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水増し請求について
先日、SNSの運用業務代金を水増し請求し、現金をだましとったとして、トヨタグループの広告会社元社員が逮捕されたと報じられました。
報道によれば、その元社員は、他社から委託を受けたSNS運用業務に関し、下請け先に水増し請求をさせ、約2800万円をだましとったとの疑いがあるとのこと。
この件については、まだ捜査中で事実がわからないのですが、この種のいわゆる水増し請求事案は非常に多くあるところなので、今回は水増し請求について取り上げてお話ししてみたいと思います。
水増し請求って、ちょっとわかりにくいですよね。
B社が、A社から、ある工事をしてほしいとの依頼を受けたとします。
そして、B社は、自社でその工事をするのでなく、C社に下請けに出すのです。
A社がB社に依頼し、B社がC社に依頼するという構造が見えてきますね。
その工事、本来は100万円でできるのです。
だから、C社が、B社に対して払ってくださいというべき金額は、本来100万円となるはず。
でも、ここで悪だくみが入ります。
B社の従業員Xが、C社代表者Yに「工事に120万かかったことにして、120万で請求書をだしてくれないか?B社から120万円が振り込まれたら、上乗せした20万円を折半しよう」などと持ち掛けるわけです。
Yがこれに応じ、計画を遂行するとどうなるか。
XとYは、B社に対して嘘をついてお金をだましとったとして詐欺罪が成立するということになります。
共犯関係になるわけです。
検察官時代もこのような事件を起訴したことがありますし、弁護士として、会社からの依頼を受けて共犯関係にある両名を刑事告訴したということもあります。
報道を見ていても非常に多い印象。
どうしてこのような事件が多いのかなということを考えてみると、背景事情として2つ思い浮かぶことがあります。
1つ目が、外注、多重下請け構造の存在。
工程が多層になると、どこでだれが何をしたかということが見えにくくなるという傾向があるように思います。
2つ目が、仕事自体の見えにくさ。
今回報じられた案件のようなSNS運用のような業務だと、だれが何をしたかということが形として必ずしも見えにくくなり、請求された金額が実態と乖離しているのかどうかという点に気付きにくくなる傾向があるように思います。
そして、このような背景を見たとき、不正が起きやすくなるという傾向が見て取れる気がします。
不正は、「機会」と「動機」と「正当化」という要素がそろったとき起きやすくなると言われていますが、この多層構造や業務の見えにくさという要素がそろった場合、「機会」という要素が多いといえそう。
そのような中で、従業員の借金の存在、職場への不満などの事情がある場合、「動機」「正当化」要素も満たし、不正が起きやすい環境ができあがってしまっているというケースがあるように思います。
会社として、このような水増し請求を防ぐためには、このような「機会」をなくし、「動機」をもつ従業員を察知しモニタリングするとともに、「職場環境がこんなに悪いから、自分たちが多少のことをしても許されるはずなんだ」という「正当化」の要素を軽減していくことが必要なはず。
具体的には、外注時には、どの企業に、どの作業をいくらで発注したかを明らかにして、請求と紐づける、請求書が来た時点でのチェック、支払いのサイクルにおいてその担当を一人にせず、複数の目を入れること、成果物の実在性等につき、抜き打ち監査でチェックすること、内部通報制度の運用改善等、自社の弱いところを検証した上でひとつひとつ対策を講じていくことが必要になるのだと思います。
水増し請求は、発覚まで長期に渡ることが多く、その間に受ける損害は甚大になることが多いです。
刑事告訴を含む法的措置を早期にとることができるよう、このような不正が早期に発覚する仕組みづくりが必要。
それ以上に、起きてしまわないための体制整備が何より必要。
「これくらいどこもやっているだろう」と考えている従業員も少なくないと思われ、まずは、これが犯罪になるのだというところから社内教育を進める必要もあるでしょう。
研修づくりから、その他水増し請求等不正が起きやすい状態になっていないかのチェックなどお気軽に弁護士にお問合せください。
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