リーガルエッセイ

公開 2020.05.22 更新 2021.08.13

ひとり親家庭と養育費不払い

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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「子どもの食事代、文房具代にも困っている」

先日、NPO法人などが会見し、政府に対し、児童扶養手当を受給しているひとり親家庭に一定期間給付金を支給することを求めたという報道を見ました。
その会見によると、NPO法人などへの相談件数が急増しており、中には、「子どもに1日1食しかごはんを食べさせることができない」「子どもに文房具も買ってあげられない」という悲痛な叫びも寄せられているとのこと。

本来なら、保育園に通う子どもたちは、生まれて初めての集団生活に少しずつ慣れてきて友達と遊ぶ楽しみを覚えたり、お兄さんお姉さんとして新入園した赤ちゃんの面倒を見る楽しみを感じたり、小中高校生たちは、それぞれ新しい環境に入って緊張しながらも新生活に期待を膨らませたり、進級して新たな目標を持ったり、またそれぞれ成長に伴った悩みも抱えながら毎日を送っていたはずだったんだろうなと思います。
そして、保護者も、そのような子どもたちを見守りながら、自分たちも気持ちを新たに仕事に家事に走り回っていたんだろうなと思います。

それが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、生活が激変し、子どもたちは、保育園や学校にも行けない毎日。
ひとり親でお仕事をしているかたは、子どもを預けられなくなったために、また、職場の仕事が減ってしまったために仕事を辞めざるを得なくなったり、仕事には行けているものの収入は減ってしまったりしているかたが非常に多くなっています。

この情勢で仕事に行けているかただって、「もし自分が通勤途中や職場で感染してしまったら、子どもの面倒をいったい誰に見てもらえばいいんだろう」という不安の中出勤されているはずだし、在宅勤務に切り替えているかただって、保育園や学校にも行けず家の中でひまを持て余す子どもたちの宿題を見たり、相手をしたり、食事を作ったり、ときにはストレスで家で大騒ぎする子どもたちに隣人から寄せられた苦情に対応したり、と精神的な負担も限界なのではないでしょうか。

そんな中、経済的な厳しさから子どもに十分な食事を作ってあげられない、文房具すら買ってあげられないということが、子どもたちにとって深刻な影響を及ぼすことはもちろん、親として子どもに十分なことをしてあげられないのは何よりつらいことだと思うのです。

ですから、今回、国に支援を求める声があがったことをきっかけに、ひとり親への経済的な支援体制がより一層迅速に、十分になされるといいなと思います。

養育費、きちんと支払われていますか?

国による給付金と合わせて、元配偶者に収入がある場合には、養育費の支払いがきちんとなされれば少しは生活が楽になるのに、というかたもいらっしゃると思います。

でも、「離婚するときには、離婚することで精いっぱいで養育費の取り決めをきちんとしていなかった」、「約束したけれど、相手を信じて口頭で約束したら、その後支払われなくなった」、「調停で合意したけれど、相手が払ってくれず、払わせるための手続もよくわからない」などというかたもいらっしゃるのではないでしょうか?
そもそも、1日1日を乗りきることで精いっぱいで、養育費のことを考えたり、元配偶者に伝えたりする時間も気持ちの余裕もないという状況だと思います。

厚生労働省による「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果(母子世帯の母の養育費の受給状況)」では、今も元夫から養育費の支払いを受けているというかたがわずか20数%と発表されています。

それでも、今こそ、養育費の支払いを求めることについても選択肢として考えてみてください。
というのも、法律が改正されて、公正証書や調停調書などで養育費の取り決めがある場合、以前より養育費不払いへの取り立てがしやすくなったからです。

たとえば、これまでは、元配偶者が約束どおりに養育費を払わず、会社が元配偶者に払う給与債権を差し押さえ、給与の中からこれを回収しようと思っても、元配偶者が知らぬ間に勤務先を変えてしまっていたら、給与からの回収は事実上できませんでした。
それが、このたびの改正により、裁判所を通じて、市区町村や年金事務所に照会することで元配偶者の勤務先についての情報を取得することが可能となったのです。

これにより、元配偶者が知らぬ間に勤務先を変えてしまっても、新しい勤務先の給与債権を差し押さえて養育費を回収する道が開けました。
そして、そのような選択肢ができたことを元配偶者が知れば、勤務先に養育費不払いの事実を知られたくなくて、最初から養育費を払うようになるということも期待できるケースがあるかもしれません。

それ以外にも、このたびの法律の改正で、どの銀行のどの口座にどれくらいの預金残高があるかということに関する情報を取得しやすくなったり、どのような財産を保有しているか元配偶者自身に開示させる財産開示手続きが、拒否した場合のペナルティーを強化することで効果的に使えるようになったりしたのです。

とはいうものの、これも離婚時に養育費支払いの約束が公正証書等でできている場合のことです。
そもそもきちんとした形で約束ができていない場合には、元配偶者と話し合い、約束することからスタートしなければなりません。
また、養育費が取り立てやすくなったとはいっても、お話ししたような手続きを、子どもの面倒を見ながら、仕事をしながら、自分だけで進めていくのはあまりにも負担が大きいかもしれません。

まずは、お気軽に、弁護士にご相談ください。養育費支払いを得る方法を一緒に考えましょう。
弁護士に相談することで、おひとりで悩んだり調べたりする時間と労力を少し減らせるはずです。

Authense法律事務所では、新型コロナウイルスの感染が拡大している状況を受け、オンライン面談を実施しております。

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