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Netflixに浸って感じたこと
私は、ふだん、娯楽の時間をもつことを自ら禁じがちですが、夜、夕食を作っている間だけはNetflixを見てもよいこととしています。
おすすめとして出てくる動画をぽつぽつと見ているうちに、今さらという感じではありますが、俳優の綾野剛さんにドハマりし、綾野剛さんの出演作品をかたっぱしから見ています。
ただし、恋愛絡みの作品は除きます。
あくまでも、社会派というか、犯罪、捜査などを題材にするものに限ります。
自分が好きな俳優さんによる恋愛ドラマなど見た日には、気持ちが浮ついてしまい、仕事に隙が出かねない。そのような事態を防ぐため、見る作品の選別にはかなりの神経を遣っております。
そんな中で見てきたのは、地面師たち、アバランチ、日本で一番悪い奴ら、新聞記者、MIU404、愚か者の身分、でっちあげ。
これらを、日々、夕食を作りながら見てきました。
それらを一括りにして感想を述べることなどはできないのですが、人の弱さに関する描写がとてもリアルで、私はそこに惹きつけられているように思います。
とにかく、すべてが最高に最高におもしろかった。
これらのおかげで、夕食を作る時間が楽しみで仕方ないといった日々になりつつありました。
同時に、ふと思うこともありました。
それは、最近、少年たちによる凶悪事件の報道を目にしたときのこと。
「どうしてこんなにも残忍な行為に及ぶことができたのだろうか」と思ったとき、ふと、これらの犯行に、世に出回っている暴力シーンというものはどのような影響を及ぼしているのだろうかと思ったのです。
もちろん、これって、私が挙げたこの作品すべてに関わることではないし、逆に、挙げた作品以外の無数の作品にもいえることなのだと思っており、特定の作品についてどうこういう趣旨ではありません。
あくまでも、世の中にある作品の中の暴力シーンについて思うこと。
さすがに、ドラマや映画の中の世界の話を現実世界のこととごっちゃにすることはないよ、という声も聞こえてきそう。
私自身、検察官として被疑者の取調べをしてきたときにも、「あのドラマでこういうシーンがあったことに影響を受けてやってみました」などという話を聴いたことはありません。
でも、本当にそうなのだろうか。
明らかな模倣犯は別として、自分が生きてくる中で見聞きした情報は、本人は無自覚なままにその言動に影響を及ぼすことってあるはず。
たとえば、私は、小中学生のころ、当時流行っていた「りぼん」という漫画雑誌を読んでいて、そこに掲載されていた多くの恋愛漫画を読み込んできました。
そこに描かれていた恋愛を意識的になぞっていたつもりはないけれど、あのころ毎日ポニーテールにしていたのも、やんちゃな子にあこがれていたのも、今思うとものすごくはずかしいセリフを言ってみたりしたのも、無意識下で、読んでいた漫画の影響をかなりダイレクトに受けて、漫画の世界で起きていることが、私の生活の中でも実際に起きるもののように感じていたからなのだと思うのです。
もちろん、恋愛漫画の影響を受けることと、漫画や映像の暴力シーンの影響を受けることとは必ずしも同じレベルで比較できることではないかもしれないし、多くの視聴者は、暴力シーンをフィクションとして受け止めているのだとは思う。
でも、現実と地続きに見える描写は、ときに人に「こういう世界は実在する」「力とはこういうもの」という妙なリアリティを与え、暴力や違法行為を悪として描きながら、同時に魅力としても映してしまう危うさを秘めているのではないだろうか。
受け手が気付かないうちに、受け手の感覚を少しずつ変えていく力をもっているのではないだろうか。
だからと言って、こうしたリアルな暴力シーンを描く作品を否定するつもりはなくて。
実際、社会の暗部を真正面からリアルに描く作品群は支持されているし、私もそのような作品に惹きつけられる。
表向きは、コンプライアンスやクリーンさが重視される時代なのに、一方で、私自身も含め、人は、建前がはがれる瞬間を見たがっているのではないかなとも思う。
正義の人間より危うい人間。
きれいな制度よりその裏側。
そういうものに惹かれてしまう心情ってあるのではないかと思う。
そういったニーズに応えつつ、一方で残忍なシーンが若者に与える悪影響に配慮するためにはどうしたらよいのだろうか。
これまた私が大好きな作品の中に、犯罪に該当するシーンが映し出される都度、「このような行為は犯罪です」という注釈が表示されるものがあった気がする。
でも、根本的な解決法はそれじゃない気もするのです。
どんなシーンをも、当たり前のこととして、「これはフィクションだ」と受け止め、自分の世界と切り離せる思考とか、フィクションだとわかっていても、被害者の痛みを想像して見ていられなくなる感覚とか、そのリアリティを目の当たりにして、「絶対に現実の世界でこういうことがあってはならない」と改めて確認する感覚とか、そういったものが受け手の中でしっかり育てられている必要があるのだと思います。
まだ、それらのシーンを現実の世界としっかり区別して受け止めることができない可能性のある子どもたちには視聴できないようにする、というのももちろんひとつの対策で、だからこそ、〇歳以上、という年齢制限の指定もある。
ただ、言うまでもなく、抜け穴なんていくらでもあって、低年齢でも、見る手段はある以上、「見せないようにする」だけでは心もとない。
やはり、いざ見たときの受け止め方を育てる教育は何よりも大事なのだと思うのです。
これは、諸外国で進むSNS規制の動きについても思うところ。
親としても、また、子どもたちの法教育をする機会もある弁護士としても、いかにして子どもたちに伝えていくことができるか考えなければならない問題だと思っています。
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