リーガルエッセイ
公開 2026.05.22

スポーツと暴力

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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スポーツと暴力

まだまだNetflixに浸っています。
Netflix時間確保したいがために、これまで、夕食を作る間だけ視聴可能というルールでしたが、加えて、「洗濯物をたたんでいる時間及びコーヒーを入れるためのお湯を沸かしている時間もNetflix視聴可」というルールにしてみました。
このルール変更のおかげで、また新たなドラマを視聴することができました。
最近、ちょっと綾野剛さんにはまりすぎているのを自覚していたので、冷静になるために、綾野剛さんから少し距離を置くことを決意。
また、つい、犯罪や捜査絡みのものばかり見てしまう傾向があったので、全く興味のないもない分野に手をのばしてみようと決意。
そこで選んだのが、サンクチュアリという相撲界を描いたドラマでした。
相撲は、その試合をテレビですら見たことなく、もちろんルールも知らず、全くといってよいほど興味がなかったのです。
でも、話が進むごとに、すっかり夢中になってしまい、涙なしには見ていられない展開に。
特に最後なんて…
キッチンで一人号泣しながら、しばらくの間、ただただ拍手してしまいました。
相撲をよく知るかたがたにとっては、もしかしたら、設定等にいろいろ思うところがあるのかもしれませんが、何もしらない私としては、知らない世界を覗き見るワクワク感を純粋に味わうことができたし、そこに広がる人間ドラマがすばらしくて、涙が枯れるかと思いました。

そんな中でもやはり弁護士としてふと冷静になってしまう場面というものもあるのです。
描かれていたシーンの中には、同じ部屋の先輩が後輩に対し、いびりながら殴る場面などがあったり、2つの部屋の力士たちが、出稽古といって練習試合のようなものをするに際し、いじわるな力士が、相手の力士の股間を蹴る場面があったり。
でも、だれも、「あ、その行為は刑法208条に該当しますよね」と言ったり、「診断書を取得して、警察に傷害罪で被害届を提出しますね」と言ったりしないのです。
「しつけだから」「こういうスポーツだから」法的に許されるかのように描かれているように感じてしまい、勝手ながらハラハラしてしまいました。
たしかに、スポーツによる身体接触は、競技参加という形での黙示的同意が認められる場合がある。
また、被害者の同意が認められる場合以外にも、「法令または正当な業務による行為」にあたるとして刑法35条を根拠に違法性が阻却される場合も。
裁判例でも、競技規則に従い、競技目的の範囲内で加害意図なく行われた行為であれば、違法性が阻却されているようです。
でも、明らかに、相撲をとっている場面以外のところで、しつけのような感じでバシバシ殴ったり、稽古中に、わざと股間を蹴ったりすることは、違法性を阻却されることはなく、犯罪に該当すると考えます。
あ、あと、猿桜(えんおう)のお父さんが、猿桜のために送ってくれた差し入れの品々を、同じ部屋のいじわるな力士たちがぐちゃぐちゃにしてゴミ捨て場に捨ててしまって、福岡のラーメンを食べられない状態にしてしまったことは、器物損壊罪にも該当します。
そうそう、あの女性が、猿桜の数十万が入った財布を抜き取ったことももちろん窃盗罪に該当します。
そういえば、猿桜が、使えなくなったライターを、イラついて道端にたたきつけて捨てるシーンってなかったっけ?
記憶が定かでないのですが、仮にそのような行為に及んでいたとしたら、それは、廃棄物処理法違反になりうるし、さらに、ライターに関しては、特有の問題もありそう。
それを拾った子どもがカチカチ遊んでしまったら、子どものけがにもつながる。
ガスが残っていた場合、自治体のゴミ出しルールで、中身を使い切ってから捨てることが義務付けられているはず。
仮に猿桜が道端に捨てたライターにガスが残っていて、それが何かの拍子に何かに引火してしまったら、失火罪の成立も検討することになるのか?

などなど、つい、自分のフィールドに寄せて、かたっぱしから犯罪成立可能性を検討してしまうこともありつつ、やはり、最後の終わりかたは、私自身が、バシーンと張り手を食らったかのような衝撃と感銘を受けました。
あんな風に物語の扉が閉じられた意味をしばし考えさせられるような余韻の残る結末でした。

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