リーガルエッセイ

公開 2020.05.18 更新 2021.07.18

「オンラインハラスメント」に注意

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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「オンラインハラスメント」って?

最近、ある記事を読んでいたら、「オンラインハラスメント」という言葉を目にしました。
みなさん、この言葉、ご存じですか?

インターネットで調べてみたところ、何年か前の記事で、「オンラインハラスメント」はSNS上で知らない人からネット上で受けるいやがらせを想定して使われているものを見つけました。
その場合、ハラスメントへの対策としては、基本的にはネット上のことだし、実生活で接触がある人からのいやがらせとは少し異なるため無視することなどが挙げられているようでした。
でも、今回の記事を読むと、少し違った意味で取り上げられているようです。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴って増えたオンラインミーティングの場でハラスメントが生じているというのです。
オンラインミーティングでは、背景画の設定などをしない限り、家の様子も相手に見えてしまいますよね。
このような状況で、部屋の様子について侮辱的なことを言われたり、必要以上にオンラインの状態を継続するように強いられたりして不安な思いをしているという相談が専門機関に寄せられているそうです。

オンラインでのハラスメントにも注意

オンラインミーティングの場などで生じうるハラスメントをひとつひとつ考えてみると、結局は、通常職場で起きているハラスメントと何ら変わりはないことに気付きます。
今回は、ハラスメントの中でも、特にパワーハラスメントを取り上げてみたいと思います。

パワハラについては、来月、改正法である「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(ここでは「パワハラ防止法」と呼んで説明します。)がスタートします(中小事業主に関しては猶予期間があります)。

このパワハラ防止法は、パワハラというものを初めて法律で定義し、①優越的な関係を背景とした言動で②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより③労働者の就業環境が害されるものという3つの要件がすべてそろった行為をパワハラとしています。

厚生労働省では、ガイドラインで、パワハラの典型的な類型を6つ(①身体的な攻撃②精神的な攻撃③人間関係からの切り離し④過大な要求⑤過小な要求⑥個の侵害)挙げています。
オンライン上では、身体的な攻撃というものは起こりませんが、ほかの類型に関しては、たとえば、オンラインミーティング上で多くの出席者がいる中で執拗に叱責する、特定の人への嫌がらせとして会議に招待しない、特定の人に、必要がないにもかかわらずオンラインの状態を継続するよう強いるなどという形でパワハラが行われる可能性がありますよね。

この点、「パワハラというのは、『職場』で行われることを前提にしているから、リモートワークで自宅にいる場合はパワハラにはならないのではないか?」と思うかたもいらっしゃるのではないでしょうか?

でも、「職場」というのは、必ずしも、勤務先のオフィス自体を指すのでなく、労働者が業務を行う場所を指し、労働者が通常就業している場所以外であっても業務遂行場所については「職場」にあたります。
ですので、今、会社の方針や了承のもとでリモートワークをしているのであれば、もちろん、就業場所となっている自宅も「職場」にあたるのです。

そして、まだ多くの会社でリモートワークが浸透していない状況で、業務効率が落ちてしまっていたり、オンラインシステムの扱いに慣れていなかったりでストレスがたまっているかたがいるかもしれません。

そのように、これまでと違う状況、心理状態が、通常なら言わないような言動につながってしまう可能性もあります。
さらに、勤務先のオフィスよりも目が届きにくくなっているという面もパワハラを助長してしまうかもしれません。

パワハラ防止法では、パワハラの定義だけでなく、事業主に対し、パワハラを防止するための措置を義務付けました。
事業主は、自らがパワハラについての関心を理解を深めて言動に注意しなければならないことは当然として、さらに、労働者の就業環境が害されることのないよう、労働者からの相談に応じ、必要な体制を整備したりすることが義務付けられたのです。

私も、この機会にパワハラについて改めて勉強するとともに、オンライン上であっても、パワハラが起きる可能性があることを認識し、丁寧に慎重にコミュニケーションをとることを心がけていきたいと思います。

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