リーガルエッセイ
公開 2026.05.29

GPSの悪用

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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GPSの悪用

先日、あるアイドルイベントで、スタンドフラワーに設置されていたぬいぐるみの内部からGPS機器が確認される事案が発生したと報じられました。
報道から、詳細は不明ですが、ぬいぐるみは、イベント終了後、アイドルのかたがご自宅に持ち帰ることが想定されたのだとすると、アイドルのかたの自宅位置を把握しようという意図のもとに仕組まれたものである可能性もあると考えられます。
仮にそうであったとして、今回、アイドルのかたの自宅にぬいぐるみが持ち込まれる前にGPSの存在が発覚したのだとすると、それ自体はよかった。
でも、アイドルのかたも、アイドルのかたをサポートする事務所のかたがたも、「万一、GPSを見逃していたら」と思うと恐ろしい思いになっているでしょうし、こうしてこちらの位置情報を知ろうとしている者の存在を現実のものとして認識し、人前に立つこと自体に恐怖を感じているかもしれないし、このようなことがあり得ることを今後予想しながら安全管理をしていく難しさに直面しているかもしれない。
当事者のかたにとっても、同じ仕事をしているかたたちにとっても、どれほどの精神的な負担がかかったことだろうと思います。

自分が好意をもつ人に対し、相手の承諾を得ないままに、ひそかに、位置情報記録、送受信等のための装置を取り付けた物を贈るということは、ストーカー規制法によって規定された行為に該当し得るもので、反復してこれを行うことは、ストーカー行為として処罰される可能性のある行為です。
また、1回の行為であっても、反復するおそれがあると評価される場合は、行政による警告、禁止命令の対象ともなり得ます。
また、そのように、位置情報を把握するための装置を取り付けた物を、相手に贈る目的であるイベントに参加したという場合、そのような立ち入りには正当な理由がないと評価され、建造物侵入罪にあたる可能性もあります。

「自分が好きな人は、今、どこで何をしているのかな」
そのような思いを抱くこと自体は、あり得るものだと思う。
でも、それを実際に知ろうとして動くということになると、超えてはいけない一線というものがあるということを認識する必要はあるのだと思っています。
私自身、わが身を振り返って思うのですが、昔は、好きなアイドルがいても、アイドルって、テレビや雑誌で見てはキャーキャーいう対象でしかなくて、せいぜい、所属事務所あてに手紙を書くというところがせいいっぱいだったなと思います。
それが、自分自身が大人になるにつれて、行動の自由度が広がり、好きなタレントさんが本を出版すれば、その出版記念イベントである握手会に行くという選択をすることができるようにもなった。
さらに、その後はSNSの普及に伴って、好きなタレントさんが個人として発信しているものに対し、コメントをしてみたり、ダイレクトメッセージをしてみたりなどということもできるようになった。
そうすると、不思議なもので、好きなタレントさんというものが、「別の世界に住んでいる人」ではなくて、とても身近なものに感じられてしまい、相手との距離を見誤ってしまうこともありそう。
身近に感じられるということは、タレントさんにとって一つの大きな魅力になっているように思います。
応援する側も、応援したい気持ちを直接届けられることがうれしいし、応援される側も、応援が力になることもあるのだと思う。
でも、大前提として、応援される側の安全が確保されているということは何よりも大事なことで、そのために、安全が確保されるための距離を保つなど適切な対策が講じられる必要があるのだろうなと思います。
ファンから送られるプレゼントについては、会社などにおいて、安全面に関する厳しいチェックが必要だと思いますし、そのチェック体制がまだ整っていない場合には、整うまでプレゼントの受け入れ自体を一時ストップするなどの対策も必要になるのかもしれません。
好きな人を応援したいという気持ち自体はすてきなものだからこそ、その気持ちが正しい形で届けられるものであったらいいなと思います。

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