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不倫相手への慰謝請求、どこまで認められる?
先日、弁護士としてご相談をお受けすることが比較的多い案件に関し、最高裁の判断が示されました。具体的には、「妻がよその男性と関係を持ってしまった。その相手の男性に慰謝料を払ってほしい」こんな夫からの請求が争われた事件です。
ただ、言われた男性の言い分はこうでした。
「その妻から『夫とはもう離婚するつもり』と聞かされていた。名前まで書いた離婚届も見せられた。だからそういう関係になってしまった」と。
こんなケースで、男性に法的責任が認められるのか、ということが今回のテーマでした。
不倫相手に慰謝料を請求できるのは、その人に「わざとやった」か「不注意だった」と言える事情があるときだけです。
では、どういうときに「不注意だった」と言えるのか。
ここについて最高裁は、大切なことを二つ言いました。
①「その人はもう離婚していると思っていた」という主張があったとして、そう思っても仕方ない理由がなかっただけでは、「不注意」と決めつけちゃいけない。
②その上で、「その人の夫婦関係はもう冷え切っていたと思っていた」という点についても、そう思うのが自然な状況だったかをちゃんと見てあげないといけない。
今回の高裁は②を見ないまま「不注意だった」と決めてしまったので、最高裁は「それはちょっと乱暴だよ」として、もう一度高裁で考え直しなさい、と事件を戻しました。
判決で触れられたことを整理してみます。
① そもそも肉体関係はあった?
→ なければ話はそこで終わり。
② その不倫相手は、相手のことを「もう離婚している」と思っていた? そして、そう思うのが自然だといえる状況だった?
→ そう思うのも無理ない状況だったといえるなら、「不注意とは言えない」として慰謝料は認められない。
③ そうとまでは言えなかったとしても、その時点で、夫婦関係は冷え切っていた?
→ 冷え切っていたのなら、原則として慰謝料は認められない。
④ 冷え切ってはいなかったとしても、不倫相手が「冷え切っていると思っていた」と言えるし、そう思うのも無理ない状況だった?
→ そう言えるのなら、この場合も「不注意とは言えない」として、慰謝料は認められない。
⑤ ②③④のどれにも当てはまらないとき、はじめて慰謝料を取れる可能性が出てくる。
「②がダメ(=もう離婚していると信じる相当の理由はない)」となったとしても、そこで止めずに、ちゃんと③④まで進んで検討しなければならないというわけ。
今回の補足意見には、もう一つ大事な話が書かれています。似ているようで、実は全く別の請求がある、ということです。
(ちなみに、補足意見というのは、判決そのものに賛成しつつ、担当した裁判官が「ここは個人的に一言加えておきたい」と書き添えるコメントのようなもの。)
・不貞慰謝料:「不倫そのもので傷ついた」ことに対する慰謝料。
・離婚慰謝料:「あの人のせいで離婚に追い込まれた」ことに対する慰謝料。こちらはハードルが高く、「その人が、夫婦を離婚させようとわざと介入してきた」といえるような事情がないと認められません。
この2つは混ぜこぜにされがちだけど、違うもの。裁判では「何を請求しているのか」を最初にはっきりさせることがとても大切ですということ。
ちょっとややこしい法律の話を、正確性をきちんと保ちながらわかりやすく表現するのは難しくて、わかりやすさを求めたために、厳密でない言い方が含まれているかもしれません。
また、伝わり方によっては危険だなと思うことがあります。
それは、この判決をもとに、不貞したとしても、相手から「〇〇」という説明があったとすれば、相手の配偶者から後に慰謝料請求されても法的責任は認められないはず、などと安易に判断してしまうこと。
裁判所の判断手法のようなものはもちろん一般的に参考にすることができても、それぞれにおいてなされた認定は、あくまでも、その事例で存在した事実関係をもとになされたもの。そうであるにもかかわらず、「〇〇」という発言があったらセーフ、というように、一部の事実関係や証拠が切り取られて、それが独り歩きして、「こういう場合は法的に問題なし」などという形で捉えご自身のケースにあてはめてしまうと、具体的案件において判断を見誤ることもあります。
こんな判決がありました、と紹介される事例と全く同じ事実関係という事例はないはず。
個別の事情に基づく正しい判断が必要になります。ご不安がある場合は、早めに弁護士にご相談されるのがよいと思います。
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