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自作自演の果て
先日、いずれも山形県内で起きたという2件の「自作自演強盗事件」についての報道を目にしました。
一方は、借金返済に追い詰められた男性が、自ら手足を縛り、「80万円を奪われた」と申告したという事件。
もう一方は、家族から借りた5万円を返せなくなったという女性が、「泥棒に殴られ、財布を奪われた」と訴えた事件。
報道によれば、いずれも1年の拘禁刑、執行猶予3年の判決が言い渡されたとのこと。
いずれの罪名も、偽計業務妨害罪。
虚偽の通報によって、捜査機関の正常な業務を妨害する行為であったと評価されたもの。
1つめの事件では、うその通報で地域の安全を守る警察官およそ170人の本来の業務を妨害したとされていて、2つめの事件では、1か月あまりの間に100人を超える警察官らの正常な業務を行うことを困難にさせたとされているとのこと。
たまたま目にした2つの事件。
私は、報道からしか事実関係を把握することはできませんので、詳しい背景を知らないままに軽率にもコメントすることは難しいのですが、これらの事案にとどまらず、いわゆる自作自演により警察に被害申告をしたことによる偽計業務妨害の事案という一般論まで広げて考えてみたとき、その背景に、自分をめぐる現実を書き換えて、「自分が被害者である」という物語を作り出す必要に迫られていたという事情が供述されることが多いなと感じます。
人に借金をしたまま、それを返せずにいる。
本来使うべきでない使途でお金を使い果たしてしまった。
そんな事実を打ち明けることができずに、物語の書き換えを思いつく。
強盗の被害者になれば、責任は外部に転嫁される。
自分に向けられるはずだった怒りは、いとも簡単に同情に変わる。
そんな思いで自作自演を企図する。
そのようなケースがあるように感じています。
報道によると、裁判官は、2つめの事件の判決を言い渡した際、「今後は、家族とコミュニケーションをとり、隠し事をせず、悩みがあったら相談してください」と述べたとのこと。
たしかに。
自分が陥った状況について、自分の中で、自分を被害者とする物語への書き換えをするのでなく、問題を解決するための正しい方法を考えるとか、それが自分でできない状況であれば、周囲に率直に打ち明け、相談し、一緒にその解決法を見つけるお手伝いをするとか、そういった手段がとられるべきだったのだ、ということ。
本当にそのとおりで、それこそが、これらの事件の根底にあるのだなと思います。
一方で、では、現にそれができなかった背景にはどんな事情があったのか、果たして、それは、今後、被告人本人の心がけとか意思次第でどうにでもなる話なのか、とも思う。
事件に関わる捜査関係のかた、刑事裁判に関わったかたがたとのやり取りの中で、そのような課題が共有され、本当の意味で、今後二度とこのようなことが起きないための一歩のようなものが見つかっていたらいいなと思います。
ちょっと本筋からはずれるのですが、それぞれの事件で100人以上の警察官の正常な業務を妨害したという認定について、違和感をもつかたもいるのではないでしょうか。
「さすがにそんな多くの人数がこの虚偽申告された事件に現に関わったのか?」と思ったりしませんか?
法律の少し細かい話なのですが、偽計業務妨害罪は、危険犯という犯罪類型の犯罪。
業務を妨害したといえるために、現実の妨害結果の発生は不要で、業務妨害の危険性が生じれば足りるとされています。
なので、「100人以上の警察官全員が、実際に、この虚偽通報の案件を担当することになって、本来やらなくていいことをさせられた」、といえなくても、「100人以上が所属する組織の通常業務が妨害される危険が生じた」といえればよいということ。
強盗事件という重大事案の通報があれば、署全体として警戒態勢、検問、捜査班の編成などがなされた可能性があり、実際に、その虚偽通報案件のために動いた人が一部であったとしても、待機、情報共有、パトロール体制の切り替え等所全体の業務配分に影響が生じたとすれば、その影響を受け得た人員の範囲において業務が妨害されたと評価する余地があるのだろうと思います。
とはいえ、個人的には、具体的な数字を出すことによるインパクトはなかなか大きいものなので、被害の実態に関する詳しい説明なしに数字を出すことで、数字が独り歩きしてしまい、危険の実態がどのようなものだったのかということについてやや実態と離れた印象を与えてしまうような気もしています。
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