リーガルエッセイ
公開 2026.05.11

パワハラをめぐる問題

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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パワハラをめぐる問題

最近、たまたま2つのニュースを同時に目にしました。
1つは、ある県の職員が、部下に対し、「ニワトリと同じ」「ごみくずみたいな質問をするな」などと繰り返し侮辱して懲戒処分を受けたというもの。
もう1つは、ある市の職員が、上司の実名をSNSでさらし、「そのパワハラにより職員が自殺した」という虚偽の情報を投稿するなどして懲戒処分を受けたというもの。
いずれも、報道で把握した以上のことを把握しておらず、何が事実なのかということは私にはわからないので、あくまでも報道を前提として考えてみたいと思います。
この2つの報道は、一見まったく別の問題に見えます。
でも、私は、これらを並べて読んだとき、パワハラ問題の本質的な難しさが凝縮されているように感じました。

「ニワトリは3歩歩くと忘れる」と言われているものの、実は、訓練によって数字や文字を識別できるらしいという話を昔だれかから聞いたことがありますが、真偽はわかりません。
でも、ニワトリは、記憶力や注意力が散漫であると言われていて、人に対し「お前はニワトリみたいだ」と言えば、「お前は記憶力や注意力が散漫だ」と非難する言葉として使われているはず。
「ごみくずみたいな質問をするな」という言葉も、相手の質問は価値がないくだらないもので、そんな質問をする相手の人格を否定するような内容。
このような発言をすることは、「優越的な関係を背景とした、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」として、パワハラに該当するといえそうです。
しかも、当該職員は、何年か前にも、同様の行為で懲戒処分を受けていたとのこと。
「当時注意はしたが、その後の事案を防げなかった」ということを意味するともいえそうです。
一度の注意で終わらせず、行動の変容を促すような継続的な始動、フォローアップができていたのか。
そのようなことを組織として振り返る必要があるのかもしれません。
パワハラは、個人の問題である以上に、それを許す組織文化の問題であることも。
安全配慮義務の観点からも組織の在り方が問われる事案だと思います。

後者の市の事案はもう少し複雑といえるかも。
たしかに、当該職員がしたと報じられている行為は、上司の実名拡散、虚偽情報の流布、脅迫的文書の送付など、犯罪にも当たりうる行為として看過できないもの。
ただ、気になるのは、当該職員が「上司との関係悪化がエスカレートした」と供述しているという点。
報道だけからは、その背景がわからないため、軽率なコメントはできませんが、仮に、上司との関係悪化に何らかの要因があったとすると、もちろん、だからといって、犯罪行為等が正当化されることは絶対にないものの、その関係悪化を解消するための正当なルートが社内に存在し、機能していたのか、ということを検証する必要はあるのかもしれません。
この事案を離れ、一般論で考えたときも、社内で、だれかが問題行動に及んだというとき、それ自体に厳しく対応することは当然として、それだけでなく、その問題行動に出た人が、問題行動に出る前に、社内で、それを未然に止める手段が存在し、それは適切に機能し得る状態だったのかということは、再発を防止するという観点でも重要なことなのだと思います。

パワハラを含むハラスメントの問題は、単なる個人間の問題としてばかりでなく、組織全体で考えていくべき問題であると改めて感じています。

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