リーガルエッセイ
公開 2025.12.05

独身偽装について

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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独身偽装について

先日、交際していた男性には実は妻子がいたということを交際終了後に知ったという女性が、貞操権を侵害されたとして慰謝料等334万円の請求をした裁判で、裁判所が、貞操権侵害を認めた上で、男性に55万円の支払いを命じたと報じられました。
報道によれば、この女性は、婚活マッチングアプリで男性と出会ったとのこと。
女性は、交際終了後、男性の活動に関するウェブサイトに、幼い子の写真を発見。
説明を求めた際に妻子の存在が明らかになったとのことです。

何も事実関係を知らない立場で、あれこれ軽率なコメントはできないので、完全にこの件を離れた上で、一般的な独身偽装についてお話をしてみたいと思います。

独身偽装については、いろいろな観点からお話ししたいことがあります。
でも、ひとつここでとりあげたいなと思ったのは、よく聞く「相手が独身かどうかって、一定期間やりとりしていてもわからないものかね?」という意見について。
これについては、いろいろな考え方があると思いますが、いろいろな背景があってとても難しいケースもあるのではないかなと思っています。
実際、独身を装って長年交際した果てに既婚者であることが発覚してトラブルになるというケース、多いです。
特に、昔と比べて出会いの場が広がり、SNSやマッチングアプリを通じての出会いの機会が増えてくることに伴って、やはりこのようなトラブルも多くなっていると思います。
職場、学生時代の同窓生など、一定の時間、リアルなコミュニティで交流があり、互いのことを知り得る関係性にある場合は、自然と、配偶者の有無を含む家族関係を知る機会ってあるように思いますし、そういったコミュニティで信義に反するようなことをしてしまうことで、コミュニティに属する仲間たちからの信頼を一気に失うリスクも考えると、そう変なこともできないという暗黙のルールのようなものがあるように思うのです。
一方、SNSやマッチングアプリを通じて知り合った場合、いろいろやり取りを重ねてはいても、実は相手のことをあまりよく知らないという場合ってありそうですよね。
共通の知り合いがいるという環境でないとか、いざとなったらブロック等の手段で関係を遮断してしまえば実生活の上でも存在しないものとなってしまうかのような環境であるとか、そういった捉え方があるがゆえに、その関係性にうそが入り込む余地が大きくなっているように感じます。
もちろん、こんなふうに、リアルな関係性は信頼できるが、SNSなどを通じた関係性は信頼できない、などと一括りにしてジャッジすることは非常に乱暴で、それは違うなと思っています。
リアルな関係性であっても、相手に対し雑なふるまいをしたり、うそをつくことだってあると思うし、SNSを通じた関係性であっても、誠意をもって正直な付き合いをすることだってある。
どっちがどうと決めつけることなんてできないのだけど、でも、一定の傾向というか特徴のようなものはあるように思います。
だから、常に、関係を築くにあたっては、相手を知ろうという姿勢がより一層必要になるのかなと思っています。
自分だったらどうかな、ということを考えたとき、私は、もしかしたら、お相手のことをすてきだなと思えば思うほど、ネガティブな面というか、自分が不安に思う面を見ないようにしてしまいそうな気がします。
「もしかして、ご結婚されているのでは…」ということが頭をかすめたときに、それを確認することが怖くて、あえて、お相手が結婚しているかもしれないという事実に結びつくような間接事実を見ないようにするというか、自分に都合のよい事情だけをもとに自分に都合のよい解釈をしようとしてしまいそう。
あと、交際しているときに、お相手と意見がぶつかりあって言い合いになることがとんでもなく苦手というかたもいらっしゃいませんか?
私は、これが本当に苦手。
親しくお付き合いしている人との間で険悪な雰囲気になることがいやでいやで、険悪になるくらいなら、自分の感情に蓋をしてしまおうという気持ちが働くのです。
ついつい、意見がぶつかりあわないように、自分の意見を無自覚にひっこめてしまいがち。
そういうかた、いらっしゃいませんか?
でも、それって、自分の不安に蓋をする行動であって、自分のことを大事にできているとはいえなさそうですよね。
同時に、相手への信頼も欠如しているような。
「本心を伝えれば、相手は気分を害するだろう」と、相手の器を低く見積もっていることになるんじゃないのかなとも思うのです。
それがリアルな場での出会いであっても、SNS等を通じた出会いであっても、相手を知るために少しずつ丁寧にやり取りを重ねる姿勢が何より大事なのだと思います。
その過程で何か疑問や不安が浮かび上がったら、その疑問や不安に蓋をせずに、ひとつひとつ確認すること。
確認にあたっては、思い込みや自分の「こうであってほしい」という思いをいったんおいて、周囲の信頼する人の意見を聴いたり、もう少し突っ込んでお相手に話をうかがったりすること。
そういう姿勢を大事にしたいなと思いますし、(もちろん、だまされる方が悪いなんていうつもりは一切ないという前提ではあるのですが)それによって、もしかしたら、トラブルになるケースを少しでも減らすことができるのではないかなと思うことがあります。

この裁判でも認められたという貞操権。
だれと性的関係をもつかを自己決定する権利。
これが侵害されたときに認められる慰謝料の額は、過去の裁判においても必ずしも高いものではありません。
最終的には、法的なトラブルとして訴訟での解決が図られるということになりますが、その解決はあくまでも金銭的なもの。
心に残る痛みがそう簡単に消えるものではないのだと思います。
出会いの機会の広がりに伴い、うそが入る余地も大きくなることで、その出会いを大切に、真剣に向き合おうとされている方が心の傷を負うなどということがありませんように。
お困りのことがありましたら、お気軽に弁護士にご相談ください。

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