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「ちょっと持ち帰るだけ」が犯罪になる日
先日、勤務先の理美容チェーン店の備品約290点(総額約300万円相当)をフリマアプリで販売していたとして、男性が業務上横領の罪で逮捕されたと報じられました。
まだ捜査は始まったばかりで、報道だけからは何が事実なのか現時点でわからず、そのような状態での軽率なコメントは避けたいので、この報道を少し離れてお話ししてみたいと思います。
この報道を見たとき、「300万も売ってしまったらそりゃ問題だろう」と、自分とは全然関係のない問題として捉えたかたもいるのではないでしょうか。
たしかに、この報道では、「備品をフリマアプリで売った」という点が目を引きます。
でも、犯罪の入り口は、もっとずっと身近にあります。
事務作業をすることのある職場では、職場に、ボールペン、付箋、メモ帳などがまとまって収納されている場所があったりしませんか?
付箋などは、複数の色やサイズのものを手元に置いておいた方が便利なこともあり、いくつかそこから取り出して、自分のデスクの引き出しなどに入れて置いておくということもあるのではないかと思うのです。
それ自体は、まさに、仕事上必要な使い方だと思うので、何も問題はないはず。
でも、ある日、「そういえば、プライベートで付箋を使う機会ってあまりないから、わざわざ自分で付箋を買うことってないけど、家に付箋があったら、子どもが持ち帰ってきたプリントを整理するときに便利かも」なんてふと思い、職場の引き出しに入れてある職場にひとり残って仕事をしていたときのこと。プリントアウトした際に目に入ったコピー用紙。さっき補充したばかりだから、十分な量があるし、在庫だってたくさん。「そういえば、コピー用紙切れていたな」と思って、少しまとまった量、コピー機から抜き取って自宅に持ち帰ったとしたら?
それら会社の備品を、自分のものとして使う意図で会社から持ち出したら、それ自体が業務上横領罪や窃盗罪にあたる可能性があります。
(業務上横領罪か窃盗罪かは、その備品に関して業務上の管理権限があるかによるのですが、ここでは省きますね)
法律上、持ち帰ったものを売って初めて犯罪が成立するわけではないのです。
意図をもって自宅に持ち帰った時点で、犯罪が成立する可能性があるのです。
持ち帰ったものを、その後売ってお金にしたなどという事案と比べると、「許される範囲」だと思ってしまう人もいるのかも。
「ばれないでしょう」「たいした金額じゃないし」と思ってしまう人もいるのかもしれません。
たしかに、付箋をいくつか持ち帰ったことが職場にばれて、それを業務上横領罪だとして刑事告訴されるという事態は考えにくいですよね。
でも、その行為、本当にばれていないのだろうか?
周囲の人たちは、気付いているけど、目をつぶっているのかもしれない。
「いつか気付いてくれるかも」と思って今はまだ大事にしていないだけなのかもしれない。
そうだったとしても、会社のお金で買ったものを、平然と私物と混同させているその行為は、職業人としての信頼を少しずつ削いでいると思いませんか?
私は、それ自体は「小さい」といえるような会社の備品の持ち帰りについて、「犯罪だ。許されないことだ」という認識をもつことは、その金額の多寡や持ち帰った後の対応に関わらず、大事なこととして組織内で再確認すべきことだと思っています。
会社の備品を売って数百万円のお金を手にしていたという業務上横領事件。
その一番最初のきっかけは、もしかしたら、デスクの引き出しの中の付箋をプライベートで使おうと自宅に持ち帰ったことだったかもしれないし、コピー用紙を10枚くらい持ち帰って自宅プリンター用に使ったことだったかもしれない。
そんな「持ち帰り」をしているうちに心の中に生まれた「なんだかちょっと得した気分」。
それが、徐々に繰り返しているうちに、「職場に備品としてあるものをわざわざプライベート用にお金を出して買うと損したような気になる」という感覚になっていき、行動がエスカレートしていって、気付いたら、「持ち帰る」物が高額なものになり、転売してお金になるようなものになり、最終的には、すでに、弁償することすら不可能な額の備品を着服してしまっていたということもあるのかもしれない。
「備品を持ち帰るだけ」「備品を売ってしまう」の間には、一般の感覚では、大きなハードルがありそうです。
でも、法律に照らすと、「持ち帰るだけ」の時点ですでに犯罪は成立している可能性があります。
その後の売るという行為は、証拠を残し、被害額を明確にし、立件を容易にする最後の一押しに過ぎないともいえるのかも。
ボールペン1本、付箋1束、コピー用紙1枚。
「これくらい大丈夫」という感覚が、気付かぬうちに犯罪への扉を開いているかもしれません。
職場の備品は、あくまでも会社のもの。
その当たり前の原則を、今一度確認する必要があります。
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