リーガルエッセイ
公開 2025.11.14

営業秘密持ち出し事件

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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営業秘密持ち出し事件

先日、A社の代表取締役とその会社の社員数名が、不正競争防止法違反の嫌疑で逮捕されたと報じられました。
社員のうち1名は、情報を持ち出されたというB社の元社員であるとのこと。
被疑事実については、その元社員が、B社退職前に、顧客情報が映し出されたPC画面を私用スマートフォンで撮影して、A社の社員らに送信したことである旨報じられています。
被疑者らの認否も含め、事実がわからないので、今の時点で、具体的なコメントをすることはできません。
この事件を少し離れ、営業秘密の持ち出しについて、何度かにわけて、いくつかの観点から取り上げてみたいと思います。

今回は、法人に対する処罰について。
報道によれば、この件で、A社という会社自体も書類送検されているとのこと。
刑を科されるべき対象は、通常、人であることが前提とされています。
でも、特別の規定がある場合には、人である行為者を処罰するだけでなく、法人自体も処罰の対象となります。
この特別の規定のことを両罰規定といいます。
背景には、行為者の違反行為によってその行為者が属する法人が利益を得るのだから、法人をも処罰すべきという考え方があるのだと思います。
営業秘密の持ち出しについてもこの両罰規定があります。
そして、法人が処罰の対象になるとはいっても、法人というものを拘禁することはできないため、処罰は罰金刑ということになります。
法定刑は5億円以下の罰金。
行為者に関しては、10年以下の拘禁刑もしくは2000万円以下の罰金ですから、行為者に対する罰金額よりもかなり高い金額が定められています。
少し前に報じられたカッパ・クリエイト社の不正競争防止法違反の刑事裁判では、同社に対し、罰金3000万円の判決が下されたとのことです。

なお、少し話がそれるのですが、法人の従業員らが何らかの違反行為に及んだとき、両罰規定さえあれば法人が無条件で刑事責任を負うかというと、それは違います。
これに関しては、昔の裁判例で、事業主が人である場合の両罰規定については、その代理人などの違反行為に関し、事業主に、行為者らの選任、監督その他の違反行為を防止するために必要な注意を尽くさなかった過失の存在を推定したもので、事業主において、注意を尽くしたとの証明がされない限り事業主も刑事責任を免れないとしつつ、これは、事業主が法人である場合も同じだと述べているものがあります。
つまり、法人が、従業員が業務に関して違法行為に及ぶことがないように、規程を整備したり、研修を実施したり、何かあった場合の通報制度の運用に努めていたりするなど、監督を尽くしていたことの証明がなされれば、処罰を免れる可能性があるということです。

従業員による不正を予防するために何をするかということは、それぞれの会社によって、抱えるリスクが異なるため、オーダーメイドで手当てする必要があると思います。
ぜひ一度弁護士にお気軽にご相談ください。

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