リーガルエッセイ
公開 2025.11.19

正座での児童指導について

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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正座と体罰

先日、ある小学校で非常勤講師が、授業中に話をしたという児童5人を、椅子の上や床に正座させ、うち2人が怪我をしたという事案があったと報じられました。
これにより足の皮がめくれる怪我をしたという児童の保護者は、警察に被害届を提出したとも報じられています。

この報道は、SNSでも広く拡散され、さまざまな意見が出ていたようでした。
意見の中には、報じられていない具体的事情について憶測しながらその是非をコメントするものもありました。
私は、事実関係が正確にわからない以上、この件に関する具体的なコメントは難しいのかなと思っています。

ただ、1つだけいえるとしたら、「正座は別に何も問題ないよね」という考え方は正しくないということ。
学校教育法では、教育上必要があると認めるときに児童らに懲戒を加えることができると定めていますが、同時に「体罰を加えることはできない」としています。
懲戒として許される行為であるか否かに関しては、文部科学省の公表している「学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例」に例が挙げられていますが、その中に、「宿題を忘れた児童に対して、教室の後方で正座で授業を受けるよう言い、児童が苦痛を訴えたが、そのままの姿勢を保持させた。」という例について、「被罰者に肉体的苦痛を与えるようなもの」として体罰にあたると記載されています。
これだけを読むと、もしかすると、「限られた時間内に正座をさせ、その間生徒が苦痛を訴えなければ問題ないのかな」などという捉え方をするかたもいるのかもしれません。
この点について、厚労省が公表する「体罰等によらない子育てのために」には、親の子どもに対する体罰に当たり得る行為として、「大切なものにいたずらをしたので、長時間正座させた」という例が挙げられていることもあわせて考えると、やはり長時間の正座が体罰に当たり得るのであり、その時間次第では、体罰ではなくしつけや教育の範囲内といえるのではないかとの捉え方をするかたもいるのかもしれないなと思うのです。
ただ、個人的には、そのように思いません。

つまり、これら体罰として挙げられているものの本質は、「子どものした行為の罰として、子どもが不快、苦痛を感じることを強いる」ということにあると思うからです。
その不快や苦痛を通じて、子どもに、「自分はやってはいけないことをしたから、もうやらないようにしよう」と思わせること。
それ自体が教育やしつけの在り方としてNGであると突き付けているのだと理解しています。
実際、文科省が許される懲戒として列挙している有形力の行使は、いずれも児童ら本人やその周囲に差し迫った危険を緊急で防ぐために体を制止したり場所を移すために移動させる行為など。
罰として与える有形力の行使ではないのです。
言うまでもなく、「不快だから、苦痛だからやめておこう」というのは、子どもが本当の意味で自分のしたことがなぜいけないのかを理解したとはいえず。
また、しつけや教育をする側においても、「不快や苦痛を与えることで手っ取り早くいけない行動を是正できる」という成功体験は、エスカレートしてしまうことも。
そのようなことを考えると、やはり、形式的に、「どこまでの罰ならしつけ、教育としてセーフなのか」という発想自体を考える必要があるのだと思います。

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