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はさみを持ち歩くことは銃刀法違反か
先日、翌日にあるアートイベントへの出席を控えた子どもが、その準備をしていたときのこと。
深刻そうな顔で「ママ、ちょっと相談があるんだけど」というのです。
何事かと構えると、「明日、イベントで、はさみが必要になる場面がありそうなの。だから、念のため、はさみをもっていきたいなと思うわけ。でも、はさみを持ち歩いたら銃刀法違反になるんじゃないかと思って。だとしたら、その危険があるのにもっていけないじゃない?」とのこと。
私「ほー、なるほど。あなたが小学生のころ、お道具箱にはさみ入っていたじゃない?あれって、あなたがおうちから学校に持って行ったのよね?あれはいかに?あれって、実は犯罪だったのかね?」
子「まあ、小学生は明らかに危険性ないじゃない?工作で使うんだなみたいなのが明らかじゃない?でも、高校生がはさみをもってるとなると、ちょっと意味変わってこない?」
私「お、そういうことか。でも、それって、はさみをもっている主体が小学生か高校生かっていう話なのかね?小学生は危険じゃない、高校生だと危険っていうのは、分類としてちょっと雑なような気もするけど、いかに?」
子「たしかに。じゃあ、なんでそれをもっているか、っていう動機的なところで犯罪かどうかが決まるとか?」
私「いい線!とはいえ、動機的なところって、どうやって判断するの?外から、人の気持ちって必ずしも読めないじゃない?」
子「取調べで詰める感じかな。その日、何の用事ででかけていたかとか、他のお荷物は何をもっていたかとか?」
私「天才。それ以外で、犯罪かどうかが決まる要素があるとしたら、どんなものだろう?」
子「危ないはさみかどうかとか?お裁縫で使っているような大きなはさみだとだめだけど、小さいはさみならOKとかさ」
私「いいね、最高。長さは大事なのよ。ちなみに銃刀法ではね…」
という感じで、銃刀法の構成要件を私が得意げに読み上げ始めるころには、子の興味は失せ、私は自室にぽつんと取り残されるという結末。
結局、「こんなところでぎりぎりを攻めて、犯罪歴とか作りたくないから、切りにくいけど、刃の長さ2センチくらいの小さな携帯用はさみにしておくわ」と告げられました。
銃刀法では、「何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計った刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。」と定められています。
(実は、法律では、これに加えて、刃体の長さが8センチメートル以下のはさみなどについては、法令で定める種類、形状の要件を満たしていた場合、銃刀法違反にあたらないとされているのですが、この点は、ちょっと細かい話になるのでここでは省略してお話します。)
この「業務その他正当な理由」については、よく、調理師の方が職場に行くときに包丁をバッグに入れてもっていく場合というのが例として挙げられることがあります。
ここには、もちろん、学生が、授業などで使う必要性があってはさみをもっていくことも含まれるでしょうし、子どもが、工作イベントで使用するためにはさみをもっていく場合もこれにあたるといえるはず。
一方、護身用としてはさみなどを持ち歩くということは、この「正当な理由」があるとはいえないのです。
では、刃体の長さが銃刀法に定める長さに至っていなければはさみなどを持ち歩くことには何ら問題がないかというと、軽犯罪法との関係でも注意する必要があります。
軽犯罪法では、正当な理由なく、刃物など他人の生命を害したり、身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた場合、拘留又は科料に処すると定められ、取り締まりの対象となり得るのです。
身近なところにある道具なども、その所持態様などによって犯罪になり得る。
そして、それはなぜなのか?
私自身、銃刀法の内容はまくしたてることができるけれど、いざ、それを法の趣旨にさかのぼってわかりやすく説明しようとすると意外とちゃんと理解していなかったなということに気付かされたりします。
私の中ではすでに常識として固まってしまっていることについて、子どもからのピュアな質問を通じ、改めて考えてみることで、私自身もそこから学びを得られることがあるように思います。
これからも、ひとつひとつ丁寧にその疑問と向き合っていきたいなと思います。
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