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セクハラについて
先日、ある県知事が、職員から通報された自身のセクハラ行為を理由として辞職を表明したと報じられました。
現在調査委員による調査が進められているという状況にあるとのことで、事実関係は報道の限りでしかわかりませんが、知事が、複数の職員に対し、セクハラと思われるメッセージを送っていたこと、知事は、それを送った当時は「軽口やふざけた気持ち」があったと説明していることなどが報じられています。
この件については、また調査結果が公表された際に取り上げてみたいなと思いますので、少しこの件を離れてお話ししてみたいと思います。
お互い気心知れた関係にある仲間同士で、軽口やふざけた気持ちから、わいせつな内容にわたる言葉をかけたり、メッセージを送ったりすること、ありませんか?
もしかしたら、ちょっとどきっとする人もいるのではないかと思うのです。
それをやっている側からすると、
「たしかに、職務上は上下関係あるかもしれないけど、自分は、そういうの関係なく、だれともフラットに付き合っているから、上司が部下に対して押し付けるようなセクハラなんていう感じじゃないよ」
「相手も嫌そうな顔していなかったし、むしろ、笑っていたし」
「自分はずっと社内の上下関係とかなく、近い距離で仲間として付き合ってきたから大丈夫」
「むしろ、これをだめって言われたら、会話が固くなっちゃって、働きにくくなるでしょう」
そんな言い分が聞こえてきそう。
もしかしたら、そんなちょっとぎりぎりを攻めるような会話が許されてしまうような、そんな会話を楽しめてしまうような関係性というのもあるのかもしれません。
いや、実際ありますよね。
ただ、そこには、ちょっと気を付けたほうがよいと思う点があるような気がしています。
1つ目は、「自分と相手のフラットで気兼ねない関係性」を前提にしたらOK、というこの前提に対する認識において、相手の認識との間に齟齬があり、一方の勘違いであるパターンが非常に多いと思うという点。
その勘違いのさまは、はたから見ていると、この上なく痛々しくて、ださいこと極まりなし。
気付いていないのは本人だけ。
お相手は、調子を合わせておかないと目をつけられて仕事がしにくくなったり、不利益を被ったりするのではないかという思いから、表立っては仲良さそうにふるまっているけれども、実はできれば関わりたくないと思われているということも。
これ、私も、本当に気を付けなくてはいけないなと思っています。
他人のことについては、「うわ、痛々しい」「とんでもない勘違い!」と気付くけれど、自分のことについてはなかなか気付けない。
常にひきこもりがちで、人との関係性を広げたり深めたりする努力をしてこなかった私にとって、人との関係性構築は本当に大きな課題で、ときに、距離感やあるべき対応を見誤る危険が大いにあるなと常々警戒中。
ここを見誤ることで、「私たちってこういう関係だから」という前提が相手とずれているということが生じ、それによって、発する言葉が一方的なハラスメントになり得るということはよくあることだと思います。
2つ目は、当人たちはいいかもしれないけど…というパターンもあり得るという点。
不法行為に該当するかどうかという観点でいえば、必ずしもそうとはいえないことも多いと思うものの、「性的にぎりぎり攻めるような会話」って、ある当事者間でOKならOKという問題では必ずしもなくて、それを職場で聴かされている人たちにとって不快、嫌悪につながり、職場環境を悪化させるということも。
しかも、それは、何ら羨望のまなざしで見られるということは全くないにもかかわらず、「職場でこんなぎりぎりな会話も楽しめちゃう距離の近い仲良しな私たち」を周囲にアピールするかのように大声でやられちゃうと周囲は不快極まりなし。
セクハラに該当するかというところは、具体的な事実関係によって評価がわかれるところだと思いますが、職場環境ということを考えたとき、「当人同士さえよければ問題なし」というわけではないことも考える必要がありそうです。
いろいろな考え方があるのだと思うのですが、「いやいや、そんな軽口もNGになると、かえって職場での関係性を築きにくくなって仕事に支障すら生じるよ」という言い分に、私は
「はて?」と思ってしまう。
職場に限らないと思うのですが、相手が聴いてどのように感じるか必ずしもわからないし、周囲が聴いたときに不快と捉えられるかもしれないというような軽口やおふざけが、果たして人と関係を築き、深めていく中でどれほど大事なものになるのだろうか、と個人的には思ってしまうから。
私は、周囲を見渡したとき、自分の仲間と語りたいことが本当にあふれすぎていて、ふだん仕事をする中ではうかがいしれない相手のことを、対話を重ねていくことで少しずつ知れていけたらいいなと常々思っています。
そういう過程で、相手も自分も心地よいと思える距離感をはかってみたり、相手がどんな価値観を大事にしているかを感じ取ったりすることが関係を築く上で大事なのかなと。
もちろん、そうじゃないんだよ、という考え方もあると思うし、そんな大げさに考えるような人は面倒くさいという考え方もあると思うので、私の勝手な個人的な意見。
ただ、やはり思うのは、ハラスメントというものを考えるとき、「一方的であること」というのはキーワードになるのだろうなということ。
自分にとっては快適で、自分にとっては距離の近い関係性における楽しいわるふざけが、相手にとってはどう受け止められているか、周囲はどう感じるだろうかというような視点を想像する過程はやはりとても大切なものなのだろうと思います。
それは、ひとりで想像していてもやはり独りよがりになりがち。
だから、ときに、今回とりあげた報道事例等を材料として、いろいろな話をしてみる、ということも大事な気付きになるのではないかと思っています。
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