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部活動といじめ
先日、ある高校が、サッカー部で起きたいじめ事案が、一部の生徒だけにかぎられたものではなく、サッカー部全体、顧問団、正当の人権意識が不十分なために「構造的いじめ」を生じさせたとし、その実態に鑑みれば、このままでは今後も同様の事案が発生し得ると判断し、いったんサッカー部の対外活動を停止する旨の発表をしたと報じられました。
それに伴い、予定されていた全国大会への出場も辞退することになったとのこと。
学校が公表した文書によると、部内規律の名のもとに、遅刻や無断欠席などの部内ルール違反や練習時のノルマ不達成に対して連帯責任での罰則が慣例化する中、その罰則回避のために、一時期の資質や能力によって生徒間の上下関係が固定化し、特定の生徒が阻害され、いじりや過剰な注意などにつながったことが確認されたなどと記載されています。
報道限りでは詳しい事実関係がわかりませんが、部活動を通じたいじめについては、学級で起きるいじめとはまた少し違った特徴があると思われ、異なった観点からの注意が必要になりそうです。
平成26年、文科省から「運動部活動での指導のガイドライン」が公表されました。
ライドラインは、「運動部活動は、複数の学年の生徒が参加すること、同一学年でも異なる学級の生徒が参加すること、生徒の参加する目的や技能等が様々であること等の特色をもち、学級担任としての学級運営とは異なる指導が求められます。」とした上、「指導者は、生徒のリーダー的な資質能力の育成とともに、協調性、責任感の涵養等の望ましい人間関係や人権感覚の育成、生徒への目配り等により、上級生による暴力行為やいじめ等の発生の防止を含めた適切な集団づくりに留意することが必要」と説明しています。
また、生徒に関しても、「個々の生徒が、技能や記録等に関する自分の目標や課題、運動部活動内での自分の役割や仲間との関係づくり等について自ら設定、理解して、その達成、解決に向けて必要な内容や方法を考えたり、調べたりして、実践につなげる、また、生徒同士で、部活動の方向性や各自の取り組み姿勢、試合での作戦や練習にかかる事柄等について、筋道立てて話し合う活動などにより目標達成や課題解決に向けて必要な取り組みを考え、実践につなげるというような生徒が主体的に自立して取り組む力を、指導者は、指導を通して発達の段階に応じて育成することが重要」と記載しています。
ここに書いてあることはいずれももっともなことと理解できます。
特に異論を唱えるつもりもないのです。
ただ、実態を考えたとき、このような顧問の教員や生徒に期待されていることを重視し過ぎた場合、学校としては、「部活の自主性、指導者である顧問の自主性に委ねています」ということになり、顧問としては、「部活動内では生徒の自主性を重要視しています。生徒たち相互の関係性のもとで問題を解決できるよう生徒たちの自主性に委ねます」ということになり、結局、生徒たちの間で起きるいじめの問題に切り込む目がなくなってしまい、発見や対応が遅れてしまう可能性があるのではないかと思えてしまう。
保護者の方も、部活動内でのことについては、その閉鎖的なイメージや、集団でひとつの大会に向けて取り組んでいるという実態などから、あまり口出ししてはいけないのではないか、学校、部活動の顧問に委ねるべきなのではないかという思いが働くことは多いのではないかと思うのです。
そうなったとき、学級でのいじめ以上に、そのいじめが深刻化することも起き得るのではないかと思います。
このたび報じられた学校では、問題となったサッカー部のみならず、高校の経営母体である学園が設置する中学校や他の高校の全部活動の生徒に対して調査を開始したとのこと。
いじめが発覚したときに、当該いじめ事案の調査、対応のみならず、「他にも同種事案が発生しているのではないか」という視点で調査範囲を広く設定することというのは非常に重要なことだと考えます。
高校は、12月末にかけて、この構造的いじめの根本にあった「人権意識の不十分さ」への対策として、顧問団に対して人権意識の適切な理解を深める研修を実施し、またその顧問団が生徒一人一人と丁寧な二者面談を通じて人権指導をするとのこと。
とても大事なことだと思います。
ただ、人権意識って、言葉で言うのは簡単ですが、それを育てていくことは、1回きりの研修や面談で培うことができるものであるはずがないのです。
人権というのは、人が、生まれながらにして当たり前のこととしてもっている、一人の人として尊重され、大事に扱われる権利のこと。
自分がそういう大事な存在であると同時に、自分の周りにいるだれもが同じように大事な存在であるということ。
これは、幼少期から時間をかけて学び、また、人とのかかわりを通じて少しずつ育てていくものだと思います。
果たして、この緊急事態に、具体的にどのような方法で研修や面談が行われるのか、そして、行った後、その検証をする中で、どのような変化が見られたのか、そのようなことが丁寧に積み重ねられていく必要があるのだろうなと思います。
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