リーガルエッセイ
公開 2025.12.03

残土埋め立て事件について

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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残土埋め立て事件について

先日、千葉県で、違法な残土の埋め立てに関係する事件が相次いでいるという報道を目にしました。
この状況を踏まえ、自治体と警察署が連携を強め、県内では、市が所有する土地に無断で土砂を運び込んだとして、その被疑者が不動産侵奪罪の被疑事実で逮捕されたと報じられています。
「不動産侵奪罪」という罪名は、あまり聞き慣れないという方も多いのではないでしょうか。

不動産侵奪罪というのは、他人の不動産に関し、その不動産に対する他人の占有を排除し、自分や第三者の占有に移すことをいいます。
そして、その成立のためには、「不法領得の意思」が必要。
権利者を排除して、それが自分の物であるかのように扱って、その経済的価値に従って利用、処分しようとする意思が「不法領得の意思」。
単に、他人の建物の中に、ちょっとだけそこにいさせてもらってすぐに帰ろうと思っている場合とか、他人の土地に、一時的に、すぐに撤去できるように簡単なテントのようなものを作り上げた場合とかは、不法領得の意思を欠くので不動産侵奪罪が成立しない可能性が高くなります。

残土を、承諾ないままに他人の土地上に置いて行ってしまう行為が不動産侵奪罪にあたるかという点については、過去の裁判例でこれを認めたものがあります。
ある土地上に一定の利用権があるという人が、その土地上に、大量の廃棄物を堆積させたというケースで、その人には、その土地上に大量の廃棄物を置いていく権限はなく、認められていた利用権限を越えているということを前提として、その産業廃棄物の堆積の状態からして、容易に原状回復することができないようになっていたとされ、被告人が、所有者の占有を排除して自身の支配下に移したと認められたようです。
最近、千葉県内で発生しているという事案がこのようなものなのかは報道からは必ずしもわかりませんが、持ち込まれて放置されたり、埋め込まれたりする廃棄物の量、その目的、原状回復の難易などによって不動産侵奪罪が成立し得る行為であると思います。
さらに、その残土に、産業廃棄物にあたる廃棄物(事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類等)が混入していた場合には、廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反にもなり得ます。

土地の所有者の方のみならず、その周辺に住んでいらっしゃる方々にとっても不安につながる行為です。
引き続き、地域と警察の連携について注目していきたいと思います。

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