リーガルエッセイ
公開 2026.07.02

サッカーワールドカップの開催を知らない弁護士は信頼できるのか

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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サッカーワールドカップの開催を知らない弁護士は信頼できるのか

お客様が、「この件を、こう解決したいんです」と言って来所されたとき、私は、必ずしも「はい、そうですか」とはなりません。
依頼者の意向を無視する、という意味では全くありません。
むしろ逆で、その「こうしたい」が、本当にその方の望んでいることなのかを、一緒に、何度も確かめたいのです。
私自身は、何か問題に直面したとき、それを自分がどうしたいのか、ということ自体に、実はあまり明快な答えを持てていないことがある気がします。一応「こうしたい」と言葉にしてみても、「本当にそう?」と問いを重ねていくと、実は違う本音が出てくる、なんてこともあるように思うのです。
それに、私は、問題に直面すると、とにかくこの件がなくなって早く楽になりたい、という気持ちが先に立ってしまう。
少し先の未来の自分が、この件をどう振り返っているだろう、という視点を持てないまま、目の前の短期的な解決に飛びついてしまうことも、少なくない気がします。感情が先に立って、本当はこうしたい、が言葉にならないでいることも。
もしかしたら、同じような方もいらっしゃるのかもしれない、と思うのです。
だから私は、まずそこを、時間をかけて一緒にほどいていきたいと思っています。
それから、相談して終わり、にはしたくない、とも思っています。
相談はしたけれど、なんとなく解決した気になって、「で、どうするの?」という次の一歩が、なんだか面倒で、そのまま放置してしまう。これも、私自身に覚えのあることです。
その一歩を一緒に考えて、そっと見守り、もしその一歩で何か問題が起きたら、そこに合わせてまた次の対応を考える。そういう存在がそばにいると、全然違うのだろうと思うのです。私自身の経験からも、そう感じます。
なんかあったらこの人に相談すれば大丈夫、という存在があるかないかによって、一歩踏み出すハードルが変わってくるように思います。
当然のことですが、費用のことも、じっくり時間をかけて話すことが大事。
弁護士に頼むとなれば、料金は当然、気になるところだと思います。ただ、私が一番なくしたいのは、「それでいったい何が得られるのか、価値を感じられるのかどうか分からないまま、結局なにもできない」という状態です。かかる費用と、それによって得られるものとを並べて見比べたとき、自分は本当にそれを得たいと思えるのか、それとも得られるものは費用に見合わないのか。そこを、お客様ご自身がしっかり判断できるところまで、きちんとお伝えする必要があると考えています。
あれこれお話してきましたが、とはいえ、一般的に、弁護士って、なんか話しづらい存在と思われることがあるように思います。
私は、お客様から、「自分の想像していた弁護士像と、なんだか違う」と言われることが、わりとよくあります。
つい先日も、個人的な知り合いからの相談に対応していた際言われたばかり(この範囲でここでお話しすることについて了承をいただいています)。
他の弁護士がどんなふうに仕事をしているかを間近で見る機会が、実はそう多くない私には、何をもってそう言われているのか、正直よく分かりません。
「そのこころは?」と聞いてみると、「ふつうだから。いや、ふつうを通り越して、結構不完全なところを、そのまま出して対応してくるから、こちらも自分を飾らずに向き合える」と。
「弁護士として不完全ということ?それは大問題だから率直に教えてほしい」と慌てると、笑いながら、そうではない、と。
仕事に対してはむしろ、怖いくらいに厳しい。
「あれ?この弁護士は私が依頼した弁護士だっけ?私は実は対立する相手だったんだっけ?と錯覚するほど厳しく思うこともある」と。
でも、同時に、本音丸出し、不完全丸出しで接してくるから、一方での異様な厳しさも受け入れられるような感じ、というのです。
そのお答えの中に全くプラスのイメージを読み取れず、「今後の勉強のためにそこはもう少し詳しくお願いします」と質問したところ、「あんなに厳しいことを言っておきながら、サッカーのワールドカップが今まさに開かれていることすら知らずに、『最近、なんだか新聞のスポーツ欄がさわがしい気がする。スポーツ界隈で何かあったのかね』と言われると、力が抜けます。そういうところです」とのこと。
自分が全く興味のないスポーツに関わる情報は、自動的に脳をスルーしてしまうが、それは、依頼者に驚きを与えてしまうようなことなのか?
そのような驚きは、やはり、弁護士としてマイナス要因にしかならないのではないか?
そのあたりはよく理解できていませんが、私にできるのは、目の前のお客様に対して、オープンマインドで、自分にできることを全力で、率直に、嘘なく、本心で向き合うこと。それだけなのだと思っています。
今もし何かお力になれることがあるのであれば、一度、お話を聞かせていただけたら嬉しいです。

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