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略式拒否と公訴棄却
先日、市議選前に支援者らと共謀して市内の住人らに菓子折りを寄付したとして公職選挙法違反に問われたという男性の刑事裁判が開かれたと報じられました。
報道によれば、被告人は、菓子折りの寄付自体は認めた上で、それが処罰されるべき違法行為か疑問であるとして公訴棄却を求めたとのこと。
弁護側は、「選挙人の買収などという見当違いな嫌疑に対する不当な見込み捜査」「公訴提起は公訴権の濫用」と主張しているなどとも報じられています。
この報道された内容を見たとき、「見当違いな嫌疑」だというなら、それは、無罪の主張ではないのか?と思われるかたもいるのではないかと思います。
「公訴棄却を求める」ってあまり聞かないですよね。
公訴棄却というのは、無罪主張とは全くの別物。
無罪主張というのは、「菓子折りを配ったのは事実だけど、それは犯罪ではない」という主張ですが、公訴棄却というのは、「そもそも、この起訴自体が無効、不当だから、裁判をやめろ」という主張。
公訴棄却というのは、有罪無罪を判断せず、裁判自体を打ち切るというもの。
つまり白黒つけないもの。
「この裁判は成り立たないよ」という形式的な判断。
どんなときに、公訴棄却が認められるかということは法律に書いてあります。
たとえば、被告人に対する裁判権がないとか、起訴の手続きが法律違反で無効であるとか、起訴状に罪となるべき事実がないとか、そんなときに、判決または決定で公訴棄却となるのです。
報じられた件で、被告人側が具体的にどの規定に基づき公訴棄却を主張しているかは明らかではありませんが、この起訴が検察の公訴権の裁量を逸脱しているため、起訴の手続きが法律違反で無効であるとの主張である可能性があるのかなと思われます。
さらに、この報道では、被告人は、略式拒否したために、その後起訴されたとの記載がありました。
この「略式拒否」という言葉も耳慣れないかもしれません。
略式手続というのは、検察官が、簡易裁判所に請求して、裁判官が書面のみで審理する手続き。
公開での法廷は開かれず、被告人の出廷ということもなく、ほぼ確実に罰金刑となる手続きです。
この略式手続がとられるためには、検察官からの説明を受け、被疑者が、書面で「略式手続で刑事責任が決まるということでよい」と同意することが必要になります。
ここで同意したら、自分が裁判官の前で言いたいことがあっても、公開の法廷で主張したり、証拠調べをしたりする機会がなくなることを意味します。
なので、自分が有罪になることについて納得していない場合は、検察官から略式手続の説明をされた際に、「私は、略式手続には応じない。正式裁判で争います」と答える必要があるのです。
報道された件では、被告人が、そのような対応をしたのだと思われ、それについて「略式拒否」と表現されています。
略式手続の意味については、同意するかどうかの意向を確認される際、検察官から詳しく説明されるのが通常ですが、「法廷が開かれず、簡単な手続き」などと説明を受けた際、一方で、そこで同意したら、自分は罰金刑に処せられることになり、罰金刑というのは前科であることに変わりはないことを十分に認識しないままに同意してしまうというケースも。
仮にいったん同意してしまい、裁判所が罰金の判断をしたとしても、実は、まだ、自分がしたとされる行為について争う道はあります。
裁判所から、「罰金〇〇円」という略式命令が出ると、それが書面で送られてくるのですが、
それに対して14日以内に「やっぱり正式な裁判で争いたい」と請求すれば、原則どおり、通常の裁判が開かれるということになります。
そもそも、略式手続ってなんなのか?
略式命令の罰金というのは、前科なのか?
いったん略式手続同意してしまったら、もう無罪を争う余地はないのか?
そのようなことについて、意外と知られていないかもしれません。
ご自身やご家族が納得のいかないままに略式手続となりそう、略式命令が出てしまったというときには、早めに弁護士に相談されることをおすすめします。
「公訴棄却」「略式拒否」など、ふだんの生活ではなかなか出てこない言葉だと思います。
このような言葉に関する知識が必要になる場面に巻き込まれることがないことはもちろん一番ではありますが、ちらっと頭の片隅に置いておくと、今後目にするニュースの見え方も少し違ってくるかもしれません。
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