リーガルエッセイ
公開 2026.02.16

落とし物なのか、窃盗なのか

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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落とし物なのか窃盗なのか

先日、こんな報道を目にしました。
ある飲食店で、Aさんが、水を取りにいくために、スマホを机の上に置いたまま1分ほど席を離れたところ、スマホがなくなっていることに気付いたとのこと。
そして、そのなくなっていたスマホは、1時間後に、交番に届けられており、無事Aさんはスマホを取り戻したというのです。
そのスマホを落とし物として交番に届け出たのがBさん。
Bさんは、その際、報労金を受け取りたいと申告。
遺失物法には、物の返還を受ける遺失者は、物件の価格の5%以上20%以下相当の報労金を拾得者に支払わなければならないとの条文があります。
Aさんは、Bさんに、報労金として5000円を支払ったとのこと。
でも、Aさんには、Bさんに見覚えがあった。
Aさんが、飲食店の防犯カメラ映像を確認してもらったところ、そこには、Bさんが、Aさんのスマホを手に取り、店外に持ち出す姿が記録されていたというのです。
Aさんの申告をきっかけに、Bさんは、窃盗罪と詐欺罪の罪により逮捕されたと報じられています。
(報道のみからは、防犯カメラ映像確認がいつの時点でなされたのか、読み取れず、実際の時系列とはやや異なる点があるかもしれません)
私は、この件を報道限りでしか把握しておらず、今後の捜査で事実関係が明らかになると思いますので、この件からは離れ、一般論でお話ししてみたいと思います。

この報道を見て、「善意で落とし物を届け出た人と、報労金目的の窃盗犯とをどのように区別するのか?もしかしたら、自分が、他人の落とし物を善意で届け出た際、窃盗犯と間違えられてしまわないか」と思われた方もいるかもしれません。

たしかに、ここの区別は、内心に関わるように思え、とても難しそうですよね。
その届けられた物が、他人の占有下にある物と評価できるのか、すでに他人の占有を離れた物と評価できるのかという問題になると思います。
そして、この点は、「社会一般の考え方からしたらどう考えるのが通常かな」という観点で考えることになります。
過去の裁判例で、被害者が、公園のベンチに、ポシェットを置き忘れてベンチから27メートルしか離れていない場所まで歩いて行ったところ、これを被告人が持ち去ったという事案で、被害者のポシェットに対する占有は失われていなかったとして窃盗罪を認めたものがあります。
逆に、スーパーの6階にあるベンチにお財布を置き忘れた被害者が、エスカレーターで2分20秒くらいかかる地下1階まで移動した10分後に6階に戻ったところ、これを被告人が持ち去ったという事案では、すでに被害者のお財布に対する占有は離れていたとして、それを持ち去った行為につき遺失物等横領罪の成立を認めたものがあります。

持ち主がその場を離れてどのくらいの時間が経っていたか、持ち主は、場所的にどの程度離れていたのか、持ち主がその場を離れた意図、物の置かれていた状況、そのような事実関係を総合考慮して評価していくことになるといえるでしょう。

もし、ご自身が、善意で落とし物を交番に届けたのに、思いがけず、窃盗犯と疑われてしまった、落とし物だと思っていたのだが、そのことを警察にきちんと説明できずに困っている、などということがありましたら、弁護士にご相談ください。

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