前のように描かれていたと記憶しています。
「こらー」という怒鳴り声とともに、頭をげんこつで殴り、子どもが「わー」と泣く。
そして、その頭には、突如大きなこぶが現れる。
そんな場面は、いったいその子どもは何をしでかして怒られたという経緯だったのか思い出すこともできないほどナチュラルに描かれていたように記憶しています。
それこそ、宿題をしなかったのにしたと嘘をついたとか、テストで0点をとったとかそんなレベルじゃなかったかな。
今でも、たまに、なにかの拍子にそんな映像と出くわすことがあります。
子どもとそんな映像を見ていると、ふたりでぎょっとしてしまう。
子どもが「うわ、こりゃ傷害で逮捕だね」などと言うのです。
私自身は、昔同じような場面と見ていてもそんなこと思いもしなかったから、ずいぶん、子どもと私の子ども時代の感覚とは違っているなと感じます。
もしかしたら、そのような「親が子どもをたたく、殴るのはしつけとして違和感なし」という感覚をもつかたもいるのかもしれない。
でも、それは大きな大きな間違いです。
道徳とか「こうあるべき」という価値観とかそういうレベルの話ではありません。
民法では、「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」「(監護、教育にあたっては)子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない」と明記されています。
以前の民法では、親権者が、監護、教育に必要な範囲で子を懲戒することができると定められていたのですが、この懲戒権というものが、しつけという名目で虐待することを正当化する口実として利用されているという実態があることに鑑みて、懲戒権の規定が削除されるのみならず、体罰について明確にNGという記載がされたのです。
「児童虐待の防止等に関する法律」でも、親権者が、体罰などをしてはいけないことに加え、親権者であることを理由として、子どもに対する虐待行為に関し、暴行罪や傷害罪その他の犯罪への該当性を免れることがないことが明記されています。
暴力は依存性が高いと思うのです。
子どもが暴力により、痛みを恐れておとなしくなったなどという体験は、さらなる暴力行為へとエスカレートする可能性があります。
子どもも暴力をふるわれることに対し感覚がまひしてしまうことも。
その感覚は、暴力行為というもの自体を、「人に言うことをきかせるための手段」としての認識につながってしまうかもしれません。
あまりにも悲しく恐ろしいことです。
子どもに対する暴力が許されるはずがない。
それがしつけという名目であったとしても、絶対に許されるはずがない。
ただ、それをただただ訴え、一線を超えた親に刑事責任を負わせ続けることが子どもの幸せにつながるとも思えない。
いろいろなケースがあるので、すべてを一括りにすることができないことは大前提ですが、もし、「手を出しては絶対にいけない」とわかっているのに、どうしてもその手を抑えられないといった状況があるのであれば、その状況を踏まえて周囲ができることがあるはず。
家庭内で抑え込まずに、「親なのに、こんなことを考えているなんて」などと自分を責めずに、何がそこまで事態を追い込んでいるのか周囲に助けを求めて一緒に立ち向かう必要があるのだろうと思います。
私自身、自分がしんどいときに、いくつもの相談機関に電話をし続け、相談機関に相談に行き続け、何度も何度も「結局、だれも私の今の大変さにまっすぐに届くようなサポートをしてくれない。結局私は一人で何とかするしかない」と何十回とくじけそうになりながら、諦めずに何十回という相談をし続ける過程で、本当に事態をわかってもらい、当時の自分に必要なサポートや言葉を届けてくれるかたがたと出会ったという経験があります。
弁護士としてできることは限られているのかもしれませんが、私も、日々の仕事を通じて、いろいろな状況下にある子どもたちの笑顔に貢献できるよう努めていきたいと思います。
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