リーガルエッセイ
公開 2026.05.28

5年以上前の日に生まれている可能性について

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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5年以上前の日に生まれている可能性について

先日、ある新聞で、15歳の高校1年生の女子生徒に対し、自分より5年以上前に生まれている可能性を認識しながら性交したとして21歳の男性が不同意性交等罪の公訴事実で起訴された裁判について報じられました。
報道によると、争点は、被告人が、被害者について、自分より5年以上前の日に生まれている可能性があることについてどの程度認識していたかということであったとのこと。

この記事を見たとき、「5年以上前に生まれた」とことさらに書いてある意味がよくわからないと思ったかたもいるかもしれません。

刑法177条では、「16歳未満の者に対し、性交等をした者(当該16歳未満の者が13歳以上である場合については、その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者に限る。)」も、5年以上の有期拘禁刑に処するとされています。
ちょっとわかりにくいですよね。
刑法177条3項では、16歳未満の者に対して性交等した者を処罰します。
ただし、その相手が13歳以上16歳未満の場合には、行為者がその者より5年以上年長であるときに限ります。
つまり、この類型では、相手の同意があっても、年齢差が5年以上あれば不同意性交等罪が成立するという構造。
たとえば、被害者の誕生日が2008年1月1日であれば、行為者が2002年12月31日以前の生まれなら「5年以上前」にあたり、2003年1月1日以降の生まれなら「5年以上前」にはあたりません。

報道によると、裁判では、犯行当時、被告人は20歳で、被害者から、被害者が15歳の高校1年生であることを聞いて認識していたと認められたとのこと。
その上で、裁判所は、被告人が、被害者の誕生日より5年以上前の日に生まれた者であるかどうかは、被告人と被害者とそれぞれの生年月日に左右されるところ、被告人は、「自分の誕生日は被害者の誕生日の5年以上前である」との確定的な認識はなかったものの、逆に、自分が被害者より5年以上前に生まれている可能性があることは認識していたとして、故意があると評価したようです。

故意というのは、単に「積極的に悪意があった」といえる場合だけではなく、「自分の行為が犯罪にあたるかもしれないと認識しながら、それでもあえて実行した」といえる場合にも認められ、報道によれば、今回報じられた件は、まさにそのような意味での故意が認められるとされたのであろうと思われます。
相手の誕生日を知らない。
たぶん大丈夫ではないか。
でも、もしかしたらだめな可能性もある。
まあ、それでもいいやと思ってしまう。
「大丈夫」かどうかを確認するすべはあるのに、そこに目をつぶり、「まあいいや」としてしまう。
そのような故意の領域があるということについて、意外に知られていないようにも思います。

そう、故意に関して、これも意外と知られていないなと思うのは、「法律の不知はこれを許さず」という考え方。
つまり、「そんな難しい条文があるなんて知らなかったよ」という弁解が通用するのかということ。
不同意性交等罪について、「そんな難しい条文があるなんて知らなかった」は、犯罪の故意を否定する理由にはなりません。

ちょっと複雑な話ではあるのですが、たとえば、「相手が16歳未満であること」「自分が相手より5歳以上年長であることやその可能性」を知っていたかどうかというのは、まさに犯罪の故意の有無に関わること。

でも、「16歳未満と性交等してはだめとは知らなかった」「5歳差以上で犯罪になるとは知らなかった」は単に法律の内容を知らなかったという言い分で、このような法律知識の不足だけで不同意性交等罪が不成立になるわけではないのです。

全体として、なんだかややこしい法律の話になってしまいました。
文章にすると正確に伝わらないように思えて実はちょっと避けたくなる話題でもあります。
でも、この報道を見ていたときに思ったのは、大人として、子どもたちに対して、「同意」「年齢差」「法律の不知の意味するところ」などについて、話をする必要性について。
特に、未成年者同士がSNSを通じて知り合い、お互い何者なのか、何歳で、どこに住んでいて、どんなことを大事にしていて、なんてことを知らないままに交際に至るということもあり得る今、このような話をしっかり伝えていくことは、子どもが自分を自分で守るためにも大事な知識になるのではないかと思っています。

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