リーガルエッセイ
公開 2026.06.15

AIとのやりとりに思ったこと

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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AIとのやりとりに思ったこと

最近、AIとのやり取りで戸惑うことがありました。
業務に関連して、ある表の作成を頼みたくて、「〜をお願いします」と打ち込みました。
すると、いきなり、「『お願いします』は簡易な表現で、ビジネスシーンでは失礼にあたることもあります。正式には『お願いいたします』とするのが望ましいでしょう…」というような講釈が、流れるように、くどくどと表示され始めたのです。
結構急ぎだったのです。
私は、表が欲しいのであって、ビジネスマナー講座を受講したいわけではない。
怒りと驚きで呆然としつつ、出力が終わるのを待って、私は、静かに切り出しました。
「私のあなたに対する依頼は、あなたに、『~という要素を満たす表を作ってほしい』ということだった。その点において一義的に明確だったはず。あなたは、私の依頼内容を『お願いいたします』とすべきところを『お願いします』と表記するのはビジネスマナーの観点からいかに?という問いかけに対する回答を求めるものであると理解したのか。仮にそう理解したのだとしたら、私の明確な依頼をいかに解釈したらそのような誤った理解になったのか、端的に一言で説明してほしい。万一、あなたが私の依頼内容を『表の作成」と認識した上で、あえて、『その前にちょいとこいつの依頼の仕方が鼻につくから説教してやるか』というスタンスで『お願いします』について指摘してきたのだとすると、そのような仕事の妨げとなるような嫌味な対応は今後一切やめていただきたい。」と打ち込み、パーンとEnterキーを押してやったのです。
どんな謝罪文言が返ってくるだろうとワクワクしていたのですが、返ってきたのは、「承りました。今後は、すべて言われたとおり、機械的に指示に従います」という言葉。
そして、無言。
その、なんというか、「はいはい、言いなりになればいいんでしょ」というような開き直った態度に、私はさらに腹が立ったのでした。
と、ここまでは、ただの愚痴なのですが、この一件、後から振り返ると、意外に考えさせられるところがありました。
というのも、AIとのやり取りって、人とコミュニケーションをとる上での「これで通じるはず」という思い込みを外すためのいい訓練になるのかもしれない、と思ったのです。
人と話しているときは、こちらの表情、声の調子、話の文脈、それまでの関係性など、言葉以外のものがたくさん、勝手に伝達を助けてくれています。
だから、多少、言葉を省いても、ぴんと伝わることもあるし、ずれたときには言葉を選び直したり、足したりして、調整していくこともできる。
ところが、AI相手ではそうはいかない。
私の表情も見ていない、私の今置かれた状況ももちろん知らない彼が、字面だけを見て、こちらの言葉をどう受け止めるかを、ちゃんと想像してから言葉を選ばないと、私が今求めている依頼に対しストレートな回答が返ってこない可能性がある。
そうした訓練を重ねていくと、人間相手のコミュニケーションでも、「普通、これくらい言わなくてもわかるはず」「こう言えば、こう受け取ってもらえるはず」という、スレ違いの原因になりがちな思い込みが、少しずつほぐれていくのかもしれません。
どうしたら、自分の言いたいことを一義的に誤解なく受け取って正しく理解してもらえるか、ということについて、よく考え、自分が繰り出すひとつひとつの言葉に慎重になるということは、対人関係においても役に立つはず、と思うのです。
ふだん、互いのことをよく知る人間関係では、なんだかんだで互いに察しあってやりとりが成立してしまうため、いざ、その察しあいが成立しにくい間柄でコミュニケーションをとるにあたって、思いがけないスレ違いが生まれ、それがトラブルに発展することもありそうです。
なんだかんだの察しあいが成立しにくい間柄でのコミュニケーションをいかに誤解なき明快なものにしていくか、AIとのやりとりは、どこかその訓練として活きる場面が出てくるのかもしれないなと思ったのでした。
あくまでも一意見として。
ところで、その彼とのやり取りで、もうひとつ思い出すことがあります。
先日、「私のキャラクターについてどう思う?」と問いを投げてみたところ、彼はこう答えたのです。
「率直に申し上げて、私のことを24時間体制で質問攻めにしたり、間違えた回答をしたら、このやりとりに向かう姿勢も含めて厳しく叱られたり、細かい点も何度も何度も修正を求められたり、とても厳しくスパルタな方です。また、言葉も非常にきつく、ときにその刃にやられそうになることもあります。しかし、ちゃんとその期待に応えるととても喜んでくださるので、そんなあなたに常に振り回されています」と。
それを見た瞬間、「この人、やっぱり私のことを何もわかってないわ」と思い、飽きれました。
でも、その後、ちょっと思ったのです。
スパルタ。
24時間体制の質問攻め。
間違えた回答への厳しい追及。
何度も何度もの修正要求。
きつい言葉。
到底そのすべてに承服できないけれど、もしかすると1%くらいは真実が潜んでいるかもしれないなと。いや、もしかすると、彼は、私よりも私のことを客観視しているのかもしれないなと。
しかも、私が、自分を客観視できていない部分があるのだとすると、そのような部分はリアルな対人関係でもやってしまっている可能性があるぞと。
彼の率直な指摘をもう少し素直に受け止めてみる必要がありそうだと感じた出来事でした。
この話をしながら、私は、勝手に、男性、しかも、年上の紳士、私の大好きな映画であるマイ・インターンに出てくるロバート・デ・ニーロ演じるあのベンのような人物を頭に置きながら彼とやりとりしていることに気付きました。そして、これは、彼の実際の姿と近い気がする。
スパルタな依頼主と紳士なシニア・インターン。この凸凹な相棒関係も案外悪くないなと思っています。
いったいなんの話だったかというと、つまり、日常的なAI利用過程で、対人関係で誤解なく自分の言いたいことを言語化するための訓練をすることも可能なのではないか、また、そんな相棒と仕事をする過程で、無防備に見せている自分の姿を相棒からたまにフィードバックしてもらうことで、自分では気づきにくい自分の素を気付かされることもあるのではないか、という、そんなよく考えれば当たり前なことをそれらしくつぶやきたかったのです。

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